老後の暮らしについては、お金に関して目が向きがちですが、同じように注目したいのは家です。老後のために持ち家がいいのか、賃貸がいいのか悩む人もいるかもしれません。最近では老後に賃貸住宅を検討する人もいるようです。賃貸住宅にはどのようなメリットあるのでしょうか。

老後に賃貸住宅を選択するメリットとデメリット

(写真=CroMary/Shutterstock.com)
(写真=CroMary/Shutterstock.com)

まずは老後に賃貸住宅に住むメリットとデメリットを考えてみましょう。

● メリット
・ 収入の変動があれば、住む場所や間取りを変更することができる
・ メンテナンスは管理会社がやってくれるので、まとまった費用がかからない
・ 固定資産税や住宅ローンを支払う心配がない

● デメリット
・ 毎月家賃を払う必要がある
・ 更新料や引越し代がかかる
・ 新しく賃貸住宅を借りたいと思っても、審査が通らない可能性がある

メリットは、収入の変動があれば住む場所や間取りの変更できますし、修繕やメンテナンスは管理会社が代わりにやってくれます。家賃や契約更新料にその費用が含まれているため、追加費用が発生しないと言われています。

一方、賃貸住宅にはデメリットもあります。住宅ローンや固定資産税がないかわりに毎月、家賃の支払いが発生するだけではなく、新規契約・更新時に審査が通らない可能性もあるのです。2017年10月に国土交通局が出した「家賃債務保証の現状」によれば、単身高齢者(60歳以上)に対して11.9%が入居制限を設けていると回答しています。ただし、物件によっては受入れを促進しているものもあります。老後に賃貸住宅での生活を選択する場合は、立地や選び方、基準をよく検討する必要があるでしょう。

老後は「段差」を意識した賃貸住宅選びを

それでは老後に賃貸住宅を選択するには、どのような物件がよいのでしょうか。駅やバス停が近くにある、買い物に行きやすいなどの立地条件もさることながら、安全性も重視したいポイントではないでしょうか。

歳を重ねれば重ねるほど、階段や玄関などの段差で転倒して怪我で入院をするなどのリスクが高まります。車椅子生活になれば、段差があるところでは生活しづらくなります。通常の賃貸住宅にもよい点はありますが、高齢者専用賃貸住宅などを検討してみましょう。段差をほとんどなくし、手すりなどをつけたバリアフリー設計になっていたり、人が常駐して緊急対応や生活の困りごとの相談にのってくれるサ?ビスがあるなど、住環境が整っています。

UR都市再生機構は所得に応じて家賃が決まる仕組みで、所得が低くても入居審査に通れば入居できると言われています。一方、民間企業の物件の場合は、手厚いサービスが受けられるものの、初期費用や月額費用がそれぞれの物件で大きく異なります。

たとえば60歳から90歳の30年間、住むとして考えてみましょう。

家賃13万円の家に住む場合(2年更新で更新料は家賃1ヵ月分、家財保険料を2万円として計算)

家賃:13万円×12ヵ月×30年=4,680万円
更新料:13万円×15回=195万円
家財保険料:2万円×30年=60万円
合計:4,935万円

敷金30万円、月額費用17万円(家賃、共益費、基本サービス費)の高齢者専用賃貸住宅に住む場合

敷金:30万円
月額費用:17万円×12ヵ月×30年=6,120万円
合計:6,150万円

敷金60万円、月額費用23万円(賃料、管理費、生活支援サービス費)のサービス付高齢者向け賃貸住宅に住む場合

敷金:60万円
月額費用:23万円×12ヵ月×30年=8,280万円
合計:8,340万円

上記はあくまでも一例です。これ以外にも諸経費がかかる物件やサービスごとに費用が異なる物件もあります。将来、どのようなサービスが必要なのかをよく検討し、毎月貯蓄をしておくのがよいでしょう。

老後を賃貸住宅で生活するためには早めに資産形成を

現役時代は家賃補助をはじめとした各種手当を受けることもできます。しかし、老後は国も会社も助けてはくれず、生涯自分でお金を支払わなければいけません。早めにライフプランを考え、将来の資金の見立てを行い、月々いくら貯蓄が必要なのかを具体的に考えて資産形成をしましょう。自分で検討するのが難しいのであれば、ファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。