離職と同時に家族の「扶養」に入る場合、失業保険(失業給付)を受け取ることができるのだろうか。失業保険と扶養の関係、扶養に入るベストなタイミング、扶養に入る場合や外れる場合に必要な手続きについて解説する。

鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター
中央大学法学部法律学科卒業後、㈱ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」。

目次

  1. 扶養とは
    1. ・税制上の扶養
    2. ・健康保険・年金の扶養
  2. 失業保険と扶養の関係
    1. ・扶養に入りながら失業保険は貰えるのか
  3. 扶養に入るべきタイミング
    1. ・失業保険の受給期間が終わってからがベスト
    2. ・フルタイムで働いていなかった場合は要確認
  4. 扶養に入る・扶養から外れる場合の手続き
    1. ・健康保険の扶養に関する手続き
    2. ・税制上の扶養に関する手続き
  5. 不正受給がばれるとどうなるか
    1. 1.失業保険の支給停止
    2. 2.受給額の返還
    3. 3.3倍返し
    4. 4.返還しないと延滞金がかかる
    5. 5.刑事事件として告訴
  6. 扶養のタイミングは大切

扶養とは

失業保険,扶養
(写真=Thinkstock/GettyImages)

同一世帯内の家族によって生計が維持されている場合を「扶養されている状態(被扶養者)」という。注意したいのが、税制上の「扶養」と、健康保険や年金の「扶養」の管轄や条件の違いだ。

・税制上の扶養

扶養控除は、納税者と生計を同じくしている親族などで、年間の合計所得金額が48万円以下(給与所得のみの場合は給与収入が103万円以下)の場合に対象となる。

被扶養者となると、生計を立てている納税者の課税所得から38万円が控除される。対象者が配偶者のときは、扶養控除ではなく配偶者控除が適用され、最大38万円が控除されることになる。

・健康保険・年金の扶養

健康保険にも「被扶養者」というものがある。健康保険の被保険者と生計を同じくする配偶者や家族で、年収が130万円未満(被保険者と被扶養者が同居の場合は、被扶養者の年収が被保険者の2分の1未満)ならば被扶養者とされ、保険料を支払う必要はない。

厚生年金の被保険者の配偶者で年収が130万円未満の場合、国民年金保険料の支払いも免除されるが、国民年金保険料を支払っているとみなされ、金額と期間が加算される。

失業保険と扶養の関係

失業保険の受給条件には「結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないときは、失業保険を受け取ることができない」とされている。結婚を機に仕事を辞めて配偶者控除の対象になる場合は、結果的に失業保険を受け取ることもできないことになる。

また「定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき」も、失業保険を受け取ることはできないとされている。したがって、離職して家族の扶養に入ろうと考えている場合も、必然的に失業保険を受け取ることができないことになる。

・扶養に入りながら失業保険は貰えるのか

では逆に、扶養に入っている状態で失業保険をもらうことはできるのだろうか。結論から言うと「できる」。ただし、受け取る失業保険の額によっては、配偶者や家族の健康保険の扶養から外れることになる。なぜなら健康保険上、失業保険も収入の一つとして扱われるからだ。

扶養から外れるか否かの目安となる失業保険の額は以下のとおりだ。この条件に当てはまるなら失業保険をもらっても扶養から外れない。

● 被扶養者が60歳未満……基本手当日額が3612円未満
● 被扶養者が60歳以上……基本手当日額が5000円未満

もし扶養から外れるのであれば、一度健康保険の被扶養者から外す手続きを行い、失業期間中は国民健康保険に加入することになる。失業保険がもらえるのは通常90日から360日だ。失業保険の受給が終了したら、あらためて配偶者や親族の健康保険の被扶養者となる手続きを行うか、就職先の健康保険に自ら加入することになる。

なお、失業保険は非課税なので、受給しても確定申告はいらない。そのため、配偶者や親族は、年末調整や確定申告で配偶者控除や扶養控除を受けることができる。

扶養に入るべきタイミング

では、どのタイミングで家族の扶養に入ることがベストと言えるだろうか。

・失業保険の受給期間が終わってからがベスト

失業保険を受給するためには、家族の扶養に入らずに今後も再就職する意思があることを示す必要がある。家族の扶養に入っていないということは、国民年金保険料や国民健康保険料の支払い義務があることになり、支出も生じることになる。失業中ということを申請すれば、国民年金保険料の支払いは猶予されるが、免除されるわけではないので注意が必要だ。

だが、フルタイムで働いていたならば、国民年金保険料(2020年度の保険料は月に1万6540円)と国民健康保険料(自治体によって異なる)の月々の支払い額よりも、失業保険の給付金額が高いことが多いので、保険料を支払ってでも失業保険を受け取るほうがよいだろう。

・フルタイムで働いていなかった場合は要確認

フルタイムで働いていなかった場合は、国民年金保険料と国民健康保険料の合計が失業保険の給付金額を上回ることがある。どちらが多いのか計算してから、扶養手続きをするとよい。

扶養に入る・扶養から外れる場合の手続き

扶養に入るタイミングを決めたら、次は扶養に入ったり、扶養から外れたりする手続きをしなくてはならない。

・健康保険の扶養に関する手続き

「健康保険被扶養者(異動)届」に記入し、被扶養を希望する人の収入を確認できる書類(退職証明書や雇用保険受給資格者証の写し、年金受け取り金額を記載した書類など)と、被保険者と被扶養希望者の続柄を確認できる書類(世帯全員の住民票など)を、被保険者の勤務先に提出する。

・税制上の扶養に関する手続き

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を、扶養者の勤務先に提出する。配偶者控除を希望する場合も同様だ。

不正受給がばれるとどうなるか

失業保険をもらうときは、不正受給にならないようにすることが大事だ。失業保険の受給が不正受給に当たるとみられるのは次のようなケースだ。

● 実態のない求職活動を申告する
● バイトやパート、在宅ワークをしているのに隠す
● 転職先が決まっている事実を隠す
● 起業あるいはその準備をしていることを隠す
● 収入額を過少申告する
● 休業補償給付や傷病手当金の受給を隠す
● 再就職できる状況でなくなった

このほか、本人であるかのように装って他人の失業保険をもらったり、離職理由を偽ったりするのも不正受給に該当する。

もし不正受給がばれると、次のようなペナルティが科されることになる。

1.失業保険の支給停止

当然のことながら、受給資格がないので、最初に不正を行ったと認定された日以降の失業保険が一切受け取れなくなる。

2.受給額の返還

本来受給資格がないのに失業保険を受け取っていたので、全額すぐに返還しなくてはならない。

3.3倍返し

不正の内容が悪質だと本来返すべき受給額に加え、「受給額×2」を支払うように命じられます。

4.返還しないと延滞金がかかる

上述の返還や支払いをしないと、延滞金が加算される。いつまでも払わないでいると、財産を差し押さえられることもある。

5.刑事事件として告訴

失業保険の不正受給は詐欺罪に該当するので、悪質であれば刑事告訴されることもある。なお、詐欺罪の時効は事件が発生してから20年だ。つまり不正した本人が忘れたころに告訴される可能性もある。

以前は「どうせばれない」といわれていた失業保険の不正受給だが、最近はマイナンバー制度の普及によりばれやすくなった。報酬や給与などの所得には支払調書というものがあり、これを年末調整後に税務署に提出しなくてはならないこととされている。マイナンバー同士を照合すれば、何らかの所得が発生したことが把握できるのだ。

不正受給はリスクが高く、一度発覚すると得るものより失うもののほうが大きい。絶対やらないようにしよう。

扶養のタイミングは大切

離職する人にとって、失業保険の給付をどのくらい受け取ることができるかは重要だ。家族の扶養に入る場合も、受け取れる給付金額などをよく計算したうえで、適切な扶養のタイミングを選ぶようにしたい。