年末調整では社会保険や生命保険など、各種保険料が所得控除として所得税や住民税より差し引かれることとなるが、国民年金については申告しているだろうか。今回まとめた国民年金保険料の申告は、厚生年金に加入していないアルバイトやパートの人だけに関係がある内容ではない。本記事を参考に、ぜひより多くの節税を実現させていただきたい。

目次

  1. 国民年金保険控除とは
  2. 控除対象の期間
  3. 国民年金を前納した場合
  4. 年末の国民年金控除に必要な書類
  5. 年末調整は再調整を依頼することができる

国民年金保険控除とは

正確には国民年金保険料控除という項目はなく、国民年金保険料の控除は所得控除のうちの社会保険料控除に含まれる。社会保険料控除では健康保険や国民年金、厚生年金といった公的な保険料について控除が適用され、その全額が対象となるため単純に多ければ多いほど控除額は増えることになる。

冒頭で厚生年金加入者も無関係ではないとしたのは、まず社会保険料控除を始め各保険料控除の適用要件が「納税者が加入している保険料」ではなく、「納税者が支払っている保険料」であるからだ。例えばあなたに配偶者や扶養親族がいて、彼らが加入している保険料を支払っていた場合、これもやはり保険料控除の対象となるのである。

加えて国民年金保険料には前納や追納などの支払い方法が認められており、過去、あるいは将来の保険期間に対して支払った保険料も同様に控除の対象となる。こちらも、保険料控除の適用要件が「その年に支払った保険料」となっているためである。

控除対象の期間

年末調整における要件等で言う「その年」とは、年末調整をしようとする年の1月1日から12月31日までであり、この期間中に実際に支払った国民年金保険料がすべて控除の対象となる。逆に、たとえ期間中に国民年金保険へ加入していたとしても、免除期間などにより保険料を支払っていなかった場合は控除が適用されない。保険期間に関わらず、保険料を支払ったタイミングで判断するのである。

国民年金を前納した場合

国民年金保険における前納とは、一般的に1年前納と2年前納のいずれかを指す。1年前納はいわゆる従来通りの支払い方法のひとつであり、年中に届いた納付書分の保険料を、翌年のものも含めて支払うといった形式だ。この1年前納では別途手続きをする必要もなく、支払った保険料をそのまま申告すれば問題はない。

一方2年前納制度は平成26年4月より開始された前納方法で、事前に手続きすることにより2年分の国民年金保険料を前納することが認められている。手続きは、2月末日までに「国民年金保険料口座振替納付(変更)申出書兼国民年金保険料口座振替依頼書」に必要事項を記入したのち、該当書類を銀行窓口や年金事務所へ提出すれば良い。

2年前納によるメリットのひとつは保険料の割引で、例えば平成28年度4月においては15690円の割引となっている。また平成29年からはクレジットカードによる納付にも対応するなど、利便性は年々高まっていると言えるだろう。そしてもうひとつのメリットは、年末調整時に控除の適用を受ける範囲を選択することができるという点だ。

2年前納制度を利用して納付した国民年金保険料は、「納めた年に全額控除する方法」と、「各年分の保険料に相当する額を各年において控除する方法」から選択ができる。いずれにせよ最終的に控除される額に変わりはないのだが、その年における控除額が不足、あるいは余分であると判断できる場合に適宜充当することができるのだ。

年末の国民年金控除に必要な書類

各月ごとに支払った場合であれ、前納した場合であれ、国民年金保険料控除には社会保険料控除証明書が必要になる。これは2年前納制度利用の際、各年に充当する方法を選んだとしても同様である。社会保険料控除証明書は、そのほか保険料控除証明書と同じく保険を取り扱う機関より発行、送付がなされる。国民年金に関しては、日本年金機構より送られてくるはずだ。もしもこれを紛失してしまった場合は、年末調整の前に再発行を依頼すると良いだろう。

保険料控除証明書を、必要事項を記入した「保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」に添付して提出すれば、保険料控除は適用される。またこれとは別に、「扶養控除等(異動)申告書」も提出する必要がある。こちらは配偶者控除や扶養者控除といった人的控除を受けるための申告書だが、該当する控除がなくとも年末調整を受けるために必須の書類であるため忘れず提出しよう。

年末調整は再調整を依頼することができる

もし年末調整後に申告していない保険料に気がついた場合や、あるいは年末調整時に保険料控除証明書の発行・再発行が間に合わなかった場合など、1月31日までの期間内であれば勤務先へ再調整(再年調)を依頼することが可能だ。再調整は相応に手間がかかるため安易に依頼すべきではないが、支払った控除対象保険料次第では見過ごすわけにもいかないだろう。ひとつの手段として、覚えておいて損はないはずだ。