所得控除 の中には、生命保険料を支払うことによって最大12万円の控除が受けられる「生命保険料控除」がある。

控除を受けるにあたって、申告の際にはどのような書類を書けばよいのだろうか。この記事では生命保険控除を行うための書類の書き方について解説する。

中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

生命保険料の控除申告のQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


生命保険料控除とはどのようなもの?

その年のうちに生命保険料の支払いを行った場合、決まった計算式に応じた金額が控除されるものである。

その年のうちに生命保険料の支払いを行った場合、決まった計算式に応じた金額が控除されるものである。


Q


生命保険料控除はいくら行われるのか?

生命保険料控除は最大12万円だ。控除は生命保険の種類(3種類ある)ごとに行われ、各種類4万円または5万円の控除が行われる。

生命保険料控除は最大12万円だ。控除は生命保険の種類(3種類ある)ごとに行われ、各種類4万円または5万円の控除が行われる。


Q


生命保険料控除はどうやって行うの?

生命保険控除は年末調整や確定申告時に行う。

生命保険控除は年末調整や確定申告時に行う。

生命保険料控除の全体像

・生命保険料控除について

生命保険料控除は生命保険料として支払った金銭に対して行われる。生命保険料を3種類に分類して種類ごとに控除額を計算し、その合計額で生命保険料控除額を求める。

・生命保険は5つに分けられ3つに集約される

まず、保険をいつ契約したかによって新制度と旧制度に分ける。

契約締結が2011年12月31日までの場合は旧制度、2012年1月1日以降の場合は新制度となり、控除額や保証の範囲などが違う。

さらに、保険の種類によって一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料に分ける。なお、介護医療保険料は新制度のみなので、5つに分類される。

生命保険料控除の計算は、まず5つの保険料について各々の控除額を計算する。次に同じ種類の新制度と旧制度とで控除額を足し、種類ごとの控除額を計算する。最後に全種類の控除額を足して合計額を求める。

・控除額の最大は12万円、種類ごとでは4〜5万円

種類ごとの控除額は、旧制度だけの場合は最大で5万円、新制度のみまたは新制度と旧制度を合わせた場合は最大で4万円である。

単純に合計した場合、最大13万円の控除となるが、制度上は12万円までで、超える分は切り捨てられる。

情報収集

書類を作成するにあたり、必要な証明書の見方、必要な情報の取得方法について解説する。

・生命保険控除の書類は書き間違いが多い

生命保険控除に関する書類は、誤りが多い。原因として挙げられるのが、記載すべき事項を記載していない、新制度か旧制度か適当に選択している、転記すべき数字が誤っている、控除額の計算を誤っている、などである。

このような間違いを防ぐために、どのように保険料控除証明書から情報を抜き出せばよいのだろうか。

・保険料控除証明書から何を探し出せばよいのか

書類の作成にあたっては保険料控除証明書が必要となる。記載する際、抜き出す情報は以下のとおりだ。

  1. 生命保険を契約した人の氏名
     あて名の形式で書かれているケースもある。
  2. 保険の新制度、旧制度
  3. 1枚の保険料支払証明書では、新制度、旧制度のどちらか片方しか書かれていない。
     これを間違えると保険料控除の計算自体を間違えてしまうので、どこかに書かれている保険の新制度、旧制度を見つけよう。
  4. 保険料の金額
     保険料の金額は、保険会社によってはすでに支払った金額と12月末までに支払う予定の金額の2種類が書かれていることがある。この場合、書くべき金額は12月までに支払う予定の金額である。なお、配当金などで戻ってきた金額がある場合、その金額を控除した金額を記入する。
  5. 保険料の種類
     一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料のいずれかである。
     この三者は区別をつけ、各々で集計する必要がある。
  6. 保険会社の名前
  7. 保険などの種類(確定申告時)  保険の種類を記載する。例として「定期生命保険」「がん保険」などがある。

・関係のない項目に注意!

保険料支払証明書の中には、全く関係のない項目が記載されているケースもある。

代表的な例をいくつか挙げよう。まず、これまで支払った保険料の金額がある。これは単に実際に支払った金額を表示しているにすぎず、年末調整時に記載すべき数字ではない。適用対象外となる保険料とともに記載されているため、書類に記入してしまうケースもある。

年末調整の書類の書き方(一般生命保険)

生命保険料控除を受けるための方法の一つが年末調整だ。ここからは年末調整における書類の書き方について説明する。

まず、一般生命保険料の記載方法について説明する。

・記載項目

一般生命保険料の記載方法

一般の生命保険料の記載項目は以上のようになっており、内容は以下のとおりだ。

  1. 保険会社等の名称
     保険金を支払った会社の名称を記入する。
  2. 保険などの種類
     「定期生命保険」など契約した保険の種類を記入する。
  3. 保険期間又は年金支払期間
     保険期間を記入する。
  4. 保険等の契約者の氏名
     保険の契約者名を記入する。
  5. 保険金の受取人 名を記入する。
  6. 新・旧の区分
     契約が新制度か旧制度かについて当てはまるほうに丸をつける。
  7. あなたが本年中に支払った保険料等の金額
     実際に支払った保険金の額を記載する。なお、配当金があった場合はそれを控除する。

・金額の集計の仕方

すべての一般生命保険料について記載したら、集計をして、保険料控除の金額を求める。

保険料控除の金額

まず、保険料(「あなたが本年中に支払った保険料等の金額」の欄に記載した金額)について、新制度(新保険料等)と旧制度(旧保険料等)に分けて集計し、それぞれ左のA欄とB欄に記載する。

新制度、旧制度それぞれの金額について所得控除額を計算する。まず、新制度(A欄の金額)について、下表の計算式によって控除額を計算して、①の欄に記載する。

 支払保険料等の額  所得控除額
 2万円以下  支払保険料等の全額
 2万円超 4万円以下  支払保険料等×1/2+1万円
 4万円超 8万円以下  支払保険料等×1/4+2万円
 8万円超  一律4万円

旧制度(B欄の金額)について下表の計算式によって控除額を計算して、②の欄に記入する。

 支払保険料等の額  所得控除額
 2万5000円以下  支払保険料等の全額
 2万5000円超 5万円以下  支払保険料等×1/2+1万2500円
 5万円超 10万円以下  支払保険料等×1/4+2万5000円
 10万円超  一律5万円

①と②の金額を足して③に記載する。ただし、その金額が4万円を超えたときは4万円と記載する。

最後に②と③の金額のうち、高いほうの金額をイの欄に記載する。

年末調整の書類の書き方(介護医療保険)

・記載項目

介護医療保険料に関する記載事項は以下のとおりである。

年末調整の書類の書き方 年末調整の書類の書き方

基本的には一般生命保険料の場合と同じだが、以下の点が異なる。

●新・旧の区分

介護医療保険は新制度のみの制度であるため、新旧の区分を付ける必要がない。

・金額の集計の仕方

介護医療保険料に関する事項を記載し終えた後、集計するが、介護医療保険は新制度のみのものなので、支払保険料(「あなたが本年中に支払った保険料等の金額」の欄に記載した金額)について、合計した金額をC欄に書く。そして、一般保険料の新制度と同じ方法で計算して求められた控除額をロの欄に記入する。

年末調整の書類の書き方

年末調整の書類の書き方(個人年金保険)

・記載項目

個人年金保険料に関する記載事項は以下のとおりである。

年末調整の書類の書き方 年末調整の書類の書き方

基本的には一般生命保険料の場合と同じであるが、以下の点が異なる。

●保険期間又は年金支払期間
保険期間ではなく、個人年金が支払われる期間を記載する。

●保険金等の受取人
受取人の氏名と続柄以外に年金の支払い開始日を記入する。

・金額の集計の仕方

控除金額の集計方法は、一般生命保険料の場合と同じだ。すなわち、新制度の保険料と旧制度の保険料をそれぞれ集計し、各金額を元に個人年金保険料の所得控除の金額を求める。

年末調整の書類の書き方(集計)

・それぞれの金額の合計が控除額とはならない

3種類の保険料について、それぞれ所得控除の金額を求めて、それを合計して生命保険料控除の金額を求める。

ただし、合計額そのものがそのまま生命保険料控除とはならず、12万円を超えた場合は12万円となる。

最終的に求まった金額を用紙の下のほうにある、「生命保険料控除額」の欄に記載する。

年末調整の書類の書き方

確定申告の書類に書く場合

生命保険料控除は確定申告で行う場合もある。方法としては、主に紙の確定申告書で行う場合と電子申告で行う場合があるが、ここでは紙の確定申告書で行う場合について述べる。

・年末調整に比べて記載内容は簡単に済む

確定申告の用紙に記載する場合は年末調整に比べて記載事項は少ない。ただし、生命保険料控除の金額を自分で計算しなければならない。

・第二表への書き方

まず、確定申告の用紙である第二表の右上の部分に以下のような欄がある。

年末調整の書類の書き方

ここに保険料の種類と新制度・旧制度別に分けた5種類それぞれの金額を記入する。すでに年末調整を行っている場合、金額を書かなくとも「源泉徴収票のとおり」と記載するだけで済む。

・第一表への書き方

第二票に記載された金額を基に生命保険料控除額を計算し、その結果を第一表の生命保険料控除の欄に記載する。   ここで生命保険料控除の計算を行うが、計算方法は年末調整の場合と同じである。すなわち、以下のようになる。

  1. それぞれについて、所得控除額を計算する
  2. 一般生命保険料、個人年金保険料について新制度と旧制度の金額からそれぞれの保険料における所得控除額の金額を計算する。新制度と旧制度の合計(4万円まで)と旧制度の金額(5万円まで)のうち高いほうの金額を採用する。
  3. 3種類の保険料を合計し、12万円を超えた場合12万円を、それ以下の場合はその金額を生命保険料控除の金額とする。
年末調整の書類の書き方

まとめ

この記事では生命保険料控除の適用を受けるための各種書類の記載方法について解説した。

生命保険料控除を受ける方法には、年末調整と確定申告がある。それぞれ書類の書き方が異なるので、この記事が参考になれば幸いだ。