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(写真=PIXTA)

一棟物件は築年数が経ち維持管理費かさむ。競合する新築物件に集客を奪われて所有を続けるのが難しい一棟マンションが増加している。駅前で文句なしの立地でも空室に悩む築古の一棟物件である。そんな物件を思い切って区分マンションに変えてバラ売りしてしまうという発想はどうだろうか。少々高いハードルではあるが、ハードルとメリットを検証してみる。

切り売りした区分の売り上げで建物自体が生まれ変われる

共用部分、設備、外壁などの改装費がなかなか捻出できず、管理に困っている賃貸物件を一室ずつバラ売りの区分マンションにする。売った部分の収益で思い切った改装が行え、オーナーにも余剰金が残るという試算である。

一棟物件の時点では敷地権(区分マンション特有の土地所有権)もなければ、専有部分ごとの登記もされていない。それを分譲マンションと同じように各部屋に所有権を持たすことで、売買の対象となる物件へと変身させる。

都市部や地方の駅前物件なら期待は高い

とはいえどんな立地の物件でも区分売りに向いているとは限らない。同間取りタイプの分譲マンションのニーズが高いエリア。立地も申し分がない一棟マンションなら区分バラ売りで、新築マンションへの競合物件へとなり得る。

デザイナーズ物件のような改装を施す。これなら同エリア内の新築競合物件にも太刀打ちできる。あるいは専有部分の改装を買主の要望を聞いてから行うという注文改装費付物件としての販売などアイディアも広がる

何人かの投資家が既にチャレンジしている一棟賃貸マンションのバラ売り作戦。しかしどんな物件でもできるわけではないので注意も必要だ。

構造面、登記面、融資面でクリアなら区分建物へ変更できる

一棟全部にオーナーの所有権のある現状から、各室ごとに所有権を発生させるためには「建物区分登記」をする必要がある。区分登記のできる建物の要件には、各室からそれぞれに外部に通じることができ、パイプ、配線などが他の部屋内部を通っていないことなど最低限クリアしなくてはいけない項目がある。登記可能要因以外と併せて大まかにまとめてみると次のような点である

・区分建物として登記できるかどうかの診断(構造・配管・共用部分・敷地権・出口など)
・物件的に融資条件がクリアできるか
・販売価格の想定が重要。そこから捻出する改造費
・管理規約、管理組合の設置方法

買う側への配慮としては、銀行の融資が取り付けられることはとても重要になる。築古すぎると通常では銀行の融資が心配だ。しかし敷地権付の区分建物になることと、一棟全体で改装を施すことで中古分譲マンションとしてグレードも上がる。金融機関と相談して買主付けのしやすい融資が利用できる物件になるような改造プランを立てるのも必須策である。

その他に検討すべき課題としては、敷地権割合の設定方法。元オーナーが一部それも多数の部屋を所有したままにすると、床面積割合による敷地権では議決権に偏りがあるマンションになってしまう。一所有者一議決権となるような規約が望ましい。

まだまだ例は少ないが全国レベルで探すと一部の投資家が既に実現しているケースでもある。最初からバラ売りすることを念頭に格安の一棟物件を購入し、区分建物として収益を上げている投資家もいる。「一棟賃貸のバラ売り」案は決してたやすくなく、ハードルも結構高いのは確かだ。

しかし築古で次の買い手もなく困っている物件を保有しているのであれば事業性も高く一考の余地があり面白い。(ZUU online 編集部)