所得税の減税の方法として知られるものの一つとして知られるものに医療費控除がある。では、その医療費控除を受けられる対象とはどのようなものがあるのであろうか。ここではどのようなものが医療費控除になるのか、そうではないのかについて説明する。

中川 崇
中川 崇(なかがわ・たかし)
公認会計士・税理士。田園調布坂上事務所代表。広島県出身。大学院博士前期課程修了後、ソフトウェア開発会社入社。退職後、公認会計士試験を受験して2006年合格。2010年公認会計士登録、2016年税理士登録。監査法人2社、金融機関などを経て2018年4月大田区に会計事務所である田園調布坂上事務所を設立。現在、クラウド会計に強みを持つ会計事務所として、ITを駆使した会計を武器に、東京都内を中心に活動を行っている。

医療費控除についておさらい

医療費控除
(画像=PIXTA)

・医療費控除制度とは

医療費控除は所得税を減税する方法であるが、具体的にはどのようなものであろうか。

医療費控除とは

・その年の1月1日から12月31日までに
・本人と本人と生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が
・一定の金額を上回った場合に
・その医療費をもとに計算した金額が

所得(税金を計算するもととなる利益の金額)から引かれる制度である。

医療費全額が税金から引かれるわけではないが、支出した医療費に応じてある程度、税金が軽減される制度である。

・控除の対象になるものとは

医療費控除の対象となるのは

1.医療費であって
2.納税者が自分自身や自分と生計を一にする親族のために支払ったものであること
3.控除しようとする年の1月1日から12月31日までに支払ったものであること。 4. であることも求められている。

なお、誤解されやすいものとして、

・海外で支払った医療費
・自由診療の医療費

が挙げられるが、いずれも他の要件を満たせば医療費控除の対象となる。

医療費以外にも医療費控除となるものがあるが、それについては後の項目で述べる。

・控除の対象とならないものとは

ただし医療費であったとしても医療費控除の対象とならないものがある。

その代表と言えるのが治療に要したものでないものである。 具体的には、美容整形費用、病気の予防のための予防接種代などがある。

その他に具体的に何があるかについては後の項目で述べる

・忘れていけないセルフメディケーション税制

最近、医療費控除の一種であるセルフメディケーション税制が注目されている。

これは、医療費控除の条件に加え、健康の維持増進及び疾病の予防への取組として一定の取組を行う個人が、特定一般用医薬品等(スイッチOTC医薬品がそれにあたる)を購入した場合に通常の医療費控除よりも有利な条件で医療費控除を受けられるものである。

通常の医療費控除よりも条件が厳しいが、同じ金額の支出の場合であれば、控除される額はセルフメディケーション税制のほうが多くなるため、場合によってはこちらも考慮したほうが有利になることもある。

医療費控除になるもの(医療費)

それではどのようなものが医療費控除の対象となる医療費となるか。ここではそれらについて説明する。

・病院・医院や歯科医での治療

医療費控除の代表的なものとして、病院や歯科医での治療や診療がある。

それらの治療や診療については、自由診療であってもよく、さらに言えば、日本国外で行われたものであっても対象となる。

ただし、自由診療であったとしても著しく高額であるものについては医療費控除の対象とはならない。例えば、歯科治療では、一般に高価な印象があるものの一般的に使われる金を材料とした金歯については医療費控除の対象となっている。しかし、これよりも遥かに高価なものを使った場合は医療費控除の対象とはならない。

・交通費

病院・医院や歯科医に通う際の交通費についても医療費控除の対象となる。 ただし、公共の交通機関を使うのが原則となっており、通常、タクシー代は対象外となる(後述)。

・マッサージ、鍼灸など

通常、マッサージや鍼灸、柔道整復師による施術は疲労回復などの目的のために施術を受けることが多く、その場合は医療費控除の対象とならない。しかし、治療としてそれらを受けた場合は医療費控除の対象となる場合もある。

ただし、これらの施術は少なくともそれらに関する国家資格を持った人による治療による必要があり、例えば、資格がなくともできる整体、リラクゼーション、カイロプラティックなどについては医療費控除の対象とはならない。

・入院費用

治療のために病院などに入院した場合も医療費控除の対象となる。

ただし、入院に要した費用すべてがなるわけではない。

医療費控除の対象となるものとしては以下のものが挙げられる。

1.入院時の治療費
2.入院した時に病院から出された食事代
3.付添人を頼んだときの付添料
4.本人や家族の都合以外で個室などに入院した場合の差額ベッド代

一方で、医療費控除の対象とならない主なものとして以下が挙げられる。

1.パジャマや洗面具などの身の回り品
2.医師や看護師に対する謝礼や心付け
3.本人や家族の都合で個室などに入院した場合の差額ベッド代

・出産費用

出産は病気やけがの治療ではないものの、医療費控除の対象となる。

ただし、出産に関連した費用すべてがなるわけではない。

医療費控除の対象となる出産費用として、主なものは以下の通りである。

1.分娩の費用
2.妊娠がわかってから、検診、検査の費用
3.病院に通うための交通費
4.出産に際して入院した場合の費用

この場合は医療費控除の対象になるものは前項で挙げたとおりである。

医療費控除になるもの(介護関連)

医療費控除となるものは診療や治療の他に、介護についても医療費控除の対象となる場合もある。

例えば、訪問介護(生活支援でないもの)、訪問リハビリテーション、通所リハビリテーションについては医療費控除の対象となる。

また、訪問介護などに付属してという条件はつくものの、訪問入浴介護などについても医療費控除の対象となる場合もある。

医薬品の医療費控除について

・医療費控除の対象となる医薬品について

医薬品でも医療費控除の対象となる場合がある。

その医薬品が治療や療養のために必要なものであれば、医師から処方された医薬品であっても、薬局などで販売されている医薬品であっても医療費控除の対象となる。

また、通常、ビタミン剤については通常、治療や療養のために使われるものではないため医療品控除との対象とはならないものの、それが医療品であり、なおかつ治療や療養のために使われるものであれば医療費控除の対象となる。

なお、医薬品でないサプリメントについては医療品控除の対象とはならない。

・セルフメディケーション税制の対象となる薬品

セルフメディケーション税制においては医療費控除の対象となるのはスイッチOTC医薬品のみである。

他の医薬品とスイッチOTC医薬品の区別の付け方は以下の通りとなる。

まず、対象となる医薬品には「セルフメディケーション税控除対象」のマークがパッケージに付いている。

また、レシートには対象となる医薬品がある場合はそれとわかるような印(店舗によってつけられている印は異なる)がつけられているので、それを参考にする方法もある。

通常、医療費控除の対象とならないもの

医療費控除の対象となるものは治療や療養に費やすものであることが必要であるが、そうでないものは医療費控除の対象とはならない。しかし、その中であっても医療費控除の体操になるものもある。以下、その例を挙げる。

・美容整形の費用

容貌を整える目的で美容整形を受ける場合は治療や療養ではないため、医療費控除の対象とはならない。

ただし、美容整形の範疇であったとしても眼瞼下垂症(上まぶたが開けづらくなる症状)に対する手術のように治療や療養と認められるものであれば医療費控除の対象になると考えられる。

このようなものを医療費控除の対象とする場合は、あらかじめ税務署や税理士に相談することをおすすめする。

・ビタミン剤など栄養剤

ビタミン剤の中には医薬品があり、それを治療や療養のために購入した場合は医療費控除の対象となる。

・予防接種

インフルエンザや(この解説が発表されるころに認可されているであろう)新型コロナウイルスのワクチンなどの予防接種については医療費控除の対象とはならない。

ただし、これにも例外があり、例えば、同居している家族がB型肝炎かかっている人が、医師のすすめでB型肝炎のワクチンを接種する場合で、治療の一環として行う場合であれば認められる場合もある。

なお、B型肝炎のワクチン接種で医療費控除を認めてもらうためには確定申告書に医療費控除の明細書を添付し、また、医師の診断書を確定申告の際に添付するか、確定申告書を提出する際に提示することが必要である。

・タクシー代

交通費も医療費控除の対象とすることができるが、この場合は基本的に公共の交通機関に限定され、タクシー代は含めることができない。

しかし、例えば深夜に急に病院に行く必要があるなどでタクシーを使わなければならないなどタクシーを使う必要性がある場合については高速代を含めて医療費控除の対象とすることができる。

・健康診断や人間ドック

健康診断や人間ドックは治療や療養のために行われるためではないため、医療費控除の対象とはならない。

しかし、これらによって体の異常が見つかったため、治療を開始した場合はその費用について医療費控除の対象となる。

医療費控除の金額から差し引かれるもの

医療費控除の対象となる金額を計算するときは支払ったものに対してばかりではなく、それに関して受け取った金銭も、補てんされた金額として考慮に入れる必要がある。

医療費控除は実質的に負担されたものについて控除が受けられる仕組みとなっているので戻ってきた分などについても支払った分から差し引くことによって反映させる必要がある。

・健康保険から返ってきた費用等

協会けんぽや健康保険組合などから支払われる、高額療養費で返金されたものや出産育児一時金については保険金などで補てんされる金銭となり、医療費控除を計算する際に支払いから控除されるものとなる。

・生命保険の給付金

生命保険などで給付される入院給付金についても、補てんされる金額として医療費控除を計算する際は支払いから控除する必要がある。

まとめ

医療費控除の対象となるものは様々で、同じように見えて対象となるもの、ならないものが混在している。

この記事ではそのようなものについて説明を行った。参考になれば幸いである。