2014年10月14日、厚生労働省は、運用成績によって将来もらう年金額が変わる確定拠出年金の見直しに着手した。専業主婦や公務員なども含め、誰でも加入できるようになり、また、勤め先の企業に確定給付型又は確定拠出型の企業年金がある場合でも、別個に個人型の確定拠出年金に加入出来るようにするという内容も含まれた。これにより、401kに加入する会社員は転職時に年金資産を持ち運びやすくなる。
日本版401kが話題になって既に10年になるが…
団塊の世代が続々と65歳を迎え、華やかなシニアライフが報道される一方で、将来の年金受給層の危機が現実化を帯びて来た。厚生年金と国民年金の年間運用利回りは10%、などとのんびり報道するところもあるが、これは過去1年間の円安や株価上昇に基づくもの。大事なことは、企業をリタイアする時に受取れる退職金、あるいは企業年金がいくらか、という現実問題なのだ。
会社員なら、自分が雇用契約の際にサインと捺印したことだけは覚えているだろう。だが、入社して以来数多くの会議と捺印作業があったなかで、年金に関する書面もあったのだ、ご存知だろうか?特に社員数が1,000人を超えるような大企業では、ある日社員が会議室に呼ばれ『運用』や『確定拠出年金』などという説明を受けたはずだ。
要は、毎月積み立てている給与天引きの年金積立金が、どこかの銀行か、保険会社か、証券会社かに預けられて、自分が選択したファンドで積立金が増減するのだ。簡単に言うと、企業(または個人)が毎月積み立てるお金を個人が自分の判断で運用していく制度である。これが日本版401kといわれる確定拠出年金である。
ポータビリティができない塩漬け年金が、ようやく動き出す
実は今までの確定拠出年金には、大きな不備があった。それは『持ち運び』ができない、という致命的な欠陥である。携帯電話を例にすればわかるだろう、auの携帯からdocomoに変更しても、今までの番号は変えなくてもよいのが、当たり前。企業年金の場合、A社で加入していたが、B社に転職したところ企業年金制度が違うため、いままで積み立てたものは動かせなくなってしまった。つまり、同じ制度を採用していないと、60歳まで積立金は塩漬けさえ、びた一文動かせないのだ。
2014年10月14日、時は熟したと見たのか、厚生労働省に設置された社会保障審議会企業年金部会が動き出す。東京は永田町の全国都市会館会議室での第10回の部会は『ライフコース多様化への対応について』というテーマで議論が交わされた。ここでの注目点は『第3号被保険者』企業年金・公務員等共済加入者』両者が加入可能な新しいタイプの『個人型DC』、『個人退職勘定制度』。厚労省年金局が、働きながら年金を受取る時代を認識し始めた、と見てよいだろう。