人生の3大資金の一つにも数えられるのが住宅資金だ。よほど資金に余裕があれば別だが、住宅ローンを組んで購入するのが一般的だ。新築には手が届かないケースでも、程度の良い中古住宅を見つけられるかもしれない。新築との比較は難しいが、割安で良い物件もあるなど、コロナ禍の現在を含めて中古住宅の人気は年々高まっている。
実は、コロナ禍で住環境を見直そうという需要は拡大している。日本でも住宅ローン残高は216兆円と増える傾向だ(日銀統計2021年)。
中古住宅を購入するのであれば、住宅ローン控除は忘れずに利用したい制度だが、控除を受けるためにはさまざまな要件をクリアしなくてはならない。
この記事では、国など行政のWebサイトを見てもよく分からないという人のために、中古住宅を購入した際の住宅ローン控除について2022年度税制改正案を踏まえて詳しく解説していく。
本記事は2022年2月の情報をもとに、最新の情報に更新し、公開しています。
目次
住宅ローン控除とは?
住宅ローン控除とは、大雑把に説明すると、住宅ローンを組んで家を取得した場合、一定条件を満たすことで、毎年ローン残高の一定割合を所得税から税額控除することができる制度である。控除を受けるためには住宅を取得した翌年に確定申告する必要がある。
サラリーマンやOL、パート、アルバイトなどの給与所得者であっても確定申告は必須だ。なぜなら、住宅ローン控除の申請は年末調整では処理できないためだ。控除を受けられる条件で住宅ローンを組んだら確定申告をすると考えておいたほうが良いだろう。
ここから、控除を受けられる期間や、控除を受けられるローンの限度額、控除金額(控除率)、控除を受けられる住宅の条件について詳細に解説していこう。
控除を受けられる期間が13年に延長
●基本制度は最初の10年 → 13年! → 10年?
まず、基本制度の仕組みからだ。
・入居期限が2022年~23年(※1)の場合
これまでの控除対象のローン限度額は減額の方向で、新築一般住宅で3000万円(認定住宅などは5000万円、新しく追加されたZEH水準省エネ住宅は4500万円、一定の省エネ住宅は4000万円)と基本的に減額となる。さらに、控除率も1%から0.7%に減率されるのだ。
また、控除期間は10年間が13年間となるも、総額で最大400万円であったものが273万円(参考:認定住宅などは500万円455万円、ZEH水準省エネ住宅(※2)は409.5万円、省エネ住宅の場合は364万円)と減額となる。
※1:基本制度の「取得等の日から6カ月以内」という入居期限要件のことではないので注意
※2:ZEH水準省エネ住宅=ゼロ・エネルギー・ハウス。大幅な省エネハウスのこと
●アフターコロナを見据えた住宅取得を!
・入居期限が2024年~25年の場合
注意したいのは建築確認が2023年までのものとなるところだ。変更点は一般住宅の場合はさらにローン限度額(※1)が3000万から2000万に減額となるだけでなく、控除期間も10年間(控除額最大でも総額140万※2)となるので一般住宅を新築する場合は建築時期に注意しよう。
※1:最大のローン限度額:認定住宅などは4500万円、ZEH水準省エネ住宅は3500万円、省エネ住宅の場合は3000万円とそれぞれ減額されているのがわかる
※2:最大の控除額:認定住宅などは500万円409.5万円、省エネ住宅の場合は273万円、ZEH水準省エネ住宅は318.5万円(0.7%の控除率で13年分の試算)
なぜ注意が必要かといえば、一般住宅の新築購入の場合、以前のローン限度額いっぱいの4000万を借りる方は少ないものの、3000万となるとかなりの人が借り入れするケースが多いといえる。これが、2000万(期間も10年)となればローン減税の恩恵が減少し家計の負担が増すからだ。
ただし、新築住宅の多くは、省エネ基準に適合している住宅でもあることもあり、2024年〜25年入居期限の場合でも最大3000万のローン限度額の範囲(比較的多い層)で控除(10年間の総額210万)が受けられるので、全体的には従前の制度と比べてローン減税の効果はそれほど見劣りしない。
また、個人売買での中古住宅の場合もこう変わる。つまり、控除対象のローン限度額は2000万円(認定低炭素住宅、長期優良住宅にZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅などは3000万円)で控除率は新築と同様に0.7%と減率になる。控除期間10年間で総額140万円(これは2024年〜2025年入居期限の一般住宅を新築する場合と同等となる。また、認定住宅などは210万円)となる。
以上の改正ポイントを踏まえ、住宅取得にはアフターコロナを見据えた計画が必要と言える。ただし、不動産業者が買い取り再販売する中古物件(一定の増改築を施した場合)は13年間の適用となる。
・住宅ローン減税制度のルーツ
そもそも住宅ローン控除の起源は1972年に住宅取得控除として創設されたものである。1978年の税制改正で「住宅ローン控除」として登場し、バブル期に拡大された。
2008年のリーマンショック以降、国内景気の先行きが見えず、回復には相当の時間を要する負のイメージが漂っている。そのような中、冷え込んだ景気回復や社会保障の財源確保を目指し、2014年4月に消費税が5%から8%に引き上げられた。
その後の消費税率が現状の10%になったのは2019年10月1日であり、コロナ禍の今回の改正でも住宅ローンの減税率も微妙に1%から0.7%と下がり傾向だが、住宅ローン減税自体は続いている。
減税率の低下には逆ザヤ現象の緩和が背景にあるからだ。例えばローンの金利が0.8%であれば、1%のローン減税により差額0.2%の恩恵を受けている人がいる。
・政策上の住宅ローン減税制度
住宅ローン減税制度は今や多くの国民に必要な制度となっている。バブル期の金利の高騰、バブル崩壊による景気の低迷、消費税増税、そして今回の再延長要因である新型コロナ対応に限らず、国民の生活がますます苦しくなることを懸念した政府が救済措置として設けたのが、経済政策上の住宅ローン減税制度である。
・税額控除は大きな減税
「住宅借入金等特別控除=住宅ローン控除」は、住宅ローン減税制度の一つであり、一定条件をクリアした住宅をローンで購入した場合、所得税から一定額を控除できるというものだ。所得から控除する生命保険料控除などの所得控除とは違い、所得税額から直接控除できる税額控除なので、その恩恵は非常に大きいと言えよう。
ただし、今回の改正では、従来は所得3000万以下の方が対象だったが、2000万(年収ではなく所得)と所得制限が一段厳しくなっている。
・中古でも大きな節税効果
控除額は、年末の住宅ローン残高の0.7%(控除率)。微々たる数字に見えるかもしれないが、人生で一番高い買い物といわれている住宅は、たとえ中古であっても都心で購入すれば数千万円はくだらないだろう。仮に認定住宅のケースでローン残高3000万円であれば、中古住宅でも21万円もの税額控除が受けられる。これは大きな節税となり、軽視できる金額ではないと言える。
また、中古住宅を購入した後で、リフォームをする人も多いだろう。この場合も一定条件をクリアすることで住宅ローン控除の対象となる。これらの制度をうまく活用することで、大きな節税効果を生み出せるとあっては、利用しない手はないだろう。
住宅ローン控除には確定申告が必須
・確定申告は必須
住宅ローンを組んで家屋を取得した場合、一定要件を満たすことで10年間にわたり毎年の年末ローン残高の0.7%(控除率)を所得税から税額控除できる。ただし所得税の税額控除を受けるためには、入居した年の翌年に確定申告をする必要がある。
・会社員も確定申告が必須
サラリーマンやOL、パート、アルバイトなどの給与所得者であっても、1年目だけは確定申告は必須である。なぜなら、住宅ローン控除の申請は最初から年末調整では処理できないためだ。控除を受けられる要件を満たすのを確認したうえで、住宅ローンを組み、翌年の申告時期には忘れずに確定申告を行おう。
控除を受けるための要件
ここからは、住宅ローン控除を受けるための主な要件について解説しよう。住宅ローン控除を受けるためには新築、中古に共通する要件がある。さらに、「新築住宅の場合」「中古住宅の場合」など種々多様な要件がある。
※2024年1月1日以降に建築確認を受ける家屋で省エネ基準を満たさない場合の取得は住宅ローン減税の適用外となる。
この記事では中古住宅の住宅ローン控除に焦点を当てているので、中古住宅に絞って解説していこう。
●新築住宅と中古住宅の共通の要件
控除を受けるための基本制度の共通要件は概ね以下のとおりだ。
・取得した住宅の床面積が50平方メートル以上であること
「登記事項証明書に記載の住宅の床面積の半分以上が自己の居住専用部分であること」
・自分が居住者となる住宅であること
「住宅が2つ以上ある場合は主な居住用の1つに限定」
・居住用家屋の床面積が40~50平方メートルの場合でも適用される
「2023年12月31日までの建築確認を受けた家屋・所得1000万以下などが要件」
・住宅取得の日から6ヵ月以内に居住し、適用を受ける年の12月31日まで継続して居住すること
「国内の単身赴任には要件はあるが適用、国外は取得日で異なる」
・借入期間が10年以上の住宅ローンであること
「途中で繰り上げ返済しすぎて10年未満とならないように注意」
・入居した居住年およびその年の前後2年以内に住宅に関連する譲渡所得の課税の特例等を受けていないこと
「計5年間に3000万円の特別控除、特定居住資産の買換えの特例などを受けていないこと」
・控除を受ける年分の合計所得金額※が3000万円以下であること
「いわゆる年収ではない」
●中古住宅の固有の要件
購入したのが中古住宅の場合、築後使用された物件に限られるが、以下の2つの主な要件もクリアする必要がある。
(1) 1982年1月1日(昭和57年:登記簿記載日付)以降に建築された住宅と確認できること
「従来の築年数基準は撤廃され、新耐震基準に適合しているとみなされる」
(2)耐震基準に適合しているか:耐震レベルが各証明基準をクリアしていること
〔耐震基準適合証明書〕
家屋取得以前2年以内に建築士や各機関等より「増改築等工事証明書」の取得。
・役所の耐震推進課(補助事業の対象の場合⇒住宅耐震改修証明書)
・役所指定確認検査機関
〔耐震基準に準ずるもの〕
・登録住宅性能評価機関(建設住宅性能評価書で等級1~3)
・既存住宅瑕疵担保責任保険法人(付保証明書)
以下の家屋取得方法では適用されない
・取得時に生計を一にし、取得後もこれを継続中の親族または特別な関係者から取得
・贈与による取得
中古住宅リフォーム減税と併用は可能か
2020年の税制改正では住宅ローン控除と譲渡所得の特例などの重複適用が見直され、制限されている。つまり重複適用は解消の方向ということである。ところが、この住宅ローン控除とリフォーム減税との併用は可能な組み合わせもあるのだ。
└リフォームを行う資金を金融機関等から借り入れをした場合
・住宅ローン減税(中古住宅リフォームにも適用:住宅借入金等特別控除)
「10年以上の償還期間が必要ではあるが、各種リフォームにも適用可能」
「中古住宅を購入してリフォーム、自宅を大規模リフォームなどに利用可能」
・ローン型減税(中古住宅リフォーム減税:特定増改築等住宅借入金等特別控除)
「住宅ローン減税との違いは、償還期間が5年以上~10年未満という点だ。ただし、ローン型減税に該当するのは5年以上の場合であり、5年以下であれば投資型減税を使えばよい。また、家計的にも将来を見据えて長期のほうがよい場合もあるだろう。10年以上の返済期間が必要であれば、住宅ローン控除の適用が可能かも検討しよう。」
・計算式〔2014年4月1日~2023年12月31日までに改修工事後の入居の例〕
A×2%+(B-A)×1%=控除額(12万5千円が限度⇒5年間で62万5千円となる)
A.増改築等の工事に要した住宅借入金等の年末残高の合計のうち、当該リフォーム工事に要した費用(※)の合計額
B. 増改築等の工事に要した住宅ローン等の年末残高の合計額(1000万円が限度)
(※)リフォーム工事の内容により特定増改築等限度額が違う。例えば、バリアフリーなら200万円、省エネの場合は250万円などとなる。
└リフォームを行う資金を自己資金から拠出した場合
〇投資型減税(中古住宅リフォーム減税)
政府が推進する認定低炭素住宅、長期優良住宅にZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)水準省エネ住宅が追加された。
・住宅耐震改修特別控除(耐震改修促進税制の一つ)
個人が2006年4月1日~2023年12月31日までの間に自己が居住する家屋(1981年5月31日以前に建築)に、一定の耐震改修工事※(現行の耐震基準に適合)をした場合に適用される。住宅耐震改修費用の10%(当該改修費用に課税された消費税が8%超の場合は最高25万円、それ以外は20万円)を入居した年の1年分のみ特別控除するものだ。
・住宅特定改修特別税額控除(対象となる一定の工事は以下のとおり)
バリアフリー改修工事
省エネ改修工事
多世帯同居改修工事
耐久性向上改修工事
である。
※注意したいのは各工事における費用から国や自治体からの補助金(助成金)は除かれる。補助金がもらえる場合は、もらったほうがお得だ。
・投資型減税は1年分
工事費用を自己資金で全額支払った場合も、所得税より工事費の10%を控除できる。ただし、控除できるのは該当の必須工事をして入居した年の1年分だ(控除しきれない場合は翌年に控除)。その他の工事は必須工事と同額までは5%の控除となり、かつ、必須工事と合わせて1000万までが限度額となる。
・投資型減税のポイント
注意したいのは、リフォームにかかった工事費が減税対象となる限度額である。例えば耐震や省エネの場合は250万円(太陽光発電システム設置で+100万円)であり、減税額は25万円となる。バリアフリーなら同20万円となる。これが認定住宅(長期優良化住宅)であれば50万にもなるのだ。
それだけではない、複数の内容の工事を同時にする場合、合算した控除を受けられるのだ。こうなると、助成金含めローン減税総額との比較もポイントとなる。
・併用できないケース
投資型減税のうち住宅特定改修特別税額控除・住宅ローン減税とローン型減税とは併用できない。バリアフリーや省エネ・多世帯同居などの改修工事のケースで各制度の要件も満たす場合でも、どちらか一つの選択が必要となる。注意したいのは、一度選択すると覆すことができない点だ。
・併用可能なケース
投資型減税のうち、もう一つの住宅耐震改修特別控除と住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は併用可能な場合がある。残念ながら、中古住宅を購入したうえで耐震改修をするケースは対象外だ。
ただし中古住宅を購入して一定の耐震改修工事を行った場合、事前に申請したうえでその要件をクリアできれば当該改修工事費用込みで住宅ローン控除の適用を受けられる。
・いわゆる要耐震改修住宅
通常、前述(中古住宅の固有の要件)のように、中古住宅は耐火基準もしくは経過年数基準を満たすものに限定されていた。2014年4月1日以降は、床面積が50平方メートル以上(一定の要家を満たす場合は40~50平米も対象になる)で家屋取得から6ヵ月以内に入居するまでに、現行の耐震基準への適合を証明するなどの要件を満たした要耐震改修住宅も「住宅ローン控除」の対象となった。
住宅ローン控除額の計算方法
住宅ローン控除額を計算するには、年末時点でのローン残高に0.7%を掛ければよい。
ローン残高は、銀行などから前年末までに送付されるローンの年末残高等証明書(※)で確認できる。
※住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(今後の変更点など後述参照)
住宅ローン控除額=12月31日時点でのローン残高×0.7%
例えば年末の時点で住宅ローン残高が2000万円だとすると、
2000万円×0.7% =14万円
となり、14万円が所得税額から税額控除されることになる。
●住宅ローン控除の最高限度額
基本制度の場合、一般的な住宅ローン控除の最高限度額は21万円(年末借入残高の上限3000万円の0.7%)だ。つまり13年間最大控除額を受ければ、273万円の控除となるわけだ。しかも税額控除だ。まだまだ、非常に大きな節税効果を示す金額とは思わないだろうか。
ちなみに、中古住宅の控除対象限度額は2000万円(個人間売買で取得した場合)で、最高限度額は14万円(年末借入残高の上限2000万円の0.7%)になっている。つまり、中古住宅でも10年間最大控除額を受ければ、140万円の控除となる。
会社名 | 実質 金利 (年利) |
事務 手数料 |
借入 可能 金額 |
---|---|---|---|
|
0.440%〜 | 借入金額×2.20% | 500万~1億円 |
|
0.475%〜 | 借入金額×2.20% | 500万~1億円 |
|
0.475%〜 | 借入金額×2.20% | 100万~1億円 |
|
0.830%〜 | 借入金額×2.20% | 100万~8000万円 |
|
0.430%〜 | 借入金額×2.20% | 200万~1億円 |
●控除しきれなかった場合はどうなる
・住民税からの控除も可能?
住宅ローン控除額が所得税額を上回ってしまった場合、控除しきれなかった税額はどうなるのか。このままでは住宅ローン控除の恩恵をすべて受けきれないことになる。それでは不公平になるので、申告年度の所得税額から控除しきれない場合は、翌年の個人住民税からも控除できる制度がある。
・多くの人が利用可能?
例えば、年収400万円の人が支払う所得税は概算すると年間で10万円程度である1430万円以上の住宅ローンを組んでいれば、控除額は10万円を超えるので、所得税額から控除しきれないことになる。
この救済制度は多くの人が利用する可能性があると言える。
・住民税額からの控除限度額
実はこの個人住民税からの控除にも上限がある。現在の税率だと、最高で年間13万6500円が控除の上限だ。もう少し詳しく言うと、所得税から控除しきれなかった金額と所得税の課税総所得金額などに7%をかけた金額(この限度額が13万6500円)を比べて、いずれか少ないほうの金額が住民税より控除できる。
ただし中古住宅の場合、控除上限額は9万7500円になる点に注意が必要だ。
・市町村への申告は不要
住宅ローンを組むときには、いくらのローンを組めば最も恩恵を受けられるかも、参考になるだろう。
ちなみに、2010年度より個人住民税控除を利用するために、市区町村に特別な申告をする必要もなくなった。確定申告の添付資料の見直しや給与支払報告書の改正によって、市区町村のほうで把握できるようになったためである。
住宅ローン控除を受けるまでの流れ
住宅ローン控除を受けるまでの流れを整理してみよう。基本的な流れは以下のとおりだ。
1.住宅の取得
2.入居(取得日から6ヵ月以内)
3.必要書類の入手・作成
4.入居の翌年に確定申告で申請(通年:2月16日~3月15日)
5.還付金の受け取り(1ヵ月前後)
基本的な流れはこの通りでシンプルと言える。大事なのは制度適用の入居期限の厳守と住宅取得から6ヵ月以内に入居することだ。これができないと申請すらできなくなる。
続いて、必要書類について解説しよう。
確定申告の必要書類を解説
申告者の区分から見てみよう
└【給与所得者の場合】
・国税庁のWebサイトで作成し郵送またはe-taxでも可能
・2019年4月1日以降は給与所得の源泉徴収票の添付は不要
※ただし、税務署などで確定申告書を作成する場合は忘れずに持参すること
確定申告は最初のみ、翌年以降は年末調整で済む
・申告書は新住所地を管轄する税務署へ提出
└【給与所得者以外の場合】
・通年の事業所得などと一緒に確定申告を行う
※注意したいのは自宅兼事務所の場合、住宅部分のみ適用される点だ。
この場合、事業部分が少ないほうが有利と言える
・個人事業主の納税地は自宅が納税地であれば新居の管轄税務署に届出のうえ、申告
・事業所が納税地であれば事業所の移転ではないので届出は不要
〔共通の準備項目〕
添付書類 | 入手先 | 備考 |
マイナンバーカードの写し | 総務省や役所で申請 受け取りは役所 |
カードは事前に取得 書類提出当日の提示可 |
年末残高証明書原本 「借入の場合の共通項目」 |
住宅支援機構や金融機関など。 [今後の変更点に注意]参照 |
住宅ローン等 連帯債務者がある人も必要 |
家屋の登記事項証明書原本 | 法務局 (司法書士に依頼可) | 取得年月日、住宅取得の対価の額、床面積(50平方メートル以上) ※一定の要件で40~50平米も可能 |
工事請負または 売買契約書の写し |
不動産業者など | 同上確認、印紙漏れ注意 |
・住宅取得資金などの贈与がある場合は贈与の申告書など
・市町村などより補助金を受けている場合は補助金決定通知書など
└新築住宅の必要書類
〔新築特有〕
・住宅借入金等特別控除額の計算明細書(連帯債務者がある人も必要)
・入居時期に関する申告書兼証明書(控除期間13年コロナ対策特例措置用)
※(申告時期に国税庁のホームページ掲載)
・土地代金も控除対象の場合、土地の登記簿謄本(原本)や売買契約書の写しが必要・認定住宅「長期優良住宅や低炭素建築物」等計画の場合は認定通知書の写し
・他にも認定住宅の場合は市町村発行の住宅用家屋証明書の写しなどが必要
└中古住宅の必要書類
〔共通の項目〕のほかに必要な書類
「中古住宅の耐震基準を満たす場合」
・建築士等(耐震基準適合証明書の原本)
・登録住宅性能評価機関(建設住宅性能評価書の写し)
・既存住宅瑕疵担保責任保険(付保証明書の原本)
「前述の要耐震改修住宅の場合」
・当該工事請負契約書
以下の4つのいずれかの書類(原本/写しに注意)
・耐震基準適合証明書の原本ならびにその建築物の耐震改修計画の認定申請書の写し
・耐震基準適合証明書の原本ならびにその申請書の写し
・建設住宅性能評価書の写しならびにその申請書の写し
・既存住宅瑕疵担保責任保険に係る付保証明書の原本ならびにその加入申込書の写し
※注意したいのは、原本なのか写しなのかである。どちらでもよいならば写しでよい
└増改築(リフォーム)の必要書類 確定申告書に添付する書類
・マイナンバーカード(申告当日の提示もしくは写しの提出)
・計算明細書「住宅耐震改修特別控除額・住宅特定改修特別税額控除額」
※国税庁ホームページ掲載の共通書類
・住宅の登記事項証明書「原本」
・耐震のみ次のいずれか一つ「住宅耐震改修証明書・増改築等工事証明書」
※前述(中古住宅の固有の要件)参照のこと
・耐震以外「建築士等が発行する増改築等工事証明書」
・バリアフリー改修の場合は特定個人に該当が必須だが、介護認定または要支援認定 を受けている場合、「介護保険の被保険者証の写し」
●給与所得者は申告が必要なのは初年度のみ
住宅ローン控除は手続きが複雑だが、控除を受けるのに確定申告が必要なのは初年度のみだ。これは今のところ変わりはない。翌年度以降は年末調整時に勤務先にローン残高証明書を提出すれば手続きが完了する。
初年度だけ頑張れば10~13年間にわたって大きな控除を受けられるのだから、時間をかけても苦労する価値は十二分にあるといえるだろう。 ただし、その苦労を軽減する方向でもあり、今後の変更点についても注意したいところから下記の通り概要を紹介した。
[今後の変更点に注意]2023年入居2024年以降に確定申告の場合
初年度の税務署や2年目以降の勤務先への残高証明書の提出が不要に?
初年度
・住宅ローン控除申請書を銀行へ提出に:変更
・税務署より年末残高について交付に:変更
・確定申告書の提出:必要
2年目以降
・住宅ローン控除証明書は税務署より交付(毎年)に:変更
・年末残高証明書の添付は不要に:変更
・年末調整書類の提出:必要
住宅ローン控除を受けるためのポイント
ここでは住宅ローン控除のちょっとしたポイントを紹介しよう。
●床面積の合計は「登記面積」で確認する
・床面積は内法面積で確認
床面積50平方メートル以上というのは意外と大きな落とし穴になることがある。というのも、マンションなどの広告で宣伝している床面積は「壁芯面積=へきしん」が多いが、住宅ローン控除で対象となる登記簿に記載の床面積は「内法面積=うちのり」だからだ。住宅の床面積は、登記事項証明書に記載の面積で確認するようにしたい。40~50平米も可能(一定の要件あり)になった。
・登記事項証明書に記載の面積
「壁芯面積」と「内法面積」では計測方法が異なり、「壁芯面積」のほうが「内法面積」よりも広く表記されてしまう。つまり、「広告を信用して50平方メートル(※)の中古マンションを購入したケースでも登記簿で確認したら50平方メートルに達していなかった」ということが起こるのである。
※40~50平米も可能(一定の要件あり)になった
これでは減税制度の蚊帳の外だ。2LDKくらいの中古マンションを購入するのであれば、事前に登記事項証明書で登記簿上の床面積を確認するのを忘れないように徹底することだ。
●住宅の名義は夫婦で
実は住宅ローン控除は世帯単位ではなく個人単位で受けることができる。住宅を夫婦共有の名義にすれば、夫婦で控除を受けることが可能である。控除上限額に引っかかってしまうような高額なローンを組む場合、ぜひとも使いたいところだ。
ただし、連帯保証では控除が持ち分に限定されてしまうので、配偶者は連帯保証人ではなく連帯債務者にしなければ、全額は受けられないので注意しよう。
●勤務先から借りる場合は0.2%以上の金利で借りること
住宅ローン控除の条件として銀行などの金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)、地方住宅供給公社(2020年4月1日現在37公社)、建設業者などに対する債務を10年以上持っていることとなっている。
しかしながら、勤務先からの借入金に限り、0.2%未満の超低金利での借入は控除の対象外となる。
借入金額にもよるが、超低金利だからといって安易に借りると、実は住宅ローン控除のほうがお得だったというケースもあるので、よく考えて検討するとよい。
住宅ローン控除の注意点
ここでは住宅ローン控除を受ける際の「落とし穴」を紹介しておく。しっかり把握してうっかりミスのないようにお願いしたいところだ。
●住宅ローンは10年以上で組む
住宅ローンを組むときは必ず10年以上の長期でローンを組むようにすることだ。10年以下だと住宅ローン控除を申請することすらできない。ただし、住宅ローンを組んだ後でも落とし穴がある。控除適用期間中に繰り上げ返済をしすぎて10年を切ってしまうケースだ。こちらも気をつけておこう。
●自分で住む住宅にしか適用されない
住宅ローン控除は自分が居住する目的で住宅を購入した場合にのみ対象となるので、注意が必要だ。例えば、別荘や賃貸用の住宅として購入する場合は住宅ローン控除の対象外となってしまう。ただし単身赴任や家族を連れて転勤の場合などは、それぞれに救済措置があるので完全に諦めないことだ。
●住民票に購入した住宅の住所が入っているか
住宅ローン控除を受けるためには12月31日時点で、住民票に購入した住宅の新住所が記載されていることが必須だ。購入はしたものの、まだ引っ越しが済んでいない、もしくは引っ越しはしたけど住民票の書き換えが済んでいない場合はその家に住んでいることにはならない。そもそも新住所の住民票提出を、金融機関が融資の条件としている場合も多い。
年末近くの12月に購入したものの、忙しくて引っ越しや役所の手続きが年明けになってしまう場合は、購入した翌年ではなく翌々年が住宅ローン控除を申請できる年になる。うっかりミスをなくして年末までに入居し、翌年の申告時期に確定申告するようにしよう。
「すまい給付金」も受けられるか確認すること
住宅ローン控除を受けることに集中していると忘れがちなのが住宅事業者(申請)を介して国土交通省が実施する給付措置いわゆる「すまい給付金(2022年12月31日まで実施)」の存在だ。消費税率アップに伴う住宅取得の負担を緩和する狙いがある。
消費税が10%の場合、収入が775万円以下のケースでは最大50万円の給付金を受け取ることができる制度なのでしっかりチェックしておこう。
売買契約書で対象か確認することはもちろん、クリアしなければならない要件はいくつかある。給付金の対象となる床面積要件も40平米以上に緩和された。
改正の住宅ローン控除は2025年12月31日まで
ここまで紹介してきたように「住宅ローン減税制度」は、国が住宅の購入を推奨していることもあり、条件さえクリアできれば大きな恩恵を受けられる。将来を見据えて考案した返済計画にも影響してくるので、しっかりチェックすることをおすすめする。
自己資金や親からもらった資金での購入でも投資型減税が受けられたら負担を軽減できる。リフォームをローンで行ったが期間が短いローンでもローン減税を受けたい。中古の住宅を購入したいが不動産業者の再販物件を購入して13年間の控除を受けようなど様々なライフプランに合わせた検討も大事だ。
現行の住宅ローン控除は2021年12月31日までとなっていたが2025年12月31日までの延長となる。2019年10月1日より消費税が10%に引き上げられたことで、控除期間が3年間延長となっていたが引き続き継続された。さらに新型コロナウイルス感染症の対応で入居期限が4年延び住宅ローン控除期限に合わせてきた。
今後も政策上のこうした改正が行われると、「すまい給付金」などしかり控除限度額も変わってくるので、中古住宅も視野に入れて購入を検討しているのであれば、引き続き注目しておくべきだろう。
公開日:2018年1月23日
更新日:2022年2月17日
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