米国では決算シーズンが本格化し、好決算が相次いでいることから株式市場にも熱気が戻っている。だが、ウォール街の市場関係者からは「好決算の陰で世界経済のピークアウトが近づいている」の指摘もあり、足もとでの強材料と将来的な懸念材料の折り合いをどうつければいいのかが悩みの種となっている。加えて、モラー氏解任観測がくすぶり続けていることも気がかりだ。

1~3月期の米企業決算見通しは20%の増益か?

世界経済,見通し
(画像=PIXTA)

前述の通り、米国では1~3月期の決算発表が本格化しているが、先陣を切るかたちとなった大手銀行が軒並み好決算となり、米株式市場は活況を呈している。

米調査会社ファクトセットの調べによると、4月13日現在の1~3月期のS&P500構成銘柄の利益は17.3%の増益となる見通しで、予想通りとなれば2011年1~3月期(19.5%)以来7年ぶりの高い伸びとなる。ただ、アナリストの予想は低めに出される傾向にあるので、最終的には20%超の増益となる可能性もある。

また、大幅な増益見通しを背景に1年後のS&P500の目標株価は3086.99と12日の終値2663.99を15.9%上回っており、市場関係者の鼻息も自ずと荒くなっている。

宴は年内に終了? モルガン・スタンレーも警告

ただし、好決算は昨年末に成立した減税法案の恩恵を受けており、既に織り込み済みとなっている可能性が高い。

たとえば、好決算を連発した金融株の動きが冴えないのもこのためだとみられている。金融は国内の業務比率が比較的高いこともあり、減税の恩恵を最も大きく受けるセクターと考えられていた。要するに「噂で買って事実で売る」展開となっているわけだ。

同様の指摘はモルガン・スタンレーからも挙がっている。同社は17日のリポートで、財政出動が短期的には成長を後押しするが、その効果はすでに「織り込み済み」の公算が大きく、市場の「宴は終わりに近い」と指摘している。

米景気サイクルが終盤に差し掛かる中、米財政赤字の拡大とFRB(米連邦準備制度理事会)による利上げでイールドカーブ(利回り曲線)のフラット化が進み、株価は年内にピークアウトするとの見立てである。

IMF、2020年から米成長率の急降下を予想

また、IMF(国際通貨基金)も米財政赤字の拡大で米成長率が急低下する恐れがあると警鐘を鳴らしている。

IMFは17日に公表した世界経済見通しで、今年と来年の世界経済の成長見通しを据え置いたが、中央銀行の金融引き締めや米財政刺激策の縮小、中国の景気減速を背景に「2020年以降は減速する」との見方を示している。同リポートでは「人口高齢化や生産性の伸び悩みにより、金融危機前の平均を大きく下回る潜在成長率に戻る」と予測している。

たとえば、米国の成長見通しを見ると、2018年が2.9%、2019年が2.7%と前回1月の見通しからそれぞれ0.2ポイントずつ引き上げられている。ところが、2020年は1.9%、2022年は1.5%と急低下が見込まれている。つまり、2022年以降は財政刺激策の終了と財政赤字の拡大により米成長率は今年と比べて半減する見通しなのだ。IMFの試算によると、米財政赤字の対GDP(国内総生産)比率は2023年にイタリアを抜き、G7(主要7カ国)では日本に次いで2番目の大きさに膨らむと予想している。

ちなみに、主要国では断トツの財政赤字を誇る日本の成長見通しは、2020年が0.3%、2022年が0.5%と手厳しい。2017年の1.7%からあっというまにゼロ近辺まで低下すると予想されているのだ。

波乱の火種「ロシア疑惑」が気がかり

ところで、このところシリア情勢や米中貿易戦争がヘッドラインをにぎわせているが、ウォール街がより神経を尖らせているのが「ロシア疑惑」である。

FBIは9日、トランプ大統領の顧問弁護士であるコーエン氏を家宅捜索したが、これに激怒したトランプ大統領がモラー特別検察官の解任を検討しているとの観測が流れているからだ。

モラー氏を解任すれば司法妨害で起訴される可能性が高いことから、法律顧問らが解任に反対し、説得を試みているが効果はほとんど見られないという。

昨年5月にはコミーFBI(連邦捜査局)長官を解任した実績があり、今年3月にはコーンNEC(国家経済会議)委員長とティラーソン国務長官が追われるように政権を去った。

トランプ大統領は18日、解任したコミー前FBI長官について、「ロシア疑惑を巡る捜査が理由ではない」とツイートしているが、何が理由であったかには触れていない。

昨年5月の解任後のインタビューでは「ロシア疑惑はでっち上げで、選挙に負けた民主党の言い訳だ」と述べており、なぜこの時期にわざわざコミー氏の解任はロシア疑惑と関係ないと念を押しているのかに首をかしげる関係者も少なくない。

また、モラー氏の解任に先立って、セッションズ司法長官とローゼンスタイン副司法長官の更迭も検討中というから穏やかではない。

3月にはトランプ一族が経営する「トランプオーガニゼーション」に捜査令状が出され、ロシア疑惑の捜査がトランプ大統領本人とその周辺に及んでいることが明らかとなっている。トランプ氏は一族に捜査が及べば「一線を越えたと判断する」と述べており、既に緊張感が高まっていたところへコーエン氏への家宅捜索が火に油を注いだようだ。

モラー氏の解任の可能性は?

そもそも破産を繰り返していたトランプ氏がなぜ復活できたのは謎のままであるが、少なくともロシアマネーが大きな役割を果たした可能性は否定できない。問題はロシアマネーが絡む不動産取引で、脱税や資金洗浄など不適切な資金の流れがあったのかどうかである。

コーエン氏への捜査はトランプ氏と性的関係があったと主張するAV女優への口止め料に関する動きがきっかけとなった。ただ、コーエン氏はロシアとトランプ氏の不動産ビジネスでも中心的な役割を果たしていたことから、ロシアに絡んだ不動産取引での租税回避や資金洗浄の動きがないのかどうかも調査対象となるのは自然な流れだろう。

中国との貿易戦争やシリアでの米ロ軍事衝突と比べると、モラー氏の解任は格段に可能性が高いと考えられており、ウォール街の市場関係者は気が気でない日々を過ごしている。(NY在住ジャーナリスト スーザン・グリーン)