日銀によるマイナス金利導入後、外国人投資家が日本のREIT市場にマネーを振り向けている。

東証が公表した11月の部門別差引き売買統計を見ると、外国人投資家が515億円の買越しをしていることが分かる。日銀がマイナス金利導入を発表する直前の2016年1月28日の東証REIT指数は1686.53だったが、4月8日の終値は、1905.39と218ポイントとなっており、12%の上昇となった。

オリンピックも近くなり、2018年12月18日現在は、1797.41となっており、ひと段落した雰囲気だが、J-REITも株式市場同様に、外国人投資家の動向に左右されている。J-REITが外国人投資家によって買い支えられている理由について考察していく。

目次

  1. 外国人投資にとって日本の不動産が魅力的な理由
  2. 今後のREIT市場見通し
  3. REITに対する2つの懸念材料

外国人投資にとって日本の不動産が魅力的な理由

では、なぜ外国人投資家にとって日本の不動産市場は魅力的なのだろうか。

理由のひとつに、他のアジア諸国と比較してカントリーリスクが低く、日本の安全性や安定性が高く評価されている点が挙げられる。地震リスクはあるものの2020年のオリンピックの開催が決まるなど、インフラ整備が確実に進むこと、また戦争や騒乱がなく治安もよい。世界第3位の経済大国であり、バブル崩壊などがあっても、新興国のような大暴落になる可能性が少ない点も大きい。

総合不動産サービス会社ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)の調査によると、2014年の「海外投資家」による日本の不動産投資額は、アベノミクス開始前の2011年に比べて約14倍も上回っている。さらにアジア非上場不動産投資家協会(ANREV)によると、アジア太平洋地域の中で2016年に最も投資したい対象は、2年連続で東京のオフィス市場という結果が出た。複数回答だが、現に全体の56.5%の人が東京オフィス市場に投資したいと回答している。

また、少しでも高い利回りを求める、いわゆる世界の「イールドハンター」たちも日本の不動産に注目している。新発10年物長期国債のマイナス金利の常態化により、J-REITとのイールドギャップの差は魅力的に映っている。低コストで資金調達ができるなど、マイナス金利の恩恵をフルに享受しているのが、最近のREITの現状といえるだろう。

最近の円高とそれに伴う株価の下落などにより、マーケットが日銀に対して追加の金融緩和を要求する声が強まると、今後一段高になる可能性がある。このように、海外からの投資意欲が継続する限り、J-REITにとっては追い風となるだろう。

今後のREIT市場見通し

今後、REIT市場はどのように推移していくのだろうか。REITの投資口価格(株価に相当)を決定する主な要因である、オフィスの空室率と賃料について見ていこう。

オフィス仲介大手の三鬼商事(東京都中央区)が発表した、11月末都心5区(千代田、中央、港、新宿、渋谷)のオフィスの平均募集賃料は前年同月比1,679円円(8%)高い3.3平方メートルあたり20,743円だった。1年間で実に8%もの賃料が上昇しており、新築ビルを中心に需要が底堅い傾向が見られた。

また、11月末の都心5区の空室率は、1.98%となり、一般に需給均衡の目安とされる5%を大きく下回っている。この動きは、REIT価格を押し上げる要因になっている。

REITに対する2つの懸念材料