学生がアルバイトなどで仕事をする場合の優遇税制として、勤労学生控除という税制がある。この記事では、学生ならではの優遇税制を賢く使いこなす方法や、具体的な申請方法を紹介する。
勤労学生控除に関するQ&A
勤労学生控除とは?
勤労学生控除とは、扶養控除や配偶者控除といった所得控除の一つで、働いている学生が受けられるものだ。この控除を受けることによって、働いている学生が支払うことになる所得税や住民税が軽減される。
勤労学生控除とは、扶養控除や配偶者控除といった所得控除の一つで、働いている学生が受けられるものだ。この控除を受けることによって、働いている学生が支払うことになる所得税や住民税が軽減される。
勤労学生控除を使うときの注意点やデメリットは?
学生がアルバイトなどをしているとき、103万円の壁といわれる年収を限度として働くことが多いかと思われるが、中には学費などに充てるためにそれ以上に働く学生もいる。勤労学生控除は、その際に利用できる制度だ。
ただし勤労学生控除を利用して学生本人の所得税が減額できたとしても、扶養者側から見て所得税の扶養控除の範囲(年間の合計所得金額48万円以下)から外れる可能性があることは抑えておく必要がある。
学生がアルバイトなどをしているとき、103万円の壁といわれる年収を限度として働くことが多いかと思われるが、中には学費などに充てるためにそれ以上に働く学生もいる。勤労学生控除は、その際に利用できる制度だ。
ただし勤労学生控除を利用して学生本人の所得税が減額できたとしても、扶養者側から見て所得税の扶養控除の範囲(年間の合計所得金額48万円以下)から外れる可能性があることは抑えておく必要がある。
勤労学生控除の申請方法は?
勤労学生控除は、勤務先の年末調整や、毎年2月16日から3月15日の間に行われる確定申告の所得税の申告で申請する。
勤労学生控除は、勤務先の年末調整や、毎年2月16日から3月15日の間に行われる確定申告の所得税の申告で申請する。
勤労学生控除の目的とは?
勤労学生控除は、働いている学生が受けられる所得控除の一つだ。つまり学生に対しての優遇制度になる。
学生の中には奨学金などを利用して、借り入れをしながら大学に通っているケースもあり、少しでも学生が勉学に励みやすく、金銭的な負担を減らせるように考えて用意された制度と言える。しかし実際は、この制度を良く知らず、利用していない学生もいるようだ。
勤労学生控除が適用される学生の範囲
勤労学生控除の対象 は、「特定の学校の学生、生徒であること」という条件があるが、大まかに言えば、小学生~大学生までが対象となる。
具体的には、以下のようになる。
・学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校など
・国、地方公共団体、私立学校法の第3条に規定する学校法人、同法第64条第4項に規定する法人、これらに準ずる一定の者により設置された専修学校又は各種学校のうち一定の課程を履修させるもの
・職業能力開発促進法の規定による認定職業訓練を行う職業訓練法人で一定の課程を履修させるもの
国立大学など一般的な学校はもちろん、専修学校や職業訓練校などでも勤労学生控除は利用できる。
ただし、専修学校や職業訓練校などの場合は、学校からの証明書が必要となる。
勤労学生控除を受ける、学生であること以外の条件
勤労学生控除を受けるためには、学生であること以外にも、以下の条件がある。
⑴給与所得などの勤労による所得があること
⑵合計所得金額が75万円以下(2019年分以前は65万円以下)で、しかも⑴の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
合計所得金額が75万円以下とは、給与収入の場合、年収130万円以下が基準になる。(給与収入が130万円だと給与所得控除が55万円になるので、130万円-55万円=75万円という計算になる。)
また、収入がアルバイトなどの給与収入に限られていないので、フリーランサーなどの個人事業で稼ぐ事業所得や、株式投資などで得られる配当所得で収入を得ている場合も、勤労学生控除が使える。
しかし、配当所得のような勤労以外の収入は、上限が10万円以下であること、また勤労による収入を得ていることが条件だ。
所得控除とは?
所得控除とはどのようなものだろうか。
所得税の計算では、最初に給与や事業による収入から、給与所得控除や青色申告特別控除など、所得の特性に合わせた控除額を控除して所得を計算する。これを総所得金額と言う。
総所得金額から、さらに控除するものが所得控除だ。具体的には、生命保険料控除、医療費控除、扶養控除などが該当する。所得控除である勤労学生控除は、これらの仲間という位置づけだ。
勤労学生控除の計算の流れ
給与のみの学生の場合、以下のように計算する。
{給与収入-給与所得控除-所得控除(勤労学生控除・基礎控除など)}× 所得税率
所得税の計算は、総所得金額から、勤労学生控除を含めた所得控除を控除して計算した金額(課税総所得金額) に、税率をかけて計算する。
ちなみに、住宅ローン控除などの税額控除がある場合は、その税額控除分を差し引いて、最終的な納税額を計算する流れになる。
勤労学生控除で得られるメリット
勤労学生控除を使うことによって、所得税額が減額されることは、説明してきたとおりだ。
具体的には、勤労学生控除は、最大27万円の所得控除なので、最終的な課税所得金額にかける税率を5%で計算すると、最大で1万3500円の所得税が減額される(復興特別所得税まで含めると、1万3783円)。
ちなみに、所得税率5%というのは、課税所得金額が195万円以下の税率だ。勤労学生控除が適用される条件は、合計所得金額75万円以下となる。勤労学生控除を使わない場合、所得税の税率は自動的に5%になる。
勤労学生控除を使うと、所得税だけでなく住民税も軽減される。住民税の計算も所得税の計算と基本的には同じ流れだ。ただし所得税と違い、控除額が26万円 となり、所得税よりも1万円低い。住民税の税率は基本的に一律10%なので、勤労所得控除の節税額は、最大2万6000円となる。
勤労学生控除を利用することで、所得税と住民税を合わせて最大3万9500円の減税となる。
勤労学生控除と所得税の扶養
勤労所得控除を受けて収入があると、所得税の被扶養者から外れることがある。
両親のどちらかが、年末調整もしくは確定申告で、学生である子どもを扶養控除の対象として申告している場合、親が扶養控除として38万円か63万円の所得控除を受けることがある。
扶養控除
16歳以上……38万円
16歳以上23歳未満……63万円
扶養控除の対象となる扶養親族の条件には、「年間の合計所得金額が48万円以下(2019年分以前は38万円以下)であること。」というものがある。合計所得金額が48万円以下の場合、給与収入で考えると、年収103万円未満となる。
実は、年収103万円未満というのは、そもそも勤労学生控除を受けなくても所得税の納税が発生しない人である。給与収入103万円から給与所得控除55万円と、基礎控除と呼ばれる所得控除48万円を差し引くと、課税所得金額が0円となるためだ。
年収が103万円を超えて、親の所得税の扶養から抜けた場合、親の所得税は、勤労学生控除によって減税された分を大きく上回る納税額になる可能性が出てくる。
仮に20歳の大学生がアルバイトで103万円を超える給与収入を得て、親の扶養から抜けたと考えると、親は63万円の扶養控除がなくなるので、課税所得金額が63万円増えることになる。親に適用されている所得税率が10%だとすると、63万円の10%なので、所得税が6万3000円増える可能性が出てくる。
さらに、所得税は累進課税制度で課税所得金額が増えるにつれて税率が高くなる仕組みのため、63万円の所得控除がなくなることで、所得税率そのものが高くなる可能性も出てくる。
世帯全体で見ると、勤労学生控除を受ける受けない以上に、給与収入を年間103万円以下に抑えておいたほうがよいという結論になる場合も考えられるだろう。
勤労学生控除と住民税
給与収入年間103万円以下でも、勤労学生控除を申請したほうがよい場合もある。
それは、住民税への影響からだ。前述のとおり、勤労学生控除は住民税でも使える。実は、住民税が課税されない金額は、所得税の103万円よりも低い。
年収103万円の給与所得者の住民税を計算すると、103万円から給与所得控除55万円を引いた48万円から、住民税の基礎控除43万円を控除すると、5万円の課税所得金額が残る。
この5万円を控除できる所得控除を申告しなければ、住民税が課されることになる。住民税の勤労学生控除は6万円なので、勤労学生控除を利用することで、住民税の納税も0円にできる。
勤労学生控除を受ける方法
勤労学生控除を受ける方法は2通りある。それは、年末調整と確定申告だ。
アルバイトなどの給与収入の場合は、年末調整で勤務先に提出する書類に必要事項を記載して提出するだけで申請可能だ。具体的には、「扶養控除等(異動)申告書」に勤労学生控除に関する事項を記載して勤務先に提出する。
フリーランスなどで事業所得があり、確定申告をする場合は、確定申告書に勤労学生控除に関する事項を記載して提出する。
ただし専修学校や職業訓練校などの学生の場合は、確定申告書に必要事項を記載するだけでなく、学校から発行される証明書の添付が必要だ。電子申告(e-Tax)で確定申告する場合は、証明書の提出は不要になることがある。
仮に給与収入事業所得の2つがある場合は、給与所収入を得ている勤務先で勤労学生控除の申請をして年末調整をしていれば、確定申告の際に証明書を提出するなどの手間を省くこともできる。