「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」とは、江戸時代の大名で、剣術の達人でもあった松浦静山の言葉です。これは、資産運用においても当てはまる言葉です。では、投資においての負け、すなわち失敗につながりがちな要素やパターンというものには、どんなものがあるのでしょうか?

目次

  1. 失敗パターン1:投資と投機の違いを理解できていない
    1. 投資と投機。両者の違いは根拠の有無
    2. 投資は企業の「価値」に資金を投じる行為
  2. 失敗パターン2:金額ではなく「勝率」ばかりを意識する
    1. 大切なのは損小利大
  3. 失敗パターン3:相場の○○ショックで怖くて売却してしまう
    1. 狼狽売りは資産を減らすだけの場合も
    2. 余裕資金を確保しておくことが大事
  4. 失敗パターン4:理由もなく投資する
    1. 明確な根拠をもって投資する
  5. 投資の成功のためには、コントロールできる「コスト」を抑える
    1. iDeCo、NISAを活用して税負担を下げる
  6. 失敗パターンを避けることで成功に近づく

失敗パターン1:投資と投機の違いを理解できていない

「投資」というと、何か胡散臭いと感じる人も少なくないかもしれません。おそらくそれは、「投機」とイメージが重なっているせいかもしれません。確かに言葉も似ていますし、共通する点がない訳ではありません。しかし実のところは、投資と投機はまったく性質が異なります。

投資と投機。両者の違いは根拠の有無

投機とは、不確実だが当たると大きいものに賭けることをいいます。いわゆる、ギャンブルです。根拠はないものの、勝つ可能性もないわけではない。当たったときの儲けが大きいのでやってみる、という種類のものです。

一方、投資も確定していない将来のことに賭けるという意味では同じです。しかし投資には、それに賭ける根拠が見つけられているという点が、投機と決定的に違います。もちろん、将来のことに「絶対」というものはありません。それでも、資金を投じるだけの価値があるかどうかを見極めようとした結果行うものが投資で、その努力によって賭けの勝率が高まります。

投資は企業の「価値」に資金を投じる行為

たとえば、株式に資金を投じるのであれば、その企業には他社にないどんな強みがあるのかを見極めるべきです。今後の成長性が見込めると判断できれば、それに資金を投じる、つまり投資します。あるいは、株価が示している企業の評価が、本当に適正なのかを調べ、考察します。

もしその企業が過小評価されていると判断できれば、投資をする価値があることになります。すなわち、投資とは企業の「価値」に資金を投じるものなのです。

一方、投機では、その株価が上がるか下がるかに賭けます。企業の中身を見定める努力よりも、株価の勢いや相場のムードを重視します。つまり、投機は企業の「価格」だけに資金を投じているのです。

投機では、会社の将来の成長性を見極めた買いではないので、株価が上がればすぐに売ってしまいがちです。株価が下がっても、会社の価値を信用していないのですぐに売りに走りがちです。

このように短期的な売買を繰り返していては、たまたまギャンブルに当たることがあっても、大きな資産を形成できる可能性はかなり低くなります。

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失敗パターン2:金額ではなく「勝率」ばかりを意識する

見込み違いで投資対象の価格が下がってしまったときでも、売って損を出したら投資の失敗が確定してしまうと、売却をためらう人も多いかもしれません。

しかし、保有する根拠が間違っていたのなら、売却をためらってはいけません。相場の格言に、「見切り千両」という言葉があります。勇気のある撤退は、損切りの場合であっても千両に値するという意味です。だらだらと保有を続けて損失を大きくするよりは、早めに損失額を確定して、売却代金で次の有望な投資先に資金を投じるほうが理に適うはずです。

大切なのは損小利大

運用が成功したかどうかは、資産全体がどれくらい増えたかで決まります。損切りを何度かすることになったとしても、他で利益が上がるような投資を行い、全体として資産が増えていればよいのです。

分散投資という王道の戦略も、そのためにあると言えます。九勝一敗の勝率でも、大きな一敗にひきずられて資産全体では減少してしまったというのでは、運用の失敗です。7勝3敗でも、6勝4敗でも、勝ちを大きくして資産全体が増えていれば大成功です。

つまり意識すべきは、「損小利大(損失は小さく抑え、利益は大きく伸ばす)」であるということです。勝率にこだわりすぎると、売るべきものも売ることができず、逆の「損大」を招きかねません。

失敗パターン3:相場の○○ショックで怖くて売却してしまう

相場にはよく、「○○ショック」とのちに呼ばれるような、大幅に下落する局面があります。有名なところでは、2008年9月にアメリカの有力投資銀行だったリーマン・ブラザーズが破綻し、その前後に株式市場が大きく下落した「リーマン・ショック」があります。

他にも、ギリシャの債務問題から欧州危機につながった「ギリシャ・ショック」や、恐怖指数と呼ばれるVIX(ヴィックス)指数の急上昇によって金融市場が大混乱した「VIXショック」など、突然の相場の急落は珍しくありません。

狼狽売りは資産を減らすだけの場合も

相場の雰囲気が突然一変し、総悲観のムードに覆われると、誰もがうろたえがちです。価格が大幅に下落する日が続き、底値のめどさえ付かないという雰囲気では、それこそ何でも値段が付くうちに投げ売ってしまいたいという衝動にかられるのが普通です。

しかし、そうして売ったところが結局相場の底だったということも実は多いのです。ショック相場では、そのショックの内容が本当に投資対象の価値に影響を与えるものなのかどうか、いま一度冷静に考えてみることが重要です。

単に相場の雰囲気に引きずられて価格を下げているだけなら、少し様子を見て価格の回復を待つほうが賢明かもしれません。状況が完全に変化したと考えるなら一定の損切りも必要となってきますが、単なる狼狽売りは無駄に資産を減らすことになりがちです。

しかし、「言うは易し」で、損切りと狼狽売りの線引きは簡単ではありません。狼狽売りではない損切りをするためには、たとえば、当初から一定の損切りルールを作っておくことなどが役に立つかもしれません。価格の下落幅や含み損の額、あるいは他の投資商品とのパフォーマンスの差などでもよいと思います。何らかのルールを作っておくことで、投資対象の状況を冷静に判断でき、流れに身を任せた狼狽売りを避けることができるでしょう。

余裕資金を確保しておくことが大事

また、狼狽しないためには、ある程度の余裕資金を持っておくことも必要です。目いっぱい投資に資金を回していると、損失が膨らんできたときに、金銭的にも精神的にも耐えるのが、より難しくなるためです。

ショックは予測できると考えられがちですが、実際にはほとんどの人がショック相場に巻き込まれてしまいます。すでにわかっていたと思われるような事柄に突然金融市場が反応したり、この程度で終わるだろうと思っていた下げ相場がさらに大きく底割れしたり、プロの運用者であってもショック相場では大きな損失を免れていません。常日頃から適切な資金管理を行っておくことが、ショック相場での狼狽売りを避けるための基本的戦略であるとも言えます。

失敗パターン4:理由もなく投資する

先に、投資と投機の違いは、資金を投じる根拠があるかどうかであると書きました。しかし、その根拠がぐらぐらしているようなものなら、投資の成功は危ぶまれるものとなります。

たとえば、誰かに勧められたから、というようなことが根拠となっている場合などがそうです。もちろん情報収集は重要であり、また実際に友人などからのお勧めが本当に役立つものである場合もあると思います。

ただし、その情報も実際に自分で吟味して、納得できるものであるかを確認することが必要です。そうでなければ、投資を行った後に、その商品をいつまで保有するか、またどの価格で売却するかといった判断ができません。

逆に、価格が下落したときにも、なぜその商品に投資したのかに納得できていなければ、すぐに狼狽して売却し、無駄に損を出すことになりかねません。

明確な根拠をもって投資する

また、投資した理由が明確であれば、その理由が何らかの事情で以前と異なってきた場合には、売却すべきタイミングだと判断できます。もし、企業のある事業の成長性に期待が持てると判断してその企業の株式に投資したのであれば、その事業が上手くいっている間は、株価が多少変動しても投資を継続すべきです。

しかし、事業の成長性に陰りが見えてきたり、企業がその事業を売却しようと計画したりするなら、株式を保有する理由はなくなります。株式の保有に他の理由が見つかっているなら別ですが、そうでなければ株式は売却して別の投資機会を探すべきです。

理由が無くなっているのに保有を続けるのは、もはや投資ではありません。単なる惰性で保有しているに過ぎなくなります。そうした惰性を避けるためには、なぜその投資対象に資金を投じたのかを常に意識しておく必要があります。

状況がさまざまに変わるにつれ、保有を続ける理由が変わることもあるかもしれません。しかし、そうしたことは問題ではありません。資金を投じて保有する意味が見つかっている限りは、それは意味のある投資です。重要なのは、投資をしている理由を常に明確にし、意識しておくということです。

投資の成功のためには、コントロールできる「コスト」を抑える

ここまで、投資を成功させるための心構えをいくつか挙げてみました。しかし残念ながら、それらを実践しても、必ず投資が上手くいくというものではありません。株価にしても、為替にしても、どんな投資対象であっても、将来の値動きを確実に読み切ることは不可能だからです。

投資対象の価格はコントロールができません。しかし、一方でコントロールできるものもあります。それは運用コストです。

iDeCo、NISAを活用して税負担を下げる

運用コストには大きく、税金と手数料があります。まず、税金という運用コストを下げるなら、iDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)といった税制優遇制度を使って投資を行うことが考えられます。

iDeCoとは個人型確定拠出年金のことで、国民年金を収めている人なら、原則誰でも加入できる制度です。NISAは少額投資非課税制度のことで、2014年に個人投資家のために作られた制度です。ここではそれぞれの制度の詳細に触れることは避けますが、ともに一定の条件の下で運用益が非課税になるなど、税制面でのメリットがとても高い制度です。目的などによって使い分けも必要ですが、活用を検討する意味合いは大きいはずです。

また手数料などの運用コストを下げるなら、ネット証券会社を利用することが検討できます。一般的に、実店舗を多く構える、いわゆる対面証券会社と比べ、ネット証券はさまざまな手数料が割安に設定されています。加えて、無駄な取引の回数を減らして、取引手数料を抑えることも意識しておきたいところです。

言うまでもなく、運用コストが小さいほど、投資の勝率は確実に高くなります。地味な部分に思えるかもしれませんが、運用コストの効率化を図ることも、投資においては重要な戦略の一環です。

失敗パターンを避けることで成功に近づく

どんなことにおいても、何の苦労もしないでお金を儲けることはできません。投資においても、きちんと調べ、学び、熟考するなどの努力なしに、資産を継続的に増やすことはできません。しかし、そうした努力をしていても、見込み違いをしたり、ショック相場に巻き込まれるなどして、損失を出してしまうこともあります。先ほども書いた通り、相場はコントロールできません。

しかし、きちんと投資に向き合っていれば、投資が成功する確率はその姿勢に応じて高まるはずです。

要は、無駄な失敗はしないことです。無駄な失敗とは、明らかになっている失敗パターンにはまった、避けられたはずの失敗です。すなわち、値動きだけに賭けて投資対象の本質を見ない、損を出すのを嫌って売ることができずだらだらと傷を広げる、冷静さを失ってすぐに狼狽売りをする、投資した理由を見失って次の一手が分からなくなる、などといった失敗です。こうしたことを避けることで投資の成功に近づくことができます。

北垣愛
国内外の金融機関で、金融マーケットに直接携わる仕事を長く経験。現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、主に金融に関する情報発信も行っている。日本証券アナリスト協会認定アナリスト、FP一級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級。