年末調整
(写真=Thinkstock/Getty Images)

12月中旬に入り、企業の総務や人事、経理の担当者にとっては年末調整の対応で非常に忙しい時期を迎えているだろう。年末調整でやらなければいけないのは、給与計算だけではない。税務署や市区町村に提出しなければならない書類があり、それぞれに期限があるのだ。

年末調整をおさらい なぜ会社でやらなくてはいけないの?

年末調整は、一言でいうと「サラリーマンのための確定申告簡易バージョン」だ。日本は、申告納税制度に則っているため、本来なら、日本国民全員、確定申告をしなくてはならない。

しかし、そのルールを完全に適用すると、個々人の税務申告の手間や時間の負荷がかかるだけでなく、税務署や市区町村においても、受付や確認の事務作業が膨大になってしまう。膨大な事務作業は、行政にとって、未納や滞納、脱税を見過ごすことにつながる。同時に、故意か恣意かを問わず、人は義務だと分かっていても自分の生命危機に関係のないことは後回しにする生き物だ。個人の意志力は行政にとってアテにならない。

そこで生まれたのが「源泉徴収制度」と「年末調整」である。サラリーマンの所得は、昭和の高度経済成長期を機に増え続け、2005年時点で所得者の84%超を占めるようになった。

そのサラリーマンに関する税金の事務作業を会社に義務付ければ、国にとって所得の捕捉は容易になり、税務行政をより効率的にかつ重点的に行うことができる。かくして、会社が役員や従業員の毎月の給与から所得税を多めに源泉徴収し、年末調整で本来徴収すべき税金を精算し還付するというサラリーマン版簡易確定申告システムが生まれたのである。

年末調整の書類や納付の期限とは

年末調整で取り扱う税金の種目は「所得税」と「住民税」の二つである(現在、復興特別所得税も所得税と併せて源泉徴収されている。ここでは所得税に含めて考えていく)。「年末調整は、毎月多めに徴収している所得税の精算作業だから、住民税は関係ないのでは?」と思う人もいるかもしれない。

個人の所得税計算上の所得額は、そのまま住民税計算上の所得額となるのだ。給与所得しかない場合には給与所得控除後の金額が、確定申告書を提出した人については、所得金額の合計額が住民税計算上のベースになる。

ただし、住民税は申告納税方式の所得税と違い、賦課課税方式だ。つまり、源泉徴収票や確定申告書を見ながら市区町村の税務課がその年度の住民税を計算し、各個人かその勤め先の会社に納付書を送付する形式となっている。年末調整に関係する作業の期限は、次のようになっている。

<12月>
12月給与:年末調整を含めた給与計算を行い、12月に支払う給与にて差額を還付または徴収する。

ここでポイントとなるのが「本年12月中に支払う給与で年末調整を行う」ということだ。

会社によっては「12月分給与は12月で締めて翌年1月10日に支払う」というところもあるだろう。しかし年末調整は、その年の1月1日から12月31日までに支払の確定した給与の総額について行う。これは12月についても同じで、慣習や社内ルールで支給日が決まっていれば、「支給日=支払の確定日」となり、そういった決まりがないものについては「支払を受けた日=支払の確定日」となる。
なお、未払給与も支払義務が確定しているため、年末調整の対象に含めて計算する。

多くの場合、この12月の給与にて、通常の給与明細に加えて給与所得の源泉徴収票(受給者交付用)を役員や従業員に渡す。

<1月>
1月10日:12月給与にて年末調整を加味して徴収した12月分の源泉所得税の納付日(原則納付)
1月20日:12月給与にて年末調整を加味して徴収した7~12月分の源泉所得税の納付日(特例納付)

源泉所得税は、原則として、毎月給与から徴収し、翌月10日までに納付することとなっている。しかし、給与の支給人員が常時10人未満である場合、事前に税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出すれば、所得税は7月と1月に半年分まとめて納付することができる。所得税及び復興特別所得税について、次のように年2回にまとめて納付できる。

1月31日:給与支払報告書…給与の支払いを受けた人の住所がある市区町村に送付
法定調書(※)及び法定調書合計表…源泉徴収義務者の所轄税務署に送付
※法定調書には、給与所得の源泉徴収票(税務署送付用)の他、不動産の使用料等の支払調書などがある。

給与支払報告書と給与所得の源泉徴収票は、中身は同じだが、タイトルと提出先が異なる。給与支払報告書は、市区町村に送られた後、住民税計算のベースとなる。この所得額を元に翌年度の住民税が計算され、6月以降、会社に送付される住民税の納付書が作成される。

法定調書として税務署に送付するのは、給与所得の源泉徴収票だけではない。会社の家賃の支払や顧問税理士や弁護士等の報酬支払や原稿料・講演料などの支払がある場合には、その旨を支払調書という報告書に記載し、併せて送らなくてはいけない。

これら法定調書は、他の個人の確定申告の内容が正しいかどうかを確認するために税務署が参照資料として利用する。たまに個人の確定申告や年末調整について税務署から問い合わせが行われるが、これら法定調書が裏付け資料として活用されていることが背景にある。

年末調整で提出し忘れた書類があった場合・年末調整後に修正事項が発生した場合

では、会社で社員にいくら促しても年末調整に必要な資料を出してもらえなかったり、あるいは年末調整が終った後から提出されたりした場合はどうしたらよいだろうか。年末調整後、社員が結婚し、専業主婦の妻を持ち配偶者控除の適用を受けるようになった場合や、同居の老親が年末に亡くなり扶養控除が一人外れた場合も、どうしたらよいのだろうか。

この場合、基本的には、原則に立ち返り、各個人で3月15日までに確定申告を行ってもらうように伝えた方がよいだろう。このとき、会社から本人に交付した、年末調整後の給与所得の源泉徴収票が確定申告書の提出の際に必要となる。

納付期限が1月10日または20日、書類の提出期限が1月末日なので、会社で再度年末調整をやり直してもよいが、場合によっては他の仕事にしわ寄せが行くこともある。会社や部署それぞれの事情を考慮して対応を決めていただきたい。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。外国人の在日起業の支援が中心。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。心理セラピーは、リトリーブサイコセラピストの大鶴和江氏に師事。カウンセリングやセッションの他、金銭に絡む心理を研究している。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。ブログ「 経済DV・母娘問題からの解放_セラピスト税理士のおカネのカラクリ

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