生命保険料控除を利用したことはあるだろうか。日本人の多くは生命保険に加入しているが生命保険料控除について詳しく知っている方は少ない。サラリーマンであれば生命保険料控除を利用することによって税金の還付が受けられるお得な仕組みだ。今回は生命保険料控除の特徴や利用の仕方を解説していく。

生命保険料控除とは?

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(画像=kenary820 / Shutterstock.com)

生命保険料控除を理解する前にまずは「控除」について理解しておこう。そもそも税金というのは所得から課税所得となった後に所得税率や住民税率をかけることで算出をするもの。一般的なサラリーマンの方は「給与所得」を得ているが給与所得から「経費」や「控除」といったものを差し引いたものが課税所得になる。

従って「控除」とは所得から差し引くことができる制度。様々な種類の控除を使用して税金の還付を受けることが可能だ。生命保険料控除は上記の控除の中でも「所得控除」にあたり自身が支払った生命保険料の金額によって控除額が決定する。その他の控除と同じく「生命保険料控除」を使用すれば税金の還付を受けることが可能だ。

生命保険料控除を利用するには?

生命保険料控除がどのようなものか分かったところで利用するにはどうしたらいいのだろうか。控除自体は自分が確定申告をする際の申請用紙に控除額を記入もしくは年末調整の際に自動的にやってくれる。また生命保険の種類や支払い額によっていくら控除されるのかも決定するので自身がいくら控除されるのか確認しておく必要がある。

生命保険料控除に該当する保険の種類

生命保険料控除に該当する保険の種類をまずは確認しておこう。生命保険料控除が受けられる区分は以下の3つだ。

・一般生命保険料控除
・介護生命保険料控除
・個人年金生命保険料控除

この3種類の中でも控除される範囲がきまっており「一般生命保険料控除」と「介護生命保険料控除」では保険金受取人が被保険者もしくは配偶者、6等身以内の血族または3等身以内の姻族の保険料と決まっている。

財形保険や5年未満の貯蓄保険、団体信用生命保険は生命保険料控除に含まれないから注意が必要だ。個人年金生命保険料控除では個人年金保険料税制定格特約を付けている保険であることが前提。なおかつ以下4点をクリアする必要がある。

・年金受取人は契約者または配偶者
・年金受取人と被保険者は同じでなければならない
・保険料支払いが10年以上
・「確定年金」または「有期年金」を選択している場合は年金受取開始が60歳以降で受取期間は10年以上

災害入院特約や疾病入院特約といった特約を付与している場合は一般生命保険料控除もしくは介護生命保険料控除に分類されるところも確認しておこう。

生命保険料控除の限度額

生命保険料控除の限度額がいくらかみていく。

【所得税】年間の保険料 【所得税】控除額 【住民税】年間の保険料 【住民税】年間の控除額
一般生命保険料控除
介護生命保険料控除
個人年金生命保険料控除
2万円以下 全額 1万2千円以下 全額
2万円超から4万円以下 保険料/2+1万円 1万2千円超から3万2千円以下 保険料/2+6千円
4万円超から8万円以下 保険料/4+1万円 3万2千円超から5万6千円以下 保険料/4+1万4千円
8万円超 4万円 5万6千円超 2万8千円

「一般生命保険料控除」、「介護生命保険料控除」、「個人年金生命保険料控除」全て支払う金額が上がれば上がるほど控除額はおおきくなっていく。最大の生命保険料控除は「8万円超」の4万円と2万8千円の合計で6万8千円だ。

生命保険料控除を利用する手順

生命保険料控除を利用するにはサラリーマンの場合と自営業者で利用の仕方が異なるので注意が必要だ。サラリーマンの場合は生命保険会社が発行した「生命保険料控除証明書」を手元に残しておこう。どの会社でも12月付近になると年末調整をおこなうので、勤務先の年末調整の際に「給与所得者の保険料控除等申告書」に先ほどの「生命保険料控除証明書」添付して年末調整をおこなえば生命保険料控除の申請は完了だ。

もし年末調整の際に生命保険料の控除を申請し忘れてしまった場合は、確定申告をおこなえば控除をすることが可能なのでしっかり確認しておこう。一方自営業の場合は年末調整ではなく、「生命保険料控除証明書」を確定申告の用紙に添付して確定申告を行う必要がある。

新制度と旧制度で何が変わったのか

生命保険料控除は平成24年1月1日を境に「新制度」と「旧制度」に分けることができる。

新制度

【所得税】年間の保険料 【所得税】控除額 【住民税】年間の保険料 【住民税】年間の保険料
一般生命保険料控除
介護生命保険料控除
個人年金生命保険料控除
2万円以下 全額 1万2千円以下 全額
2万円超から4万円以下 保険料/2+1万円 1万2千円超から3万2千円以下 保険料/2+6千円
4万円超から8万円以下 保険料/4+1万円 3万2千円超から5万6千円以下 保険料/4+1万4千円
8万円超 4万円 5万6千円超 2万8千円

旧制度

【所得税】年間の保険料 【所得税】控除額 【住民税】年間の保険料 【住民税】年間の保険料
一般生命保険料控除
個人年金生命保険料控除
2万5千円以下 全額 1万5千円以下 全額
2万5千円超から5万円以下 保険料/2+1万2千500円 1万5千円超から4万円以下 保険料/2+7千500円
5万円超から10万円以下 保険料/4+2万5千円 4万円超から5万7万円以下 保険料/4+1万7千500円
10万円超 5万円 7万円超 3万5千円

大きな違いとしては旧制度には「介護生命保険料控除」がなかったことや最大控除額が8万5千円だったことだ。旧制度では2種全て控除した場合最大17万円の控除、新制度では3種全部全て控除した場合は最大19万円の控除となるため、1種類ごとの控除は減ったものの全体としては控除額が増加した形だ。

確定申告や年末調整で控除額が決定する

上述したがサラリーマンの場合は生命保険会社が発行した「生命保険料控除証明書」を勤務先の年末調整の際に使用する「給与所得者の保険料控除等申告書」に添付しておくと、年末調整を会社側がおこなってくれるので確定申告なしで控除額が決定する。しかし年収が2千万円を超えている場合、もしくは年末調整に生命保険控除が間に合わなかった場合は確定申告が必要だ。

自営業の場合は「生命保険料控除証明書」を添付して申告を行った後控除額が確定する。自分たちで生命保険料控除の金額がいくらになるのか事前に計算はしていると思うが、実際に決定したわけではないため実際に控除された金額が違ったというケースもある。もし控除額が大幅に自分が計算したものとことなるのであれば、税務署に問い合わせをしてどういう計算になっているか確認することも必要だ。

生命保険料控除を理解して賢く節税に取り組もう

今回は生命保険料控除の特徴や利用の仕方を解説してきた。生命保険料控除には3種類あり単独で利用できるだけでなく、全ての生命保険料控除を利用することも可能だ。重要なのは最終的な自分の手元に残るお金を増やすことであるため、いくら控除できるからといって生命保険を増やした結果損するということだけは避けたい。

重要なのは自分がどの生命保険を利用することが自分の利益最大化になるのかを分析することか始める。各生命保険料控除の特徴やいくら控除されるのかなどをしっかり考えて賢く節税をしていこう。