年の瀬になり、あわててふるさと納税のサイトをチェックして、どこにふるさと納税をしようか、何をもらおうか……と考えている人は多いだろう。かなり国民に浸透してきたふるさと納税制度だが、いまだに誤解する人も少なくない。中にはあとから事実を知って「ふるさと納税なんかするんじゃなかった」という人も。ここで改めてふるさと納税の仕組みについて知っていただきたい。

誤解(1) ふるさと納税したら自分の自治体に税金を納めなくていい

ふるさと納税,よくある誤解,まとめ
(画像=PIXTA)

「ふるさと納税」という名称ゆえに誤解されやすいが、ふるさと納税は地方自治体に対する寄附金制度のひとつだ。地方創生の一環として創設された制度である。あくまで寄附金であるため、自分の住んでいる自治体の住民税の代わりにはならない。ましてや、自分の住んでいる自治体に住民税を納めなくてもいいということにもならない。ただし、次項以降に述べるように、寄附した金額については、寄附金控除という形で所得税や住民税から差し引くことができる。

誤解(2) ふるさと納税したら全額税金から差し引かれる

所得税や住民税では、個人が地方自治体に寄附した場合、その寄附した金額から2000円を差し引いた金額が控除されるという仕組だ。具体的なイメージとしては、次のそれぞれの算式で計算した金額が所得税や住民税の税額から差し引かれると考えるとよいだろう。

【所得税】

A:(寄附金額(※1)-2000円)×所得税率(※2)

※1総所得金額等の額の40%が上限 ※2復興特別所得税(所得税率×2.1%)を加算した率。税率はその課税所得額に応じて異なる。

【住民税】

<所得割分>

B:(寄附金額(※1)-2000円)×10%(※2)

※1総所得金額等の額の30%が上限 ※2標準税率の市町村民税6%、都道府県民税4%

<住民税特例分>

C:(寄附金額-2000円)×一定割合(※1)(※2)

※1一定割合=100%-10%-所得税率-所得税率×復興特別所得税率 ※住民税特例分における控除額は住民税所得割額の20%が上限

上記の算式によって計算された金額の合計(A+B+C)が、所得税や住民税から差し引かれる金額となる。10万円寄附したからといって、10万円まるごと税金から差し引かれることはない。

なお、サラリーマンなど給与所得者限定になるが、「自分がいくらまで納税したらメリットが最大になるのか」という上限一覧を、ふるさと納税のポータルサイトなどで閲覧することができる。そちらをチェックしてからいくらまでふるさと納税するかを検討していただきたい。

誤解(3) 専業主婦がふるさと納税したら税金の還付が受けられる

ふるさと納税フィーバーの影響か、主婦雑誌でもふるさと納税の特集が組まれるようになった。そこで誤解が多いのが「主婦もふるさと納税すればオトク!」というものだ。これはふるさと納税の仕組み云々以前に、税金のことをあまりよく知らないがゆえの誤解とも言える。

税金の還付は、源泉徴収や先払納付などにより「すでに支払っている税金」があることが前提だ。年末調整やふるさと納税の寄附金控除を行う確定申告により、1年分の税金の正確な計算を行った結果、初めて税金の払いすぎが判明し、納めるべき税金が減額されるか、還付されるということになる。

専業主婦が在宅ワークやパートなどで稼ぎまくっていれば、ふるさと納税で節税効果が出るかもしれない。しかし、月収数万円程度ならば、ふるさと納税が節税になることはまったくない。そもそも税額がゼロだからだ。

余談だが、還付という制度は所得税にはあるが、住民税にはない。納めるべき住民税が減額されるに過ぎないので注意しよう。

誤解(4) ふるさと納税した分は今年の税金から差し引かれるはずだ

ふるさと納税で寄附した金額についての寄附金控除は所得税・住民税それぞれから控除される。しかし、控除されるタイミングが異なるので注意したい。控除されるタイミングは課税のタイミングとリンクする。所得税・住民税の課税のタイミングは次の通りだ。

所得税…その計算のベースである所得や控除が発生した年(※)(年末調整なら翌年1月10日か20日が納付期限、確定申告なら翌年3月15日が納付期限) 住民税…その計算となるベースである所得や控除が発生した年(※)の翌年の6月以降およそ1年間

※いずれも同一年の1月1日から12月31日までの期間

たとえば、2017年中に正社員がふるさと納税を行ったとする。所得税では、所得や控除が発生したのが2017年で、課税も2017年に行われる。源泉徴収で2017年中に少しずつ給与から天引きされている税金はあるが、最終的な精算後の税金は、年末調整なら翌年1月10日か20日、個々人の確定申告なら3月15日に納めることになる。

しかし、住民税は、各自治体が計算し納税額を算出する賦課課税制度をとっている。所得税ベースの最終的な資料が出そろうのが翌年3月15日以降。この時点から各個人の納付すべき住民税を計算する。このとき計算のベースとなる所得額は2017年のものだが、課税するのは2018年6月以降となる。

ややこしいが、ふるさと納税の住民税の節税効果が出るのは来年6月以降と考えていただきたい。

誤解(5) 返礼品はふるさと納税という税金で買っているのでいっぱいもらっても税金はタダ

返礼品はふるさと納税の楽しみの一つだ。「返礼品を何にしようか」が「どの自治体にしようか」の選択基準になっている人は多いが、人によっては「税金で返礼品を節税つきで買っている」というイメージを抱いているようだ。

返礼品は、あくまでも自治体の主体的な行為に過ぎない。つまり、「ふるさと納税をしてもらったゆえの対価」ではない。例えるなら、企業イベントのノベルティグッズやおまけのシールのようなものだ。そのため、返礼品は所得税や住民税の上では「一時所得」に該当し、年間で50万円以上もらうと税金がかかる仕組みになっている。

「その返礼品がいくらか」については、基本的にそのもらった時点の時価相当額で考えるのが妥当だ。クーポン券や金券ならばその券面額が一時所得の金額に相当する。ふるさと納税のポータルサイトによっては「この返礼品は○○円相当額」というように表示しているものもある。その場合はその金額が一時所得の算定金額と考えて差し支えない。

誤解(6) 返礼品を飲食や消耗品にすれば税金はかからない

先述の項目とも関連するが、「食べ物や飲み物ならば消耗品だから価格なんてないに等しいでしょ」と考える人もいる。実はそうは言えない。飲食物であろうと消耗品であろうと、協賛企業がいて原価がある限り、返礼品には必ず価格が存在するからだ。

ふるさと納税のポータルサイトでの返礼品還元率の相場は、寄附金額に対し50%前後と言われている。また、今年の春、総務省から各自治体に還元率を30%に抑えるようにと通知が出た。ここから、返礼品がタダということがあり得ない様子がうかがえる。

また、以上の様子から、仮に300万円分ふるさと納税をし、返礼品をすべて食品など消耗品で受け取ったとしても、その価額は寄付額の30%程度である90万円はあると見ることができる。この場合、一時所得の控除額である50万円を超えているので、一時所得として確定申告しなくてはならない。

誤解(7) ふるさと納税したら自動的に年末調整で税金から控除される

「ふるさと納税をする先は自治体だから、きっと勝手にウチの管轄の税務署や自治体に寄附の情報が行って勝手に節税の処理をしてくれるでしょう」と思いこんでいる人もいるようだが、これも間違いだ。ふるさと納税は、寄附金控除として、医療費控除などと同様に確定申告しなければ、税金の減額も還付も行われない仕組みになっている。

ただし、ふるさと納税以外に特段確定申告する必要がない人(医療費控除や株の売買などがないサラリーマンなど)で、ふるさと納税した自治体が年間5カ所以下ならば、後述する「ワンストップ特例制度」を使うことで確定申告を省略することができる。この場合、所得税から控除される分も、まとめて翌年6月から課税される住民税から控除されることになる。

誤解(8) 妻名義でふるさと納税しても妻の税金から控除することができる

ふるさと納税に取り組むのは、世帯全体であることが多い。中には財テクや節約情報に詳しい妻が、忙しい夫に代わってふるさと納税に取り組むこともあるだろう。

ここで注意したいのが「ふるさと納税した人が誰か」だ。収入の大黒柱である夫の税金を減らすべく、妻が自分の名義でふるさと納税したとしても、それは夫の税金から控除することはできない。医療費控除や社会保険料など「同一生計親族のものなら別名義でも控除OK」という制度とは異なるので注意しよう。また、いったん支払った寄附金をキャンセルすることもできない。どんなに忙しくても節税したい本人が手続きを行わなくてはならない。

誤解(9) ワンストップ特例制度を使っても確定申告と同じ効果を必ず受けられる

先ほどお伝えしたワンストップ特例制度とは、ふるさと納税以外に確定申告する理由のない人が、年間寄附先が5つの自治体以下ならば、寄附先に申請の手続きを行えば確定申告せずとも済む、という制度だ。ふるさと納税しかしていないサラリーマンがもっとも分かりやすい例だろう。

特例制度を使った場合、所得税で控除を受けるべき金額も、住民税で控除されるべき金額と一緒に翌年6月以降の賦課される住民税額から差し引かれることとなっている。ただし、寄附金額によっては、かえって特例制度の方が損になることがある。理由は算式の違いだ。

ワンストップ特例制度で住民税額から丸ごと差し引かれる金額の算式では、誤解②でお伝えした算式のAの代わりに、次のDが使われる。

<住民税寄附金税額控除(申告特例控除分)>

D: C×所得税率÷(1-10%-所得税率)

つまり、B+C+Dの金額が、住民税額から控除されることになるのだが、注意したいのが「Cそのものに上限がある」点だ。Cには住民税所得割額の20%が上限となっている。所得額や寄附金額によっては「確定申告した方が得だった」ことになりかねない。事前に、確定申告した場合と特例を使った場合のどっちが得かをシミュレーションした方がよいだろう。

いかがだっただろうか。今年のふるさと納税は、今年の12月31日までに入金したもののみが対象となる。焦る気持ちも分かるが、思い込みをしていたばかりに損をした…などということがないよう、気をつけていただきたい。

鈴木 まゆ子
税理士、ライター、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年税理士登録。外国人の日本国内での起業支援に従事。会計や税金、仮想通貨に関する話題についての記事執筆を行う。税金や金銭、仮想通貨、お金に関する心理学についても独自に研究中。共著『海外資産の税金のキホン』(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。

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