年末調整は、日本国内で労働に関わる者ならば大部分の人間が行わなければいけない大切な手続きだ。給与所得者にとっては還付金の有無、給与支払者にとっては事務処理の方法など、それぞれの立場によって気になる部分は異なるかと思うが、今回は特に個人番号(マイナンバー)導入により年末調整手続きがどのように変化したかを解説する。
年末調整とは
年末調整とはそもそも何を行う手続きかというと、「年間に支払った源泉所得税の調整」である。源泉所得税は、給与所得者より申告のあった情報に基づき給与支払者が一定の税率によって求める税金で、給与所得者にとっては源泉所得税を支払うことが所得税を納付することに等しい。ただし源泉所得税はあくまでもその時点での情報や所得に則って算出されるため、年間を通して支払った源泉所得税は本来支払うべき所得税と一致しないことが多い。
この「本来支払うべき所得税」と「既に支払った源泉所得税」との差額を調整する手続きが年末調整であり、厳密にはこれを行うことで給与所得者にとっての「確定申告」とされている。またこのとき過納税となった源泉所得税は年末調整後に還付されるため、年末調整=還付金というイメージを抱いている人も少なくないのではないだろうか。年末調整では、給与所得者が年初に申告したもの以外にもさまざまな情報が控除案件として認められているため、正しく年末調整を行えばほとんどの場合還付金が発生する。
制度上行わなければいけない重要な手続きであることを考慮せずとも、給与所得者にとっては確定申告の代行、過納税額の還付、と年末調整を行うことによるメリットは大きい。
年末調整で提出する書類は
年末調整の時期になると、次の2通の書類が勤務先(給与支払者)より配布される。
・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の保険料控除申告書兼給与所得者の配偶者特別控除申告書
前者は主に人的控除に関する申告、後者は主に物的控除に関する申告にまつわる情報を記載する書類だ。またこのほか、状況によって以下のような書類も用いられる。
・従たる給与についての扶養控除等(異動)申告書
・退職所得の受給に関する申告書(退職所得申告書)
・公的年金等の受給者の扶養親族等申告書
いずれも名前が示す通り限定的な場面で用いられる申告書だが、知らなければ活用することも難しい。それぞれ一度目を通してみても良いだろう。
年末調整で個人番号を使用する書類は
年末調整で個人番号の記入が求められるのは、人的控除にまつわる申告書である。具体的には、先に挙げた5通の申告書のうち、保険料控除兼配偶者特別控除申告書を除く4通すべてに個人番号記入欄が設けられている。厳密には保険料控除兼配偶者特別控除申告書も「配偶者特別控除」という人的控除に該当する申告書なのだが、その基本情報は扶養控除等(異動)申告書に記載することとなるため例外的に対象となっていない。
また、個人番号記入欄が設けられている4通の申告書に関しても、必ずしも個人番号を記入しなければいけないわけではない。前年に個人番号を記入した該当申告書を給与支払者に提出しており、それを給与支払者が帳簿として備えているならば改めて個人番号を記入する必要はないとされている。しかしこれはあくまでも条件が整っている場合に限る話であり、前年に同一書類を提出していたとしても、やはりきちんと記入する方が無難だろう。
個人番号を会社に提出する際の本人確認方法
個人番号が記入された書類を提出する際には、次の本人確認が行われる。
・マイナンバーカード(番号確認と身元(実存確認)
・通知カード(番号確認)+運転免許証、健康保険証等(身元(実存)確認)
後者においては、写真表示のない身分証明書によって本人確認を行うことも可能である。ただしこの場合は、2種類の身分証を提示しなければいけない――とされているのだが、国税庁が発行する年末調整のパンフレット「平成28年分 年末調整のしかた」には次のようにも記されている。
・身元確認については、マイナンバー(個人番号)の提供をする者が従業員であり、採用時等に一度本人確認を行っている場合には、本人を対面で確認することにより身元確認書類の提示を受けることは不要。
つまり、年末調整を行う担当者が問題なきことを確認できればそれで良いのである。
また、個人番号について本人確認を行う必要があるのは「給与所得者本人のみ」で、そのほかの控除対象配偶者や控除対象扶養親族の本人確認は、給与所得者自身が行うこととされている。
マイナンバーカード発行も一考の余地あり
ご覧いただいたように、個人番号の導入により年末調整での記入項目は増えたものの、かかる手間はこれまでとそう変わりない。そのため、マイナンバーカードをわざわざ発行(申請)せずとも通知カードで十分に代替可能だと思われるかもしれない。しかし、個人番号が利用される機会は今後増えることはあれ、減少することはないだろう。申請には相応の手間がかかるが、それによって簡略化される手続きを考えれば、十分に価値はあるのかもしれない。
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