事故物件という言葉が広く知られるようになった。過去に事件や事故が起きた部屋の家賃が、相場よりかなり安くなることは広く知られている。それでは自分の隣の部屋に住んでいた人が自殺をしたような場合、自分の部屋の家賃は安くなるのだろうか。

「隣室で自殺があったから家賃を安くして」という要望にはこたえる必要がある?

(画像=PIXTA)

以前、相続の件で依頼に来られたAさんからの相談だ。Aさんは不動産関係の会社に勤めているが、管理しているマンションが最近、事故物件になったという。

住人の一人が借りている部屋で先月自殺をした。当然その部屋は事故物件となり、次にその部屋を借りる人に対しては、事故物件である旨を告知する義務が発生する。

ただAさんが相談に来たのはそのことではない、

実は、自殺した人の隣室に住んでいる人が事故物件になったことを知り、家賃を下げてほしいと要求してきたというのである。さらに家賃の値下げができないなら、引っ越したいので、そのための費用を負担してほしいとのことである。

Aさんとしては、今まで遭遇したことがない出来事なので、筆者の所に相談に来られた次第である。

そもそも事故物件の定義とは何か

筆者はまずAさんに、改めて事故物件について説明を行った。

事故物件とは、賃貸集合住宅などの部屋や共有部分(エントランス、廊下など)で、何らかの原因によって、前に住んでいた人が死亡したものを言う。死亡の原因によっては事故物件に当たらないものがあるが、明確な基準があるわけではない。

それでも一般的には、殺人や放火による死亡などの刑事事件に関するものと、自殺や病死による孤独死で長い間発見されなかったものが該当するとされている。つまり、前に住んでいた人の死亡の経緯を知ることで、住みたくない、借りたくないなどの感情が出てくることが要件となる。これを難しい言葉で、「心理的瑕疵(かし)」と言われている。瑕疵とは、傷のことである。

このような事故物件の場合、前に住んでいた人が死亡した直後に物件を貸す場合には、通常家賃を値下げることになる。また、その部屋を貸す場合には、借主に対して事故物件である旨を伝えなければならない。これは、契約の際の重要事項の説明で行われることになる。―

家賃の値下げ、引っ越し費用は?

ここまではAさんも不動産のプロであるから、よく理解しているとのことであった。

ここからが本題だ。事故物件となった隣室に住む人が、家賃の値下げが要求してきたら、どうすればいいのか。また「気持ちが悪いので、引っ越したい」と引っ越し費用を要求してきた場合はどうだろうか?

筆者はAさんに、家賃の値下げも引っ越し費用の肩代わりも厳しいのではないかと答えた。上で述べた、事故物件の要件である心理的瑕疵は「ここに住みたくない」「ここで生活したくない」という気持ちであるから、あくまでも生活の本拠、つまり実際に日常生活を送る部屋でなければならないということになる。

例えば、住んでいるマンションやアパートの一室が有名な殺人事件の現場となり、連日マスコミ関係者が押し寄せることになったらどうか?多くの人は煩わしさを感じて引っ越ししたくなるかもしれないが、逆にマスコミに対して取材を自粛してもらうように、大家さんや管理会社からお願いすることは可能だと考える。

もしマンションで、広くニュースで報じられるような悲惨な事件が起きてしまった場合、大家が「マンションの資産価値がなくなったので取り壊したい」と考える可能性がある。その場合は、あくまでも貸主の都合で転居することになるから、引っ越し費用は請求することができる。

今ではインターネットで事故物件を検索できるサイトがあるほどだ。ただ隣室が事故物件になったからと言って、自分の部屋の家賃の値下げ要求は難しいだろう。あくまでも自分の部屋に心理的瑕疵があるかないかが基準だ。(井上通夫、行政書士)

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