シングルファザー,寡夫控除
(写真=PIXTA)

女性の社会進出が進み、男女格差が縮まり、男性も育児や家事を担うようになった一方で、離婚などにより、男性が仕事をしながら子育てをする世帯が増えてきた。

2010年総務省統計局の調査によれば、日本全国で20万4千人、年齢層では40~44歳が最も多いとのこと。シングルファーザーはシングルマザーに比べて認知度が低く、また、男性であるがゆえに「正社員だから生活に問題なし」と見られる傾向にある。しかし、現実には、男手ひとつで仕事と家事をこなすのは経済的にも精神的にも負担が大きく、大変さはシングルマザーかあるいはそれ以上だ。今回は、そんなシングルファーザーが見逃しやすい寡夫控除について解説する。

寡婦控除と寡夫控除は違う

寡夫控除とは、妻との死別や離婚といった理由で、男手ひとつで我が子を育てている場合に、所得税や住民税において税金計算のベースである所得額から一定金額を差し引いてもらうことのできる控除制度だ。

夫と死別あるいは離婚した場合の女性が適用を受ける寡婦控除と制度内容はよく似ているが、寡婦控除よりも条件は厳しい。その背景には、女性の社会進出が進んだとはいえ、企業社会においては、昇進や給与といった面では、相変わらず男性が中心になりやすい状況であること、離婚した場合、女性が子どもを引き取って育てるケースが多いことなどが考えられる。

所得控除の額は、所得税では27万円、住民税では26万円だ。税金ベースに計算しなおすと、所得税の適用税率が20%ならば年間5万4000円になる。住民税は都内だと所得割で10%税率であるため、2万6000円だ。年間の税金が合計8万円安くなることになる。仕事で忙しく、家事支援や外食など色々なサービスの手を借りなくてはならないシングルファーザーにとって、この節税は重要だ。

なお、この寡夫控除は、年末調整と確定申告のいずれにおいても適用をうけることができる。年末調整ならば「扶養控除等(異動)申告書」の「4寡夫」の欄に◯をつければよい。確定申告ならば、第二表の本人該当事項の「寡夫控除」欄の該当箇所にチェックをつけ、第一表で「寡夫控除」の項目に所得控除額を記載する。

寡夫控除が適用される条件とは

寡婦控除が適用されるためには、次のすべての要件を満たすことが必要となる。

<条件>
1.妻と死別したり離婚したりしてから再婚していない人や、妻の生死が明らかでない人(妻が行方不明の場合等)であること
2.総所得が38万円以下の生計をともにする子供を扶養していること
3.納税者本人の年間合計所得額が500万円以下であること

年間合計所得額500万円と言われてもパッとイメージがつかないが、給与所得のみのサラリーマンの場合、額面金額で680万円前後の給与収入がある人でも給与所得控除を差し引くと合計所得金額が500万円未満になる。DODAが発表した「平均年収ランキング2016年」によれば、2016年の平均年収は442万円、投資銀行業務(平均年収777万円)やファンドマネージャーなど運用業務(平均年収773万円)、MR(平均年収710万円)を除けば、多くの職種が適用対象となる可能性が高い。

なお、最近は、夫が妻を養うだけでなく、妻が夫を扶養するケースも多い。もし、夫が妻の扶養に入っていて、かつ控除対象配偶者である場合に、年の途中で一家の大黒柱である妻と死別したならば、寡夫控除の適用を受けることができる。なぜかというと、控除対象配偶者に該当するかどうかの判定は、亡くなった妻との死別のときに行う一方、寡夫に該当するかどうかの判定は、その年の12月31日に行うからである。「死別の時に控除対象配偶者だったから」といって、「寡夫控除をやるだけムダ」になるとは限らないのである。きちんと自分の置かれた状況を判定し、該当するかどうかを検討していただきたい。

その他知っておきたい公的制度

税金の話からは離れるが、死別や離婚などでシングルファーザーとなった場合に、助けとなる公的制度がいくつかある。知っておいて損はないので以下に紹介する。

(1)遺族年金
妻と死別した場合に、支給される年金制度だ。従前は夫と死別した女性のみが対象となっていたが、近年のシングルファーザーの増加及び給与所得の伸び悩みなどにより、平成26年から妻と死別した男性に対しても支給されるようになった。

30代から50代のシングルファーザーが気をつけておきたいのが遺族基礎年金制度だ。これは、18歳に達して最初の3月31日までの子ども(一定の障害がある場合には20歳)をもつ配偶者に対し支給される年金制度であり、子供の数に応じて支給額が決定する。

ただし条件がある。亡くなった妻の被保険者期間に一定期間の年金保険料の支払いの滞納がないことだ。そして、シングルファーザーが再婚した場合には、この遺族年金は支給打ち切りとなる。

(2)児童扶養手当
離婚でシングルファーザーになった場合や、死別でシングルファーザーになっても遺族年金が支給されない場合に、児童扶養手当を受けることができる。以前は女性にしか支給されなかったが、平成22年から男性にも支給されるようになった。児童扶養手当も遺族基礎年金と同じく、18歳に達して最初の3月31日までの子ども(一定の障害がある場合には20歳)をもつ配偶者に対し支給され、子供の数に応じて支給額が決定する。また、適用の可否や支給額は、養育費や勤労収入その他の収入などをあわせた所得によって決定される。

この他、ひとり親家庭等小児医療費助成制度、自治体独自の支援制度など様々な公的支援制度がある。夫婦で子育てするのも大変なのに、男性一人で働きながら育児をするのは輪をかけて苦労が大きいかと思う。

育児は一人で抱え込む時ほどうまくいかない。むしろ、色々な人に相談したり、手を借りたりした方が、経済面だけでなく精神面での負担を軽くし、親子がよりよい関係を築けるようになることが多い。制度を活用し、上手に助けを求めることで、毎日をできるだけ楽しく過ごしていただきたい。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。外国人の在日起業の支援が中心。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。心理セラピーは、リトリーブサイコセラピストの大鶴和江氏に師事。カウンセリングやセッションの他、金銭に絡む心理を研究している。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。ブログ「 経済DV・母娘問題からの解放_セラピスト税理士のおカネのカラクリ

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