この記事は2025年8月6日(水)に「羊飼いのFXブログ」で公開された「西原宏一氏の現在の相場観とFXトレード戦略」を一部編集し、転載したものです。


FXトレード戦略
(画像=Alexandr Peers/stock.adobe.com)

2025年8月6日(水)の午前11時すぎに、現役トレーダーの西原宏一さんから聞いた最新の相場観と戦略を紹介する。

西原宏一
青山学院大学卒業後、1985年に大手米系銀行のシティバンク東京支店へ入行。1996年まで同行にて為替部門チーフトレーダーとして在籍。その後、活躍の場を海外へ移し、ドイツ銀行ロンドン支店でジャパンデスク・ヘッド、シンガポール開発銀行シンガポール本店でプロプライアタリー・ディーラーなどを歴任後、独立。ロンドン、シンガポール、香港など海外ヘッジファンドとの交流が深く、独自の情報網を持つ。

現在の為替相場の傾向や相場観

為替市場の動きは先週1日(金)の2つの出来事で大きく動いた。

8月1日(金)はスイスの建国記念日だった。スイスはすでに、米国に数十億ドルの投資を約束していたと報道されている。ところがスイスの建国記念日に、米国がスイスからの輸入品の関税を39%に引き上げるとの発表が、祝賀ムードを台無しにしている。

このあとまだ交渉期間が残されているのだが、ケラー・ズッター大統領は「米国にさらなる譲歩を行うことは非常に困難である」とコメント。スイスのメディアはケラー・ズッター氏を厳しく批判し、SonntagsZeitung(スイスで発行されている週刊新聞)は、交渉の失敗を「彼女の最大の失態」と表現。Blick(タブロイド紙)は、1515年にフランスとの戦いに敗れて以来、スイスにとって最大の敗北、とまで述べた。この環境下だとスイスフラン売りとなる。

そして、スイス建国記念日同日の1日(金)、米雇用統計が発表されており、今回の米雇用統計は極めて深刻な悪化。問題は、NFPの5月分が+14.4万人から+1.9万人へ、6月分が+14.7万人から+1.4万人へ、それぞれ切り下げられ、過去3カ月間では平均して月+3.5万人しか増えていなかったという結果となったことだ。これにより、米10年債利回りが4.20%まで低下。

金利先物市場では、9月17日の利下げが86%まで織り込まれてきた。これにより米ドル/円は、151.00円レベルから一時147.00円前半まで4円弱も急落している。

現在の為替相場の戦略やスタンス

スイスは39%の関税ショックにより、9月のSNBでマイナス領域への利下げの可能性がでてきたと考えている。現状の先物市場では9月の利下げは織り込まれていないため、要警戒だろう。これはスイスフラン売りの要素だ。

39%の衝撃に対し、昨日5日(火)、スイス大統領と経済大臣は、貿易戦争で最も厳しい関税の一つを引き下げる土壇場での試みとして、ホワイトハウスに「より魅力的な提案」を提示するため、ワシントンを訪問している。

マーケットはこれを好感してスイスフランを一部買い戻し。

西原氏含め、多くの参加者は明日7日(木)までに、スイスの新しい提案により関税は39%からかなり下げられると考えている。ただ、もし関税が下げられなかった場合、スイスフランの下げ幅はかなり大きくなる。

加えてトランプ米大統領は、「医薬品には当初、小幅な関税をかける。だが、1年から1年半の間に150%に引き上げ、最終的には250%にする。医薬品を自国で製造するようにしたいからだ」とCNBCのインタビューでコメント。今後、医薬品にはかなりの関税がかけられるようなので、中期では最強通貨スイスフランはそのトレンドを変えることになるかもしれない。

スイスの関税が実行されるのが、明日7日(木)。残された時間はわずかだが、スイスの交渉の進展に注目したい。

▽スイスフラン/円 日足チャート

250806nishiharaS
(画像=羊飼いのFXブログ)

*:当記事は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。

羊飼い(ひつじかい) FXトレーダー&ブロガー
「羊飼いのFXブログ」の管理人。2001年からFXを開始。ブログで毎日注目材料や戦略を執筆配信中。トレードはスキャルがメインで超短期の相場観には自信あり。