本記事は、石川 和男氏の著書『要領がいい人が見えないところでやっている50のこと』(明日香出版社)の中から一部を抜粋・編集しています。

要領がいい人が見えないところでやっている50のこと
(画像=loechai/stock.adobe.com)

「与えるギバー」と「奪うテイカー」
要領がいいのは、どっちだ!

人間関係には、他人から利益を得ることばかり考える「テイカー」と、他人に利益を与える「ギバー」がいます。
私はこれまでに何度も「テイカー」に出会ってきました。出版の方法や税金の相談、大学で講師をする方法など、さまざまな情報を無償で教えたにもかかわらず、実際にそれでうまくいっても、報告や感謝の言葉は一切ナシ。唯一、連絡が来るのは失敗したときだけです。出版が実現しなかった、追徴課税を受けた、大学の講師に採用されなかったといったクレームの後に、さらに別の情報を聞き出そうとしてくるのです。
このような人は、次第に信頼を失い、評判も悪くなり、最終的には孤立してしまいます。

人は「社会的な生き物」です。朝起きてから寝るまで、たくさんの人や物に支えられて生きています。以前「世界は誰かの仕事でできている」というコマーシャルのフレーズがありました。例えば、朝起きて、朝食を食べ、会社に行く準備をして、電車で通勤し、仕事をして家に帰ってくる。その間にも、目覚まし時計や食べ物、ドライヤー、タオル、歯ブラシやコップ、電車など、たくさんの物に助けられています。これらをすべて自分で作ることはできません。人間は、お互いに協力し合うことで生活が成り立っているのです。
職場でも一緒です。
先輩が会議前に準備をしていたら、「何かお手伝いしましょうか?」と声をかける。
デジタルに強いなら、社内システムの簡単なマニュアルを作って困っている同僚に教えることで、「頼れる人」という印象を与え、チームの生産性向上に貢献できます。
同僚が忙しそうなときは、雑務や代わりにできる仕事を進んで引き受ける。こうした気遣いが自然にできると、「気が利く人」と、信頼関係が強くなります。
会議の議事録を積極的に作ったり、ゴミ出しや備品の補充などの雑務も自ら進んで行うことで、「目立たないけれど大切な仕事」をこなす姿勢が評価されます。
小さなサポート、知識の共有、気遣いの言葉、雑務の引き受け、これらのギブを積み重ねることで、周囲からの評価が自然に上がり、信頼を築くことができます。最終的には、「この人と一緒に仕事をしたい」と思われる存在になれるのです。

人は、狩猟時代から現代まで、集団で協力することで、ひとりではできない大きな成果をあげてきました。このため、人には「互恵的利他性」が備わったと言われています。これは、生物学者のロバート・トリヴァース氏が提唱した理論で、「誰かに親切にすると、長い目で見て自分にもその恩返しが返ってくる」という考え方です。
つまり、ちゃんとお返しをする人のほうが、長く生き残りやすかったということです。
一見すると、テイカーのほうが他人から奪って得をしているように見えるかもしれませんが、ギバーに対して「いつかお返しをしたい」と考える人が多いのです。

もうひとつ大切なポイントがあります。人は似た者同士で集まるということです。
特に大人になると「同じような人たち」と一緒にいる傾向にあります。同じ考え方や趣味、価値観を持つ人と一緒にいるほうが心地いいからです。つまり、ギバーは自然とギバー同士で集まるようになります。
これは本当にすごいことです。例えば、法律の問題なら弁護士、税金の問題なら税理士、パソコンの問題ならエンジニア、SNSの相談なら動画配信の専門家といった具合に、ギバー同士が集まれば、それぞれが専門分野で助け合うことができます。
結果的に、ひとりでは得られないものを手に入れられるのです。長い目で見ると、ギブを続けることで、有意義で充実した人生を送ることができるのです。

気づかいの壁に気を取られるな!
過剰な気づかいは仕事を遅らせる!

「気づかい」は、大切なコミュニケーション能力のひとつです。
自然にできる人は、信頼され、好印象を与えます。「気づかい」をテーマにした書籍が人気なことからも、多くの人が「気づかいができる人になりたい」と考えていることがわかります。私も日ごろから気づかいを意識して心がけています。
しかし、気づかいができる人が仕事で必ずプラスになるとは限りません。特に要領がいい人は、あまり気をつかわないことがあります。正確に言うと、「気をつかわない」のではなく、「必要以上には気をつかわない」のです。
要領がいい人は、どこにエネルギーを注ぐべきかをよく理解しています。他人の頼みごとに振り回されることなく、自分のペースで進めています。これは、効率的に決断し、行動するために必要なスキルです。もし、上司や先輩、客先のすべての依頼に「はい」か「YES」か「喜んで」と、答えていたら、どれだけ時間があっても足りなくなります。

一方で、要領が悪い人は、他人に対して必要以上に気をつかいます。その結果、他人の期待に応えようとして、自分の仕事に集中できなくなります。自分の時間を無駄に使ってしまい、仕事の効率が下がります。また、他人の意見に振り回され、重要な判断が遅れることもあります。

「気づかい」と「配慮」を区別することは大切です。要領がいい人は「配慮」をしながらも他人の感情に過剰に気をつかいません。必要な場面では適切に配慮しつつも、自分の目標や仕事を優先して進めます。
社会心理学では、「人は他人の評価を気にしすぎて、自分の行動や判断を歪めてしまうことがある」と言われています。これを「社会的比較理論」と呼びます。

要領が悪い人は、他人の期待に応えようとします。パーティー、イベント、講演の誘いに誘われたら忙しくても参加します。SNSで「いいね」を押し「コメント」を返します。
その結果、自分のしたい行動が遅くなります。

一方で、要領がいい人は、他人を気にせず、自分の目標に集中できるため、効率よく行動できます。他人の期待より自分優先、本当に大切なことに集中します。その結果、他人の感情に左右されず、業務を進めることができるのです。

以前の私は、出社するとすぐに大量のメールやチャット、ダイレクトメッセージの返信に追われていました。出版や税の相談からセミナーの誘いまで、返信に時間を取られ、気づけば2時間が過ぎていました。やっと落ち着いたと思ったら返信の返信が……。串カツを一度ソースにつけ、食べている途中で2度目はつけてはいけない串カツ屋さんのルールを思い出しながら「二度づけ禁止!」と心の中で叫び、返信に返信を繰り返していました。
自分の仕事を始められるのは、昼休み過ぎのときもありました。
一方、経営者の友人は初動がとても速く、一心不乱に自分の仕事に注力し、優先順位の高い仕事を次々に片づけていきます。私との差は歴然です。
その姿を見習い、私は過剰な気づかいをやめ、1日1回、決まった時間だけ相談に応じ、さらに2度目の返信は翌日にするようにしました。

もちろん、気づかい自体は悪いことではありません。しかし、ビジネスでは「どれだけ気づかいをするか」よりも、「どこで気づかいをするか」が重要です。要領がいい人は、
このバランス感覚が優れているため、必要な場面では配慮しつつ、自分の仕事も効率よく進めることができるのです。

要領がいい人が見えないところでやっている50のこと
石川 和男(いしかわ・かずお)
建設会社総務経理担当役員を本業に、税理士、明治大学客員研究員、ビジネス書著者、人材開発支援会社役員COO、一般社団法人 国際キャリア教育協会理事、時間管理コンサルタント、セミナー講師、オンラインサロン石川塾主宰(受講者数250名)と9つの肩書で複数の仕事を同時にこなすスーパーサラリーマン。
とはいっても仕事漬けではなく、パーティーなど会合の参加、家族との休息などプライベートも充実させている。しかし元々は三流大学を留年して卒業。社会人になってから一念発起し、年100冊ペースでビジネス書を読み漁り、ビジネスセミナーに参加し、いいと思ったコンテンツやノウハウはノートに書きとめ、実践し、習慣化。
自身と同じく元々は仕事も勉強も苦手だった人に寄り添った個人コンサルティングやセミナーを多数手がけ、絶大な支持を得ている。
著書は累計35万部突破で、『仕事が速い人は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)、『仕事が「速いリーダー」と「遅いリーダー」の習慣』(明日香出版社)、『Outlook最強の仕事術』(SBクリエイティブ)など。

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