2018年の税制改正により配偶者控除・配偶者特別控除が複雑になった。今回は、年末調整や確定申告で間違えないようにするためのポイントを解説する。
中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。
配偶者控除に関するQ&A
最初に配偶者控除に関する3つの質問に答える。
配偶者控除・配偶者特別控除って何?
この2つの制度は、納税者本人の配偶者が所定の要件に該当すると、納税者の所得税計算のベースとなる所得額から一定額を差し引けるというものだ。必要な要件には納税者と同一生計であることや年間の合計所得額が一定額以下であること、法律婚の配偶者であることなどがある。
この2つの制度は、納税者本人の配偶者が所定の要件に該当すると、納税者の所得税計算のベースとなる所得額から一定額を差し引けるというものだ。必要な要件には納税者と同一生計であることや年間の合計所得額が一定額以下であること、法律婚の配偶者であることなどがある。
配偶者控除・配偶者特別控除は何が変わった?
ここ数年での変更点は2つだ。第一に、配偶者の年間の合計所得金額要件が10万円ずつ上がった。配偶者控除は「38万円以下」から「48万円以下」に、配偶者特別控除は「38万円超123万円以下」が「48万円超133万円以下」に変更された。第二に、配偶者控除の控除額が一律38万円ではなくなり、要件に応じて変動するようになった。
ここ数年での変更点は2つだ。第一に、配偶者の年間の合計所得金額要件が10万円ずつ上がった。配偶者控除は「38万円以下」から「48万円以下」に、配偶者特別控除は「38万円超123万円以下」が「48万円超133万円以下」に変更された。第二に、配偶者控除の控除額が一律38万円ではなくなり、要件に応じて変動するようになった。
制度の変更で妻や夫は何を注意すべき?
1つ目は配偶者控除の控除額が一律38万円でなくなった点だ。配偶者特別控除と同様、控除額が変動することになった。2つ目は配偶者控除と配偶者特別控除、それぞれの控除額を決める要件が異なる点だ。両者は控除額が変動する点で似ている。要件を混同しやすいので気を付けたい。
1つ目は配偶者控除の控除額が一律38万円でなくなった点だ。配偶者特別控除と同様、控除額が変動することになった。2つ目は配偶者控除と配偶者特別控除、それぞれの控除額を決める要件が異なる点だ。両者は控除額が変動する点で似ている。要件を混同しやすいので気を付けたい。
配偶者の控除制度が2020年分からさらに変わった
配偶者が所定の要件に該当すると、本人の所得税計算の基礎となる所得額から一定額が差し引かれる。これが配偶者に関する控除制度だ。この制度には現在「配偶者控除」、「配偶者特別控除」の2つがある。
2017年度税制改正により、2018年分から配偶者控除は納税者本人の合計所得額が1000万円以下でないと適用を受けられなくなった。そして2018年の税制改正で次のような変更が配偶者控除・配偶者特別控除の両方に生じた。
●配偶者控除
- 配偶者控除の合計所得金額の要件が「38万円以下」から「48万円以下」になった
- 配偶者控除の控除額が「本人の合計所得金額」、「配偶者の年齢」で変動する
●配偶者特別控除
- 配偶者控除の合計所得金額の要件が「38万円超123万円以下」から「48万円超133万円以下」になった
- 配偶者特別控除の控除額が「本人の合計所得金額」、「配偶者の合計所得金額」で変動する
一番の特徴は「配偶者控除はいまや『一律38万円控除』ではなくなった」という点だ。配偶者控除も配偶者特別控除と同様、控除額が変動するようになった。さらに、配偶者控除は納税者本人の合計所得額と配偶者の年齢が控除額に影響するので非常にややこしい。
「配偶者控除も配偶者特別控除も一から制度を覚え直す」くらいのスタンスでいたほうがいいのでは、と思うくらいだ。
2020年分からの配偶者控除の要件を確認しよう
ではここで、今年からの配偶者控除の制度全体を確認していこう。最初は控除を受けるための要件だ。以下の5つの要件すべてに該当していないと、配偶者控除は受けられない。
- 本人の合計所得金額が1000万円以下であること
- 配偶者の合計所得金額が48万円以下であること
- 本人と配偶者が同一生計であること
- 本人と配偶者が法律婚をしていること
- 配偶者が青色事業専従者や白色事業専従者として給料をもらっていないこと
配偶者控除は配偶者が何歳であっても受けられる。ただ、配偶者が70歳以上か70歳未満かで控除額が変わる。
2020年分の配偶者控除の控除額
2020年分の配偶者控除の控除額は、配偶者の年末時点の年齢と納税者自身の合計所得の2つで決まる。具体的には次のようになる。
納税者の合計所得額 | 900万円以下 | 900万円超950万円以下 | 950万円超1000万円以下 |
配偶者が70歳未満 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
配偶者が70歳以上 | 48万円 | 32万円 | 16万円 |
2020年分以降の配偶者特別控除の条件を確認
次に、配偶者特別控除の制度全体を見ていこう。まずは配偶者特別控除の要件だ。配偶者控除とよく似ている制度だが、配偶者特別控除は配偶者控除のオマケのような存在だ。「配偶者の合計所得額が48万円を超えても控除できる」というのが大きな特徴である。
- 本人の合計所得金額が1000万円以下であること
- 配偶者の合計所得金額が48万円超133万円以下であること
- 本人と配偶者が同一生計であること
- 本人と配偶者が法律婚をしていること
- 配偶者が青色事業専従者や白色事業専従者として給料をもらっていないこと
- 配偶者側で配偶者特別控除を受けていないこと
2と6以外は配偶者控除と同じだ。6については、夫婦双方が合計所得額133万円以下なら起こりうるケースに関するものだ。この内容は後ほど説明する。
2020年分の配偶者特別控除の控除額
配偶者特別控除の控除額は納税者の合計所得額と配偶者の合計所得額で決まる。具体的には次の表のようになる。なお、配偶者控除と違い、配偶者の年齢は控除額に関係しない。
納税者の合計所得額 | ||||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 |
950万円超 1000万円以下 |
||
配偶者の 合計所得額 |
48万円超 95万円以下 |
38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超 100万円以下 |
36万円 | 24万円 | 12万円 | |
100万円超 105万円以下 |
31万円 | 21万円 | 11万円 | |
105万円超 110万円以下 |
26万円 | 18万円 | 9万円 | |
110万円超 115万円以下 |
21万円 | 14万円 | 7万円 | |
115万円超 120万円以下 |
16万円 | 11万円 | 6万円 | |
120万円超 125万円以下 |
11万円 | 8万円 | 4万円 | |
125万円超 130万円以下 |
6万円 | 4万円 | 2万円 | |
130万円超 133万円以下 |
3万円 | 2万円 | 1万円 |
アルバイト・パートの配偶者控除の条件が変わらず「103万円以下」なのはなぜ?
配偶者控除の所得要件は昨年から10万円アップして「48万円以下」となった。ただし、妻や夫がアルバイト・パートをしているだけなら、これまでどおり「年収103万円以下」で判定してよい。
なぜこれでいいかというと、ほかの控除に税制改正が入ったからだ。アルバイト・パートの最低所得ラインでは、基礎控除額が38万円から48万円に増えた一方、給与所得控除が65万円から55万円に減った。この「プラス10万円」と「マイナス10万円」のおかげで「103万円以下」という判断基準は変わらないのである。
●配偶者控除の対象になるのは「納税義務がない人」
わかりにくいので「配偶者控除の対象になる配偶者はどういう人か」を考えてみよう。配偶者控除の対象になる配偶者は納税義務のない人だ。課税対象となる所得額が0円であれば納税義務は生じない。課税対象となる所得額は「合計所得額-所得控除の合計額」で計算する。
アルバイト・パートの収入は「給与所得」だ。給与所得は「給与の年収額-給与所得控除」で計算する。また、たいていの配偶者の所得控除は基礎控除だけだ。つまり、妻や夫は「給与収入-給与所得控除-基礎控除≦0円」であれば納税義務は生じない。そういった妻や夫を扶養している人は配偶者控除を受けられる。
税制改正により、課税対象となる所得額を計算する際の要素の数字は変わったが、結果は同じだ。配偶者がアルバイト・パートしかしていないならこれまでと同じように「103万円以下」を配偶者控除の目安としていい。
●配偶者特別控除も変わらず「給与収入103万円超201万円以下」
なお、配偶者特別控除もアルバイト・パート収入だけならこれまでどおりと判断基準は変わらず「給与収入103万円超201万円以下」だ。理由は配偶者控除と同じで「給与年収ベースで考えるとプラスマイナスゼロで影響がないから」である。
なお、配偶者特別控除は配偶者本人に納税義務が生じるにもかかわらず扶養している本人は控除が受けられる。不思議に思うかもしれないが、配偶者特別控除は「103万円の壁」を超えたとたん、世帯の税負担が重くなる現象を解消するために作られた制度だ。だから「特別に」控除できることとなっている。
ほかの控除制度と混同しないように注意しよう
配偶者はほかの控除制度のキーワードにもなっている。その分、要件を間違えやすい。特に次の2つは注意しよう。
●障害者控除
配偶者が障害者だと、扶養している本人は障害者控除が受けられる。ただし、この対象となる配偶者は「本人と同一生計」、「年間の合計所得額が48万円以下」であることが必要だ。また、法律婚の妻か夫に限られる。
「配偶者控除の対象になる妻か夫が障害者に該当するなら障害者控除も受けられる」と考えるとよい。
●所得金額調整控除
所得金額調整控除は給与年収850万円を超える人が何らかの事情を抱えていると、一定額が給与所得から差し引かれるという制度だ。この「何らかの事情」には「同一生計の配偶者が特別障害者であること」という事実も含まれる。
注意したいのが「配偶者が特別障害者である」、「配偶者と同一生計である」以外は何も求められていないという点だ。合計所得金額は関係ないので注意したい。
その他の注意点
配偶者控除・配偶者特別控除は一般の我々にはわかりにくい。特に用語や要件には注意したい。
●同一生計の意味に注意
「同一生計」、「生計を一にする」は、同居していることと誤解しやすい。税法では基本的に「納税者本人と同じ財布で生活していること」を意味する。なので、別居でも納税者からの仕送りで生活しているなら同一生計だ。
ただし、配偶者が留学等で海外に住んでいるなら、送金証明と親族関係証明に関する書類の提出が必要となる。
●事実婚は対象外
最近は事実婚の夫婦も増えてきたが、税法では控除できる配偶者を法律婚に限定している。いくら同居期間が長くても、また子どもがいても事実婚の夫や妻では控除できない。
●控除は夫婦同時に適用できない
夫婦ともに合計所得金額48万円超133万円以下というケースがある。この場合は、夫婦どちらかしか控除できない。夫婦がお互いを控除対象配偶者にし、2人同時に一定額を配偶者特別控除として差し引くことはできない。
●青色専従者・白色専従者で給料をもらっているなら対象外
配偶者が個人事業主である納税者の青色事業や白色事業の専従者になっているなら注意が必要だ。配偶者が給料をもらっているなら配偶者控除・配偶者特別控除はできない。
配偶者がもらう給料は納税者本人の事業所得計算上の必要経費となる。ここで配偶者控除や配偶者特別控除も認めてしまうと二重控除になってしまう。課税の公平からこれは認められず、一方しか適用できないこととされている。
もし年末調整後に所得額を間違えたら
年末調整で配偶者控除・配偶者特別控除の申告内容を間違えたらすみやかに会社に連絡しよう。年内最後の給与に間に合うなら、年末調整のやり直しが可能かもしれない。ただ、会社によっては「自分で確定申告するように」と伝えるところもある。そのときは翌年3月15日までの確定申告で訂正しよう。