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生命保険とは

生命保険は、人の生命に掛ける保険だ。広義には損害保険のひとつであるが、保障の対象が人の生命になると、期間が長くなって金額も大きくなるので特別に生命保険と呼ばれている。

生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、日本の生命保険加入率は男性で80.9%、女性で81.9%となっており、いずれも8割を超える高い加入率となっている。最近では少々事情が変わってきたものの、日本では「社会人になったら生命保険に入る」というのが半ば通過儀礼のようになっていた時期が長く、その風土が加入率の高さに拍車を掛けたのかもしれない。

一方で、日本より生命保険の仕組みが自由で市場も大きなアメリカは、78%と日本より若干低い数値になっている(同センター「生命保険に関する全国実態調査」より)。保険先進国のイメージが強いアメリカだが、自由度も高いため加入しないという選択肢を支持する人が多いことも浮き彫りになっているのだ。

なお、一般的に生命保険と呼ばれているものは定期保険、養老保険、終身保険の3種類に分類されている。商品名が無数にあるのでもっと多いと思われがちだが、全ての生命保険はこの3種類のいずれか、またはこれらの保険を組み合わせたものなのだ。


生命保険って必要?そのメリットとデメリット

保険のメリットとして挙げられる「入っておけば安心」というのは、あくまでイメージのようなもので、コストとメリットが見合っているのかを検討する必要がある。もっと踏み込んで考えてみた保険のメリットとは、最も手っ取り早く手に入る生活保障であるという点だ。

一家の大黒柱が死亡したり働けなくなるなどのリスクが現実になったとしても、その後の生活をまかなうだけの蓄えがありさえすれば、経済的な不安要素はない。しかし、それだけの蓄えをすぐに用意することが難しいのであれば、すぐに得られる保障としての生命保険が最も有効な手段である。この「すぐ手に入る」という点こそが最大のメリットと言っても良いだろう。

他にも、日本の保険によくある貯蓄性が老後資金の足しになることや、終身保険を活用した相続税対策なども付帯的なメリットとして考えられる。

生命保険のデメリットは、保険料の高さだ。すぐに保障が手に入るということは、保険会社にそれだけのリスクを任せていることでもあるため、相応のコストが必要になってくる。保険料の中には付加手数料という保険会社の取り分が含まれており、保険商品によってはその比率が5割に達するものもある。この場合は、保険料の半分を保険会社に貢ぐことこそが最大のデメリットであり、保険不要論の根拠にもなっているのだ。


知らなきゃ損する生命保険料控除

生命保険の保険料には控除という税制上の優遇措置がある。サラリーマンなど給与所得者であっても直接的な節税と資産形成という大きなメリットがあるので、制度をしっかりと把握して活用していこう。


生命保険料控除概要と旧制度から新制度への変更点

生命保険料控除とは、1年間支払ってきた保険料が所得額(つまり課税対象額)から差し引かれるというもの。年収500万円の人が年間40万円保険料を支払っていたら、その人の年収は460万円として扱われるという具合だ。

この制度自体はとても長く続いているが、平成24年度に制度の内容が一部変更されている。時代の流れに合わせた変更とも言えるものなので、うまく活用すればさらに大きな節税効果を得ることができる。

簡単に言うと、旧制度では控除の対象が一般生命保険料と個人年金保険料だったが、新制度ではそこに介護医療保険料という項目が加わった。つまり、これまでは生命保険と個人年金だけだったところに、さらに医療保険と介護保険の保険料が控除対象として加えられたのだ。

ただし、控除額の上限が所得税で5万円から4万円、住民税で3万5000円から2万8000円に減額されている。これだけを見ると事実上の増税ではないかと思われるかも知れないが、介護医療保険料控除が適用される保険契約があると上限が10万円から12万円になるため、トータルでは節税効果がアップしている計算になる。

平成23年12月31日までの契約分は旧制度が適用されているが、保険によっては更新タイプのものもあり、この場合は新たに保険を契約し直す形になるため、平成24年以降の更新から新制度が適用される。

最近は保障内容が複雑に組み合わせられた保険商品が多くなっており、主契約に特約の形で医療保障や介護保障がついている場合があるが、こういった場合はそれぞれの特約に支払っている費用を積算して控除する。主契約の名称が生命保険であっても、控除金額は補償内容で判定されて積算される。

>> 生命保険控除の改正で押さえておくべきポイントとは?


生命保険料控除の計算方法

新制度による生命保険料控除を、年収が500万円の人を実例に計算してみよう。年収500万円の所得税率が20%、毎月生命保険と個人年金、医療保障にそれぞれ1万円ずつ合計3万円を支払っていると仮定する。保険料負担が3万円前後の人はとても多いので、このモデルが参考になる方は多いと考える。

毎月それぞれ1万円の保険料を支払い、合計額が3万円だとすると、年間の保険料支払いは36万円。上限が「8万円超」となっている所に36万円なので、控除金額上限の12万円が適用される。年収500万円から控除分の12万円を差し引けば、控除後の年収が488万円になる。500万円に対する20%は100万円、一方488万円に対する20%だと97万6000円になるので、この差額の2万4000円が、保険料控除によって得られた節税分だ。

現在生命保険に加入している人の多くが、毎月の保険料支払いが1万円以上であると思う。仮にそれより低い金額だったとしても、個人年金や医療保障を合わせたら1万円を優に超える金額になる人がほとんどだ。

つまり、ほとんどの人が年間の保険料支払いが8万円を超えている計算になるので、生命保険、個人年金、医療・介護保障の契約があれば控除金額は12万円と考えて良いだろう。


生命保険料控除で資産形成

生命保険控除の活用法は、単に節税だけではない。節税になって浮いたお金をそのまま使ってしまっていたのでは、せっかくの効果も形にならないので、私が提案したいのが生命保険控除を活用した資産形成だ。

まずは、単純に毎年浮いた2万4000円をそのまま貯金していく方法。10年で24万円、20年で48万円の資産となる。ここに金利がつくので、実際にはこれよりも大きな金額になるだろう。単に控除によって浮いたお金を貯金しているだけだが、ここには重要なロジックがある。

本来は36万円を負担するべきであった保険料が、保険料控除によって2万4000円が戻ってきた。これは36万円の投資に対して2万4000円、利率にすると年利6.6%がリターンとなっている計算になる。これだけの利率をマークする金融商品はなかなかないので、生命保険控除は極めて投資効率の良い資産形成だと考えることができるのだ。机上での計算に過ぎないかも知れないが、年利6.6%で運用できていることが分かれば、生命保険控除にまたひとつメリットを見いだせるのではないだろうか。

また、生命保険には課税の繰り延べという大きなメリットがあります。一般的に、定期預金など年単位や月単位で利息が発生する金融商品の場合、その利息に対して毎年課税されていく。だが、生命保険には課税の繰り延べが適用されるため、解約や満期などの返戻金支払い時の1回のみ、一時所得として課税される仕組みになっている。

控除と課税の繰り延べによる節税効果が、いかに大きな資産形成効果を持っているかお分かりいただけたのではないだろうか。


確定申告時に必要なもの

生命保険料控除を受けるための手続について解説していこう。サラリーマンなど給与所得者の方は勤め先で年末調整があると思うので、その時に保険会社から届いた「保険料控除証明書」を提出すればOKだ。

自営業の方が確定申告をする際は、確定申告書A第一表・第二表に必要事項を記入して税務署に提出する。これは、「生命保険料控除用」と言えばすぐに用紙を入手できる。税理士などに税務を依頼している場合は、このあたりの手続きに精通しているのでスムーズに申告できるだろう。給与所得者の場合はすでに天引きで納税をしているので、控除分は後から還付という形で戻ってくるし、自営業者の場合は翌年の税額が控除分だけ少なくなるという処理になるのだ。


相続対策にもなる生命保険

生命保険は相続対策の有効な手段としても知られている。遺産を相続させたい相手を受取人にして保険に加入すれば、生前に払い込んだ保険料を原資とした実質上の遺産相続が可能になる。通常の遺産相続であれば法定相続人のみが対象となり、また遺留分との兼ね合いなど法律で定められた範囲内での遺産相続調整となる。しかし、生命保険の保険金は受取人固有の財産と見なされ、原則として遺産分割協議の対象外になる。つまり、遺産相続の分配比率などを比較的自由に調整可能なのだ。

また、故人が生前に作った借金がある場合は相続放棄によって借金を引き継ぐことを回避できるが、生命保険の保険金は受取人固有の財産であるため相続放棄をした上での受け取りが可能だ。

さらに、相続額によっては相続税対策の必要も生じるが、生命保険には非課税金額が設定されているため、現金などの資産で相続するよりも評価額が減額され、相続税の節税効果を発揮する。

>> 生命保険に関する相続、生命保険が生前対策に使われる理由


世帯別の保険選びの考え方

保険とは、単なるリスク管理のための金融商品ではなく節税や資産形成にもつながるものであると述べてきた。こうした視点を持った上で、生命保険の選び方について考えてみたいと思う。

保険は加入する人および世帯状況によって最適な商品がまるで異なる。例えば独身者の場合は、万が一亡くなったとしても遺された人の生活を心配する必要がないので死亡保障は葬儀代程度、後はガン保障も含めた医療保険などがあればリスク管理を自己完結できる。一方、結婚をすると配偶者という家族ができて、子供が生まれる可能性も高くなる。この場合は遺された家族の生活保障を考える必要があるので、死亡保障はまとまった規模のものを設定するのが普通だ。さらに子供を持った場合は子供の教育費に対する手当てが必要になるので、死亡保障には子供の教育費を上乗せした金額、さらに子供の進学に伴って必要になる学資保険の必要性も生じてくる。

人生のさらに先にも目を向けてみよう。子供が独立して生活保障の必要がなくなったら、再び死亡保障は本人の葬儀代程度で良いということになり、今度は年齢的にも医療保障の必要性が大きくなる。しかも年齢を重ねるごとに健康へのリスクは大きくなるので、死亡保障を低く抑える代わりに医療保障は終身タイプのものが好ましくなっていく。

このように、保険は加入者の状況や世帯状況により最適な保障の組み合わせが大きく変わる。昨今は保険の見直しがビジネスになるほど普及しているが、人生の転機が訪れたら保障内容の見直しを検討する価値はあるだろう。


掛け捨てvs貯蓄型

掛け捨ての保険が良いのか、それとも貯蓄型が良いのか。これは保険の永遠のテーマとして語られるポイントだろう。ただ、これは優劣の比較ではなく、保険に加入する人の状況や要望によってどちらが適しているかという問題になってくるのだ。

まず、掛け捨て型については希望する期間の保障のみを購入するため、保険料が格安だ。ただし、保険期間が終了するとその名の通り掛け捨てとなり、何も残らない。一方、終身保険は亡くなるまで保障が続く上、生前に解約をすれば解約返戻金が残る。保障と同額の貯蓄をして保険期間終了時に満期金を受け取れる養老保険も、同じく掛け捨てではなく貯蓄型の保険だ。

毎月保険料を支払ってきたのに、保険期間が終了したら何も残らないことに抵抗を感じる日本人の国民性もあり、保障と貯蓄を組み合わせた保険が長らく人気だった。しかし最近では、保険に対する意識も変わってきており、掛け捨てならではのメリットに注目して保険を選ぶ人も多くなっている。

相続対策などで一生涯の保障が必要な人は定期保険(掛け捨て型)という選択肢は考えられないので貯蓄型が適しているし、定年退職など一定期間だけのリスクをカバーできれば良いという人にとっては、むしろ掛け捨てのほうが好都合なのだ。また、資産管理を自分で行いたいという人にとっても、保険に対して保障のみを求めれば良いので、掛け捨てのほうが適していると言える。


忘れてはいけない日本の手厚い社会保障

ここまで保険料の控除や資産形成、相続対策など、生命保険を活用するノウハウを解説してきた。ここまで解説しておいて何だが、生命保険とはあくまでも任意のもので、加入したいと思う人だけが入るもの。日本では8割もの人が何らかの保険に加入しているのだが、残り2割の人は依然として非加入という事実がある。

この人たちがなぜ保険に加入していないのかは聞いてみないと分からないが、日本の手厚い社会保障制度とは決して無関係ではないだろう。生命保険に加入していない=セーフティネットがない、というわけではないのだ。

病気や怪我をした時の健康保険では、医療費の3割を負担するだけで済む。国民皆保険制度が普及しているため、残りの7割を保険が負担してくれるのだ。この制度を利用しても、通院回数が多くなったり費用の掛かる医療を受けると医療費が高額になっていくが、健康保険には自己負担額の上限を定める制度があり、高額医療を受けたとしても一定金額以上の自己負担はない。

他にも傷病手当金や遺族年金制度など、日本は世界的に見ても社会保障がとても充実した国なのだ。生命保険を検討する際は、こうした社会保障でどこまでまかなえるかを考慮した上で、それでも足りない分をカバーするという考え方が最もスマートだと言える。

そして加入後も保険料控除などをうまく活用して、保険とうまく付き合っていただきたいと思う。 (ZUU online 編集部)

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