持ち運びできない確定拠出年金に変化の兆し

確定拠出年金のおおよその特徴を説明してきたが、特に注目したいデメリットがある。それは”持ち運び”ができないという点である。企業年金の場合、A社で加入していたが、B社に転職したところ企業年金制度が違うため、いままで積み立てたものは動かせなくなってしまうケースがある。つまり、同じ制度を採用していないと、60歳まで年金積立金は動かせないということだ。

今回の厚労省の議論では、現行の年金制度が持つ『持ち運びの不便性』という問題点に対して前向きな意見が出てきた。例えば、第3号被保険者や公務員等も加入できる『個人型DC』の導入が必要であるという意見や、多様な働き方に対応するために、DB(確定給付型企業年金)間やDBからDCへの積立金の移行などの転職等によって異なる企業年金制度に移行するのに加入者が不利益を被らないように法令を整理することが重要だという意見が出てきた。

年金受給額減少から見る今回の政府の意見

年金財政は危機的状況にあるというのは十数年前からの論議だ。だが、その多くは『財源確保』だけに中身が向いていた。漠然と公開されているのは、『標準的な厚生年金の所得代替率の将来見通し(平成26年財政検証)』によれば、2014年度の所得代替率62.7%(夫婦の年金額:21.8万円)は2030年度には所得代替率が57.2%~53.8%に低下、2050年度には51.0%~41.6%となるかもしれないという現実だ。

このように将来もらえる年金額が減額されるかもしれないことを背景に、より多くの制度間で持ち運びを可能にすることにより、個々人の選択肢が広がり、継続的な老後の所得確保に向けた自助努力が行いやすい環境しようというのが政府の狙いであろう。

将来を意識した自助努力の必要性

団塊の世代が続々と65歳を迎え、華やかなシニアライフが報道される一方で、将来の年金受給層の危機が現実化を帯びて来た。厚生年金と国民年金の年間運用利回りは約10%であることを根拠に楽観的な見方をする意見もあるが、これは過去1年間の円安や株価上昇に基づくものであり、今後もそれが続くかどうかはわからない。年金財政が厳しい状態であることは確かであり、アメリカによく見受けられるような老後所得確保への自助努力はしていくべきだろう。

(ZUU online)