「子どもがいたら扶養控除ができて当たり前」は昔の話。今はそうとは限らない。いつでもどこでも誰でも稼げるようになったからだ。2020年分からは扶養控除の要件が変わった。こうした改正も含め、現代ならではの扶養控除の注意点を解説する。
中央大学法学部法律学科卒業後、株式会社ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」
子どもの扶養控除に関するQ&A
最初に子どもの扶養控除に関する3つの質問に答える。
子どもを扶養控除にするための要件は?
「その年の12月31日時点で16歳以上であること(16歳未満の年少扶養親族は対象外)」、「納税者と生計を一にしていること」、「年間の合計所得金額が48万円以下であること」、「青色事業専従者や白色事業専従者として給料をもらっていないこと」の4つ。また、ほかの誰かの扶養控除の対象になっていないことも必要だ。
「その年の12月31日時点で16歳以上であること(16歳未満の年少扶養親族は対象外)」、「納税者と生計を一にしていること」、「年間の合計所得金額が48万円以下であること」、「青色事業専従者や白色事業専従者として給料をもらっていないこと」の4つだ。また、ほかの誰かの扶養控除の対象になっていないことも必要である。
2020年分から扶養控除が変わった?
2020年分から扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得金額の要件が変わった。2019年分までの要件は「38万円以下」だったが、「48万円以下」となった。ただし、扶養控除の対象となる子供の収入源がアルバイトだけなら「給与年収103万円以下」で判定してよい。
2020年分から扶養控除の対象となる扶養親族の合計所得金額の要件が変わった。2019年分までの要件は「38万円以下」だったが、「48万円以下」となった。ただし、扶養控除の対象となる子供の収入源がアルバイトだけなら「給与年収103万円以下」で判定してよい。
合計所得金額って何?
ひと言で表すと「いろいろな所得の合計額」だ。所得税では稼ぎ方により所得を10種類に分け、区分ごとに計算する。これを足し合わせたものが合計所得金額だ。なお、収入は額面の金額だが、所得は区分ごとに計算した金額だ。アルバイト収入とアフィリエイト収入が同じ103万円でも所得額は異なるので注意したい。
一言で表すと「いろいろな所得の合計額」だ。所得税では稼ぎ方により所得を10種類に分け、区分ごとに計算する。これを足し合わせたものが合計所得金額だ。なお、収入は額面の金額だが、所得は区分ごとに計算した金額だ。アルバイト収入とアフィリエイト収入が同じ103万円でも所得額は異なるので注意したい。
「子どもは必ず扶養控除」と言えない昨今の事情
ひと昔前、高校生や大学生の子どもがいたら扶養控除が受けられるのは当たり前だった。しかし、現在は「学生の子どもがいる=扶養控除できる」とは限らない。
以前は子どもが自力で収入を得る手段は、外に出て働くアルバイトしかなかった。そのため親は「うちの子の収入はいくらなのか」と悩む必要はなかった。子どもの行動や様子を見ていれば分かるからだ。
しかし、ネット環境が整い、You Tubeやアフィリエイトなど稼ぐ手段が増えた現在、アルバイト以外でも収入が得られるようになった。自宅に引きこもっていても、稼ごうとすればいくらでも稼げる。そのため、親が子どもの収入を正確に知るのは難しい。
また、オンラインで自ら稼いだ収入はバイト収入と税法上の扱いが異なる。後述するが、所得税では稼ぎ方で所得を10種類に区分した上で所得額を計算する。「アルバイト収入が103万円以下なら扶養控除できる」というが、その考え方はYou Tubeやアフィリエイトでの稼ぎには当てはまらない。
つまり、子どものオンラインでの収入が103万円以下でも「扶養控除できる」とは断言できない。具体的にどのように計算するのかは、後述する「『子供の合計所得金額』ここに注意」で見てほしい。
2020年分から条件変更 扶養控除とは何か
扶養控除はよく知られた所得控除の一つだが、2018年度の税制改正で大幅に変わった。次の点に注意したい。
●扶養控除とは
扶養控除とは、子どもや老いた親など、妻や夫以外の家族を扶養していると一定額を所得から差し引ける制度。控除額は原則38万円だが、扶養親族の年齢や同居の有無で差し引ける額は変わる。子どもだと、年末時点で19歳以上23歳未満なら控除額は63万円に増える。
ただし、無条件で控除できるわけではない。後述する「扶養控除を受けるための6つの条件」に家族が合致していないと扶養控除は適用できない。
●2020年分から要件が変わった
扶養控除の控除額はこれまでと同じ38万円だ。ただし、扶養控除の対象とする親族の所得要件が変わった。これまで要件となっていた合計所得金額は「38万円以下」だったが、今年から「48万円以下」になった。もっとも、バイト代だけが子どもの収入なら、これまでどおり「給与年収103万円以下」かどうかで判断してよい。
子どもで扶養控除を受けるための6つの条件
我が子で扶養控除を受けるには、次の6つの要件を満たしていることが必要だ。
1.扶養している家族が6親等内の血族か3親等内の姻族、あるいは地方自治体から養育や養護を委託された子供や老人であること
2.扶養している家族が年末時点で16歳以上であること
3.扶養している家族の年間の合計所得金額が48万円以下であること
4.扶養している家族と生計が同一であること
5.扶養している家族が青色事業専従者または白色事業専従者として給料をもらっていないこと
6.扶養している家族がほかの誰かの扶養控除の対象となっていないこと
注意すべき条件1:同一生計とは何か
6つの条件の中には耳慣れない言葉で判断に迷うものがある。その1つが「同一生計」だ。「同居だけが同一生計だ」と思いこむ人がいる。税法での「同一生計」は「納税者の財布のお金で生活していること」だ。別居でも納税者からの仕送りで生活しているなら同一生計である。
離婚した夫婦に子どもがいるときの「同一生計」も「納税者のお財布で教育や生活を賄っているか」で考える。別居した元妻・元夫と暮らす子に教育費や生活費を送金しているなら「同一生計」となり、扶養親族に該当する。
「別居だけど同一生計」ここに注意
「別居だけど同一生計」の子どもで扶養控除を受けるなら、次の点に注意しなくてはならない。
●証明が必要
別居の子どもがもし海外で暮らしているなら、年末調整や確定申告で送金証明書類や親族関係書類の添付が必要だ。送金証明は外国送金依頼書の控えやクレジットカードの利用明細書、親族関係書類は戸籍謄本などとなる。こういった書類が外国語で書かれているなら日本語の翻訳も添付しなくてはならない。
●元夫・元妻が扶養していたら適用できない
先ほど「離婚した元の配偶者と暮らしている子も同一生計なら扶養親族だ」と述べたが、だからといって扶養控除できるとは限らない。元妻や元夫がその子どもで扶養控除を受けているなら、いくら送金していても自分自身は控除できないのだ。
別れた夫婦は同時に同じ子どもで扶養控除を受けられないのである。元夫婦で話し合って「どちらが控除を受けるか」を決めないといけない。
注意すべき条件2:合計所得金額
「合計所得金額」は日ごろなじみがないだけに分かりにくい。以下の点を確認しよう。
合計所得金額とは平たく言うと「10種類ある所得の金額を合計したもの」だ。所得税では、稼ぎ方によって収入を10種類の所得に分ける。分けた上で、それぞれの区分の中で所得額を計算するのだ。所得の計算式は所得ごとに違う。給与所得は「給与収入-給与所得控除(いわゆるサラリーマン経費)」で、事業所得や不動産所得、雑所得は「総収入金額-必要経費」で計算する。
「子どもの合計所得金額」ここに注意
よくある間違いとして多いのが「年収=所得」と解釈するものだ。所得は税法上、所得区分ごとに計算する。同じ100万円の年収でも、アルバイトで得たか、You Tubeで得たか、メルカリで転売して得たかで所得額は変わる。次の3つで見比べてほしい。
●アルバイトをしている子どもの合計所得金額の計算方法
アルバイト収入は給与所得に当たる。給与所得は「給与年収-給与所得控除」で計算する。給与所得控除がいくらになるかは税法で定められている。次のサイトで確認できる。
【参考】給与所得控除(国税庁)
給与年収100万円の給与所得控除の額は55万円だ。なので給与所得は45万円となる。
●You Tuberの子どもの合計所得金額の計算方法
You Tubeで稼いだ収入は事業所得か雑所得になる。事業所得として申告するにはYou Tubeでのビジネスが労力などいろいろな要素で見て「事業規模である」と言えるものでないといけない。学生の片手間でのYou Tubeは事業規模にはなりにくいので雑所得で申告するのが無難だ。なお、事業所得と雑所得はいずれも「総収入金額-必要経費の額」で計算する。
You Tubeでの年間売上が100万円なら、100万円が総収入金額だ。必要経費はビジネスに直接必要なものに限られる。必要経費が年間30万円なら雑所得は「100万円-30万円」で70万円だ。
●メルカリで不用品を売った子どもの合計所得金額の計算方法
メルカリでの売買は最初に「何を売ったか」の判断をする。売ったのが生活用品なら所得税はかからない。しかし生活用品でも利益目的で頻繁に売買していたのなら、利益は事業所得か雑所得に該当する。売上の年間総額が100万円、購入代金やその他の諸費用で50万円なら「100万円-50万円」で所得額は50万円になる。なお、事業所得か雑所得かの判断はYou Tuberの子どものケースと同じ基準で行う。
子どもが扶養控除にならない! 親はどうなる?
「子どもの合計所得額が48万円超になった」、「共働き夫婦の相手方が控除を受けた」などで適用されるはずだった扶養控除が受けられなくなってしまうことがある。このようなとき適用対象外となった親に何が起きるのだろうか。
●年末調整のやり直し、または確定申告が必要
まず必要なのが申告内容の修正だ。会社員なら勤務先の総務か経理に扶養控除の申告内容に間違いがあったことを伝えよう。間に合うなら年末調整をやり直せばいい。
ただし、勤務先によっては会社の事情やタイミングにより、確定申告に自分で行くよう指示するところもあるだろう。そうなったら翌年3月15日までに確定申告をしないといけない。確定申告は税務署など所定の会場で行うほか、国税庁HPの確定申告書作成コーナーでもできる。
●所得税も住民税も増税
受けられるはずの扶養控除がなくなれば、その分だけ増税になる。影響するのは所得税と住民税だ。
所得税は「扶養控除の額×適用される税率」の分、住民税の所得割は「扶養控除の額×10%」の分が増えることになる。
●社会保険や国民健康保険税に影響あり
住民税の計算の基礎となる所得額は国民健康保険税の計算のベースとなる。もし親が国民健康保険税を支払っているなら、翌年分から負担額が増える可能性がある。また、勤務先の社会保険に加入しているなら、子どもは扶養対象から外れるケースがある。
子どもが扶養控除にならない! そのとき子どもはどうなる?
扶養控除から外れた理由が子ども自身の稼ぎなら、子どもの負担は増える。具体的には次の2つだ。
1つ目は子ども自身の確定申告だ。バイトしているだけならアルバイト先での年末調整で完結するが、オンラインで稼ぐなど自力で収入を得ているなら確定申告をしなくてはならない。期限は親と同じで翌年3月15日だ。
2つ目は税金や保険料を子ども自ら負担しなくてはならない点だ。所得が多ければ所得税・住民税の納付義務が生じる。また、親の社会保険の扶養対象から外れれば自ら国民健康保険税を負担しなくてはならない。国民年金は学生なら免除になる特例があるが、所得が多ければこの特例から外れてしまう。
稼いだらその分、税金や保険料という形で社会から責任を求められる。それは大人も子どもも同じだ。「稼いで終わりではなく、親も自分も大変になる」という現実は子どもだけだと気づけない。親子で話し合いの機会を作ろう。
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