年が明け、確定申告が気になる季節となってきた。サラリーマン・OLには「普段は年末調整で完結だけど、昨年かなり医療費がかかったから今回初めて確定申告をする」という人が多いことだろう。また2017年から新たに始まったセルフメディケーション税制にチャレンジする人もいるかもしれない。セルフメディケーション税制を含め、医療費控除について確認しよう。

確定申告とはどのようなものか。注意点を含めてチェック

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(画像=PIXTA)

確定申告とは、個人や法人が会計年度における所得や納税額を計算し、その内容について国や地方自治体に対し、申告期限までに申告する作業をいう。個人の場合、所得税の確定申告を行わなくてはならない。

また、個人の会計年度は暦年(毎年1月1日から12月31日まで)となっており、申告期限及び所得税の納付期限は毎年3月15日(この日が土曜日あるいは日曜日に重なる場合には、その翌々日あるいは翌日の月曜日)となっている。

申告の期間は毎年2月16日から3月15日までだ。ただし、医療費控除においては、還付請求のために確定申告を行うケースが多いことだろう。還付請求については2月15日以前から申告書を提出することができる。申告書の提出は、窓口提出の他、郵送やe-taxによって行う。なお、還付請求の場合は、第一表に還付金振込先の口座(郵便局または銀行口座)を記入する欄がある。こちらを漏れなく記載するようにしよう。還付の時期は、4月下旬以降になることが多い。

今回からの新制度「セルフメディケーション税制」とは何か

今回の確定申告から、セルフメディケーション税制に基づく医療費控除を行うことができる。「名前を聞いたことはあるけどまだよく分からない」という声がよく聞かれるセルフメディケーション税制とはどのような制度なのだろうか。そして従来の医療費控除との違いは何か。以下に解説していく。

1.セルフメディケーション税制の概要

セルフメディケーション税制のざっくりとした内容は「普段から自分の健康管理に積極的な人向けの敷居の低い医療費控除」というものだ。具体的には次のようになる。

  • 対象者:市区町村や会社などで実施する健康診断や人間ドック、がん検診、インフルエンザワクチンなどの予防接種などといった健康の維持増進及び疾病の予防へ取組としての一定の取組を行っている申請者
  • 控除対象:申請者および生計を一にする配偶者・その他の親族の医薬品(※)の購入費  ※医薬品:医師による処方薬からドラッグストアで購入できるOTC医薬品に転用された医薬品(以下、「スイッチOTC医薬品」と言う)
  • その年(今回は2017年)の1月1日から12月31日までの間に1万2000円超の医薬品を購入すれば控除可能
  • 控除額など:「購入額-1万2000円」をその年分の総所得金額から控除(8万8000円が控除上限)

つまり「申請者本人が日頃からセルフケアに注意していて、たまたま軽い風邪にかかったり軽いけがをしたりした場合には、本人とその家族が支払った薬代が医療費控除の対象となる」というのがセルフメディケーション税制なのである。

2.従来の医療費控除との違いは2つ

従来の医療費控除とはどのように違うのだろうか。主には次の点だ。

(1)適用の条件が下がった

従来の医療費控除は10万円あるいは総所得金額等の5%のいずれか低い金額を超えないと適用できなかった。10万円を超える医療費は、よほどのことがない限り、現役世代には縁がない。この適用条件の目安金額が1万2000円にぐっと下がった。そのため、より気軽に医療費控除をしやすくなったのだ。さらに、自身や家族の健康への気遣いが節税につながる。自分や家族の身体を大事にすればするほど、お財布も大事にしてくれる制度なのだ。

(2)軽度な不調を薬で治すタイプ向け

風邪にかかった場合や軽いけがをした場合、人の行動は2つのパターンに分かれる。一つは「病院で診てもらう」、もう一つは「薬で治す」だ。セルフメディケーション税制は、後者に向いている制度だ。特に、注射と医者が嫌いで、気合と薬と根性で病気を治すサラリーマンにはうってつけかもしれない。

3.5つの注意点

「お手軽な医療費控除」のセルフメディケーション税制だが、次のような間違えやすいポイントがある。

(1)従来の医療費控除との選択適用

セルフメディケーション税制と従来の医療費控除は同時に適用を受けることはできず、どちらか一方を選択することになる。「夫婦それぞれ会社で健康診断を受けているけど、夫は薬で治すタイプ、妻は医者に通うタイプ」という家族もあることだろう。その場合は、夫はセルフメディケーション税制を、妻は従来の医療費控除をそれぞれ自ら選択適用することになる。

(2)控除対象の医薬品が限られる

医薬品の購入費が対象となるといっても、すべてが対象となるわけではない。次のマークがついている医薬品のみが対象となる。購入の際は必ず確認していただきたい。

具体的な対象品目は厚生労働省のWebサイトで確認できる。気になるようであれば、ぜひ確認してほしい。

【参考】 厚生労働省Webサイト(セルフメディケーション税制について)

(3)申請者本人が「一定の取組」を行っている証明が必要

また、薬でケガや病気を治せば誰でもOKなわけではない。日頃から市区町村や会社の健康診断や予防接種を受けている、つまり「自分の健康に意識がある」ことの証明が必要だ。なお、この証明は申請者本人のものでなくてはならない。申請者本人の子どものインフルエンザワクチンを証明しても申請者本人が何もしていなければ適用外となる。

(4)健康診断や人間ドック、予防接種などの費用は控除できない

健康診断などの「一定の取組」をしたことの証明は必要だが、これにかかった費用は控除対象とはならない。セルフメディケーション税制も従来の医療費控除の一環であり、医療費控除の条件はあくまでも「治療」だからだ。「予防」そのものは控除対象とはならない。

(5)任意の健康診断や人間ドックは「一定の取組」対象外

一定の取組についても条件がある。健康保険組合や市町村国保等、各自治体や企業が実施する健康診断や人間ドックなどでなくてはならない。個人が全額自己負担で受けた人間ドックは「一定の取組」に該当しないので注意したい。ただし、そうであっても、勤務先や保険者(健康保険組合や市区町村国保等)から証明を得られればセルフメディケーション税制の適用を受けられる。

医療費控除の基本もおさらい

新制度のセルフメディケーション税制をざっと見たところで、今一度、従来の医療費控除についておさらいをしよう。

1.医療費控除とは 10万または所得の5%以上かかった医療費を所得控除

医療費控除とは、その年(今回は2017年)の1月1日から12月31日までの間に、自分や自分と生計を一にする家族のために、病気やけがなどの治療費などを支払った場合において、その金額が10万円あるいはその年の総所得金額等の5%のいずれか低い金額を超えるならば、その超えた部分を所得控除できる制度のことだ。同一生計親族といっても、配偶者や親族を扶養している必要はない。

共働きで、ともに正社員としてバリバリ働いている場合には、どちらかより有利になる方で医療費控除をまとめて行うことができる。通常、より所得が大きい側で控除した方が、税率も高くなり、結果税額に換算した場合のメリットも大きくなる。

2.控除対象・金額は よくある誤解は「インフルエンザワクチン」の取り扱い

控除対象となるのは、原則、治療のための費用のみであり、予防や美容のための費用は対象外となる。誤解で多いのが「インフルエンザワクチン代は医療費控除の対象になる」というものだ。予防接種はあくまでも予防であり、治療とはならず、結果、医療費控除の対象からは外れる。

また、健康診断や人間ドックの費用も同じ理由で通常対象外となるのだが、もしこういった診察がきっかけでガンなどが発覚し、その後治療が開始した場合、その健康診断代や人間ドックの費用は医療費控除の対象となる。さらに、妊娠・出産や中絶の費用、そして介護費用も、医療費控除の対象だ。何が医療費控除になるのかについて個別具体的に知りたいときは、国税庁のWebサイト(※)や医療費控除に関する書籍を調べるか、税務署や専門家に確認するとよい。

国税庁のWebサイト「医療費控除の対象となる医療費」

なお、治療費のみならず、病院への往復の交通費も控除対象だ。ただし、対象となるのは公共交通機関を利用した場合であり、車で行った場合はタクシー代も駐車場代も控除対象にはならない。ただし、緊急の場合のタクシー代については控除対象となる。

3.保険金などが下りた場合

ケガや病気などで医療費が発生した場合、加入した保険から保険金などが支払われることがあるだろう。この場合、医療費控除の対象となるのは「そのケガや病気などのために支払った医療費-そのケガや病気が原因で支払われた保険金」となる。

4.今回の確定申告から領収書の添付が不要に

今回の確定申告から医療費控除については領収書の添付が不要となった。セルフメディケーション税制についても同様だ。ただし、提出が不要だからといって捨てていいわけではない。申請者の自宅で領収書を5年間保管する必要がある。税務署から領収書の提示や提出を求められた場合には応じなくてはならない。

なお、今回から2019年分(2020年3月15日申告期限分)については、従来通り、領収書を提出してもかまわない。

5.「医療費通知」が明細書代わりに

4.に加え、さらに、申請者が健康保険組合から受け取る「医療費のお知らせ」などといった「医療費通知」を申告書に添付した場合、本来作成しなくてはいけない「医療費の明細書」を省略することができる。ただし、次の事項が医療費通知に記載されていることが必要だ。

(1)被保険者
(2)療養を受けた年月
(3)療養を受けた者の氏名
(4)療養を受けた病院、診療所、薬局その他の者の名称
(5)被保険者が支払った医療費の額
(6)保険者の名称

実際には(5)が記載されていないことが多い。内容をよく確認し、使えるかどうかを判断していただきたい。

6.医療費控除の書き方

今回から、医療費控除の明細書の形式が変わった。医療機関の住所と医療を受けた人の続柄が省略された代わりに、「医療費の区分」欄で医療費の目的をチェックする必要がある。それ以外は基本的に従来と同じだ。

氏名は医療を受けた本人(申請者だけでなく配偶者や子や親など)のものを記入する。領収書を添付する場合には、ホッチキスなどでまとめた領収書の一番上に合計額を記入しておけば、明細書も合計額を記入するだけで問題ない。この場合、本人と妻、子どもなど複数人が同一医療機関で医療を受けているならば氏名欄は「山田太郎 他」で書けばよい。また、交通費についても、まとめた領収書の一番上に「往復交通費×日数=総額」を記入する。そして明細には、医療機関名欄に「同 交通費 往復交通費×日数」、金額欄に「総額」を記入する。

繰り返しになるが、医療費の全額が控除対象なのではなく、「支払った金額-10万円あるいは総所得金額等の5%のいずれか低い金額-保険金等で補填される金額」が控除対象となる。明細書の指示に従って最後まできちっと書いた後で申告書に記載するようにしていただきたい。

新税制だけでなく、様式や方法の改正があったため、今回は戸惑いの多い確定申告となるかもしれない。初めての人だけでなく慣れている人も、何度もチェックし、間違いがないかどうかを確認した上で申告書を提出していただきたい。

鈴木 まゆ子
税理士、ライター、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、仮想通貨に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、仮想通貨、お金に関する心理学についても独自に研究中。共著『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。