毎年、会社の定期健康診断を受診している人も多いのではないだろうか。会社で行われる健康診断は会社負担で無料なのだから、医療費控除は関係ないと思うだろうが、オプションでがん検診などを利用する人は対象となる場合がある。今回は、医療費控除の対象になるケースについて詳しく解説しよう。

木村正人
木村正人
ファイナンシャル・プランナー CFP® FP1-オフイス21代表 ライフプラン&マネーに関するコンサルタント 2003年10月1日創業。夢(プランの提案)の実現へ専門家パートナーと共に17年近く「相談・サポート」をしている。金融・財務などの法人のコンサルテイングも行う。日経セミナー・パナソニックなどでの講演の他。金融機関での研修の他、原稿(執筆・監修)など多数。FM「和歌山・湯浅マザーシップ・守口ハナコ・貝塚」 TV和歌山「経済マガジン」などにゲスト出演。

健康診断でも、医療費控除になることもある

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(写真=Rawpixel.com/Shutterstock.com)

実は健康診断や予防接種、自由診療(保険診療である公的医療保険制度の適用外の診療)などの医療費は原則医療費控除の対象にはならない。

しかしながら、健康診断のオプションとしてがん検診、脳ドック、胃カメラ、マンモグラフィー、骨密度、大腸内視鏡などの検査を自己負担分で済ませて病気が発覚し、治療を開始し始めた場合、そのオプション費用は医療費控除の対象となるのである。

・人間ドックで重大な疾病が発見された場合は対象になる

人間ドックは原則自由診療で、こうした健康診断では受診結果がポイントとなる。注意したいのは、重大な疾病が発見され直ちに治療が必要と医師に診断された場合だ。この場合、治療を受けるために要した医療費について例外的に医療費控除の対象となる。

そして治療を始めた場合、高額になることも多々ある。医療費控除に備えて、普段より薬局などの領収書やレシートなどをコツコツためておくと、節税の一助となるのでおすすめする。

・人間ドックの医療費控除は確定申告で行おう

人間ドックに限らず、医療費控除の申告はサラリーマンでも確定申告(通年2月16日~3月16日)が必要になる。サラリーマンの場合、2019年4月1日以降は源泉徴収票の添付が不要だ。2018年より領収書の添付も不要となっている。

注意したいのは、税務署で申告書を作成する場合、どちらも持参しなければならない点だ。マイナポータルを利用して、e-tax で電子申告も可能だが、「医療費通知書」のデータ送信などが必要だ。近い将来、申告方法の主流になるかも知れないので、一度挑戦して見るのも悪くはない。

・知っておきたいポイント

医療費控除は生命保険料控除などと同様の所得控除だ。年間の総所得金額にかかわらず、最高200万円の控除が可能となる。以下の計算式のとおり、総所得金額が200万円以下の人は、差し引くのは原則の否認額の10万円ではなく、総所得金額の5%となる点もポイントだ。

・医療費控除の計算式

〔年間の総所得金額区分〕
200万円以上の人:1年間に支払った医療費等-保険給付金等(※) -10万円

200万円以下の人:1年間に支払った医療費等-保険給付金等(※) -年間総所得金額×5%

(※)保険給付金以外にも健康保険より給付される高額療養費や出産育児一時金など。
ただし、控除対象の治療費を支払った年内に受け取った保険給付金等となる。

治療を続けた場合の保険金

・給付金はナント控除の敵?

定期健診でがんが発覚した場合でも、健康診断費用および治療費は医療費控除の対象となる。しかしながら、自分が加入している保険会社から給付金を受けとった場合、その給付金を医療費控除額から差し引く必要がある。

・給付金は保険対象の治療費が限度?

仮にがんの治療費より保険給付金のほうが大きかったケースを考えてみる。

がんの治療費と健康診断の費用が5万円で保険給付金を10万円受け取り、ほかにも風邪の治療や歯医者などへの医療費の支払いが10万円あった場合、保険給付金との差額5万円を計算上引かれることはない。

あくまでも給付金は、「がん治療のための保険給付金」なのである。治療費が5万円なら給付金として差し引く額もがんの治療費の5万円が限度でよいことになる。これはうれしいことだ。

健康診断はセルフメディケーション税制が有利

・使えるぞ!控除の特例は?

セルフメディケーション税制(医療費控除の特例)は、2017年1月1日から2021年12月31日までの間に、生計を一にする配偶者やその他の親族が医師により処方された医療用医薬品や一定のスイッチOTC医薬品(要指導医薬品等81成分1601品目)を購入した場合に対象となる。

その年中に支払った医薬品代の合計額が1万2千円を超えた場合、超える部分(限度額8万8千円)の金額について、その年分の総所得金額等から控除できるものだ。ただし、その年に「健康の保持増進および疾病の予防」を図るなど条件がある。

・なぜか?健康診断等も対象!

実は健康診断もセルフメディケーション税制の対象となる。具体的には、人間ドック、メタボ検診などの特定健康診査、予防接種、定期健康診断、健康診査、がん検診などだ。

個人事業者で定期健康診断を受けていない人がセルフメディケーション税制を利用する場合、一番安く利用できるのがインフルエンザの予防接種かもしれない。

・医療費控除との選択をせよ

ここでの注意したいのは、セルフメディケーションの税制適用を受ける場合、通常の医療費控除の適用を受けることができないことだ。つまり、どちらかを選択する必要があるのだ。領収書の添付や提示の代わりに医療費明細書や医療費通知書の添付ができるようにはなったが、領収書の紛失などもあり医療費明細書を作るのも大変な手間がかかる。そこで控除申請者の利便性を考慮して登場したのがこの制度だ。

医療費控除のよくある疑問?

健康診断とは少し離れるが、医療費控除で疑問が多いものを順次解説しよう。

・医療費の白黒教えて?

〔医療費控除できる!できない?〕
できないのは、いわゆる自由診療とみなされるケースだ。健康のためのマッサージ費用、美容目的の歯列矯正費用、顔やスタイルなどの美化のための美容整形費用などが挙げられる。このほか、健康増進や疲労回復のための医療薬品の購入費用、眼鏡やコンタクトレンズ、健康管理のための血圧計の購入費用なども対象外となる。

〔タクシー代はできるでしょ?〕
交通費はすべて医療費控除できると思っているかもしれない。特にタクシー代は全額控除対象だと思われがちだが、急病や突然の陣痛などのやむを得ない場合に限り、医療費控除の対象となる。普段の通院などで利用したタクシー代は、控除対象にならないので気をつけよう。ちなみにガソリン代や駐車場代も認められない。

〔介護用具のレンタルぐらいは?〕
次に疑問が多いのは介護用具だ。事業者ごとに単価が異なるので、介護用具のレンタル料金は医療費控除の対象とはならない。

〔インプラント治療費は高いから期待大?〕
保険がきかないためか、歯科のインプラントに関する疑問も多い。インプラントは自費でも医療費控除の対象となる。インプラント治療は、あくまで保険治療であって、美容目的(自由診療)ではないからである。

〔歯科ローンは期待薄?〕
ローン会社などが高額な治療費の建て替えをした年は医療費控除の対象になる。歯科医の領収書の代わりに歯科ローンの契約書や信販会社へのクレジット払いの領収書があればよい。

・申告書に添付するもの教えて

〔明細書と通知書は何でいるの?〕
前述(人間ドックの項目)で領収書はコツコツためようとおすすめしたが、確定申告時に添付する医療費控除の明細書を作成する際に役立つからだ。毎年1月中頃に各健保より送付される医療費通知書「医療費のお知らせ」で代用できるので、通知書に記載以外のものについて明細書を作成するとよい。なお医療費通知書(領収書の保存不要)に記載以外の医療費の領収書等は、確定申告後5年間は自宅で保管する必要がある。

〔何で明細書が重要なの?〕
領収書の添付が不要となったからである。代わりに、明細書の作成が義務化された。代表格は、自身の入通院の際の公共交通機関利用代やタクシー代などの交通費だ。また治療に必要な医薬品の購入費用などもある。

医療費控除はあくまで自己申告

今回は、健康診断や人間ドックでも医療費控除が適用されるケースについて解説したが、医療費控除もしくはその特例を利用し、毎年のように申告する人もいるだろう。

ただし、医療費控除はあくまでも自己申告である。昨年と同じように医療費通知書(領収書保管不要、これは完結)、医療費明細書(領収書添付不要、5年保管)を提出しても、何も言われなかったと考える人もいるだろう。

法律を順守し、良心のもとできちんと申告するほうが自分の身を守ることになる。その点は忘れずに気をつけておこう。