住宅の購入は、人生で最も大きな買い物だといわれている。ほとんどの人が、ローンを組んで購入するが、金額が大きいだけに家計にかなりの負担となる。しかし住宅ローン控除という制度を利用すれば、所得税から還付される。1円でも節約したい家庭には、かなりの助けになるだろう。

この記事では、住宅ローン控除の内容などについて、詳しく説明する。

井上 通夫
井上 通夫
行政書士。大学卒業後、大手信販会社、大手学習塾などに勤務後、福岡市で行政書士事務所を開業。現在、相続・遺言、民事法務(内容証明、契約書、離婚協議書等の作成)、公益法人業務、各種許認可業務など幅広く担当。

住宅ローン控除にまつわるQ&A

住宅ローン控除と
(画像=PIXTA)

Q


住宅ローンとは何か?

住宅ローンとは、本人やその家族、あるいは本人の家族が住むための住宅や付随する土地(敷地など)を購入したり、新築、増築、改築などをしたりする際に、金融機関から融資を受けることである。

住宅ローンとは、本人やその家族、あるいは本人の家族が住むための住宅や付随する土地(敷地など)を購入したり、新築、増築、改築などをしたりする際に、金融機関から融資を受けることである。


Q


控除される住宅ローンとは?

住宅ローンのすべてが控除されるわけではない。まず自分が居住する家がでなければならない。また工事の完成から6ヵ月以内に、住民票を購入した家の住所に移さなければいけない。さらに床面積が50㎡以上の広さがなければならない。

住宅ローンのすべてが控除されるわけではない。まず自分が居住する家がでなければならない。また工事の完成から6ヵ月以内に、住民票を購入した家の住所に移さなければいけない。さらに床面積が50㎡以上の広さがなければならない。


Q


控除されない住宅ローンとは?

住宅ローンでも、9年以下の「短期ローン」は、控除されない。借入期間が10年以上なければならない。住宅ローンの適用を受ける年の年収が3000万円を超える場合、それ以降の年は住宅ローン控除が受けられない。

住宅ローンでも、9年以下の「短期ローン」は、控除されない。借入期間が10年以上なければならない。住宅ローンの適用を受ける年の年収が3000万円を超える場合、それ以降の年は住宅ローン控除が受けられない。


 

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除とは、住宅ローンを借りてから初めの10年間は、年末時点での住宅ローンの残高の1%に相当する金額をその年の所得税から還付される、という制度である。

この制度が適用される要件は、2014年(平成26年)1月1日から2021年(令和3年)12月31日までにマイホームを新築、取得、増改築した場合である。

消費税10%の住宅を購入した場合、住宅ローン控除の期間が3年延長される。この特例が適用されるのは、2019年(令和元年)10月から2020年(令和2年)末までに、新たに住宅を購入した場合などに限られる。なお注文住宅では、2019年4月以降に契約した場合となる。

住宅ローンの対象

●対象となる住宅ローン

住宅ローン控除が適用されるためには、次のような条件がある。    1つ目は、マイホームとして住宅を取得することである。住宅の完成、あるいは引き渡しから6ヵ月以内に住むことが条件で、その証拠として住民票を住宅地に移さなければならない。つまり投資として購入した住宅や、購入者以外が住む住宅の場合は、適用外となる。   2つ目は、床面積が50㎡以上でなければならない。一戸建ての場合は各階の床面積の合計、マンションの場合は専有部分の床面積で判断される。

3つ目は、住宅ローンの借入期間が10年以上でなければならない。9年以下の短期ローンには適用されない。

4つ目は、住宅ローンの適用を受ける年の年収が3000万円以下でなければならない。たとえ1年でも3000万円を超えた場合、それ以降は住宅ローン控除を受けることができなくなる。

5つ目は、中古住宅の場合だが、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造などの耐火建築物では築年数25年以内、非耐火建築物では築年数20年以内でなければならない。これらの年数を超える物件を購入した場合には、耐震基準に適合していることを証明しなければならない。

6つ目は、増改築の場合だが、工事費は100万円以上でなければならない。100万円未満の増改築では、適用されない。

●対象とならない住宅ローン

中古住宅の購入で住宅ローン控除が適用されるケースを述べたが、以下の場合は、上述の築年数を満たしていても、以下の項目を1つでも満たしていなければ、適用されない。

(1) 中古住宅が次のいずれにも該当すること
・建築後に使用された住宅
・取得日以前25年以内に建築された耐火建築物か、取得日以前20年以内に建築された耐火建 築物以外の建物、いずれにも該当しない建物の場合には、一定の耐震基準に適合する住宅で あること(平成17年4月1日以後に取得をした場合に限る)
・生計を同じにしている親族・特別な関係のある人などからの取得ではない住宅
・贈与による取得でない住宅
(2) 取得の日から6ヵ月以内に住み、適用を受ける年の12月31日まで引き続き住んでいること
(3) 控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること
(4) 住宅の床面積が50㎡以上、床面積の2分の1以上が自分の居住用であること
(5) ローンの返済が10年以上あること
(6) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと

住宅ローン控除でいくら戻ってくるのか?

●住宅ローン控除額の計算

住宅ローン控除では、返済期間の10年間は、年末の時点でのローン残高に対する1%が所得税から 控除される。ただし確定申告時に還付される金額は、契約者によって異なる。これは、個々の所得額によって納税額が異なったり、購入したマイホームの条件によって税額が違ったりするからである。

住宅ローン控除では、毎年最大で40万円(認定住宅の場合は最大50万円)、10年間で最大400万円(認定住宅の場合は最大で500万円)が還付される。しかし申告者がすべて最大の控除額が還付されることはない。

最大の控除額を受け取るには、ローンの残高が10年間の各年末の時点で4000万円を超えており、 さらに年間の所得税と住民税の合計が40万円を超えていなければならない。

以下に、具体的な数字で示してみる。

控除額は、年末時点での住宅ローン残高に対して1%をかけることで算出できる。また、最大の控除額は40万円だ。この2つの金額のうち、小さいほうが控除額となる。

例えば、Aさんの年末のローン残高が3000万円の場合、「3000万円×1%=30万円」となる。この30万円と40万円を比べた場合、30万円のほうが小さいので、Aさんに適用される住宅ローン控除額は30万円ということなる

一方、Bさんの年末のローン残高が5000万円の場合、「5000万円×1%=50万円」となる。この50万円と40万円を比べた場合、40万円のほうが小さいので、Bさんに適用される住宅ローン控除額は40万円ということなる

●戻ってくる還付金額

ここでは、還付される額を具体的な数字で説明する。

例えば、Cさんが本来納めるべき所得税が10万円、住民税が15万円だったとする。つまり、「10万円+15万円=25万円」の税金を納めたことになる。まず押さえておきたいことは、この25万円を超えた金額が還付されることはない、ということである。    還付される金額について、所得税に上限はないが、住民税の上限は13万6500円だ。したがって て、Cさんに還付される金額は、「10万円+13万6500円=23万6500円」となる。

Cさんの年末におけるローン残高が3000万円の場合、計算上は「3000万円×1%=30万円」が控除額だが、住民税の上限があるため、Cさんの場合は、30万円よりも低い23万6500円が還付される。

住宅ローン控除の流れ

住宅ローン控除は、確定申告の中で行うことになる。これによって、所得税が還付される。

実際の手続きは、控除を受ける1年目と2年目以降で異なるが、詳細は後で詳しく説明する。

申請の時期

個人事業主などの場合、住宅ローン控除は、毎年行っている確定申告の中で行うことになる。

会社員などの給与所得者の場合は、控除の適用を受ける1年目は、自分で確定申告書を提出しなければならない。2年目以降は、会社の年末調整によって、住宅ローン控除の適用を受けることができる。

この場合、税務署から送付される「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出しなければならない。

申請に必要な書類

上述したように、住宅ローン控除の適用を受ける手続きは、控除を受ける1年目と2年目以降で異なってくる。

個人事業主などの場合、1年目は必要事項を記載した確定申告書に、以下の必要書類を添えて、住所地を管轄する税務署に提出しなければならない。

2年目以降は、必要事項を記載した確定申告書に、次の(1)のイの「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」、次の(1)のロの「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添えて税務署に提出しなければならない。

会社員などの給与所得者は、1年目は、上述のとおり確定申告書を提出しなければならないが、2年目以降は、年末調整で住宅ローン控除の適用を受けられる。この場合、税務署から送付される「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」・「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を勤務先に提出しなければならない。

借入金に敷地が含まれているか否かによって、提出書類は次のようになる。

(1)敷地の取得について借入金がない場合

イ 「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」

ロ 「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
※ 平成27年分以前の申告では、控除を受ける人の住民票の写し(マイナンバーが記載されていないもの)も必要である。

ハ 家屋の登記事項証明書、請負契約書の写し、売買契約書の写し等で、次のことを明らかにする書類
(イ) 家屋の新築又は取得年月日
(ロ) 家屋の取得対価の額
(ハ) 家屋の床面積が50㎡以上であること
(ニ) 家屋の取得等が特定取得、または特別特定取得に該当する場合には、その該当する事実(平成26年分以後の居住分に限る)

※なお、住宅の取得で補助金の交付を受けている場合は、補助金の額を証する書類、住宅取得  資金の贈与の特例の適用を受けている場合は、住宅取得等資金の額を証する書類の写しも 添付しなければならない。

(2)敷地の取得について借入金がある場合

上記(1)で掲げた書類に以外に次の書類が必要である。

イ 敷地の登記事項証明書、売買契約書の写し等で敷地の取得年月日・取得対価の額を明らかにする書類
※住宅の敷地の取得に関し補助金の交付を受けている場合は、交付を受けている補助金の額を証 する書類、住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けている場合は、その特例に係る住宅取得等 資金の額を証する書類の写しも添付しなければならない。

ロ 敷地の購入に係る住宅借入金が、次の(イ)~(ハ)のいずれかに該当する場合は、それぞれに掲げる書類
(イ)家屋が新築される前の日から2年以内に購入した敷地について、借入金が発生した場合は、次のⅰかⅱの別に応じて、それぞれに掲げる書類が必要である。
ⅰ 金融機関、地方公共団体又は貸金業者からの借入金
家屋の登記事項証明書などで、家屋に一定の抵当権が設定されていることを明らかにする書類(上記(1)のハの書類により明らかにされている場合は不要)
ⅱ 上記以外の借入金

家屋の登記事項証明書などで、家屋に一定の抵当権が設定されていることを明らかにする。

(上記(1)のハの書類により明らかにされている場合は不要)、または貸付け、あるいは譲渡の条件に従って、一定期間内に家屋が建築されたことをその貸付けをした人、またはその譲渡の対価に係る債権を有する人が確認した旨を証する書類

(ロ) 家屋が新築される前の日から3ヵ月以内に建築条件付きで購入した敷地について、借入金が発生した場合は、敷地の分譲に係る契約書の写しなどで、契約において3ヵ月以内の建築条件が定められていることなどを明らかにする書類(イの書類で明らかにされている場合は不要)

(3)認定住宅の新築等について、住宅借入金等特別控除の特例を適用する場合

上記(1)または(2)に該当する場合の書類以外に、次の区分に応じたそれぞれの書類が必要である。

イ 認定長期優良住宅
(イ)その家屋に係る長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し
なお、長期優良住宅建築等計画の変更の認定を受けた場合は、変更認定通知書の写し、認定 計画実施者の地位の承継があった場合には、認定通知書及び地位の承継の承認通知書の写しが必要である。
(ロ) 住宅用家屋証明書、あるいはその写し、または認定長期優良住宅建築証明書

ロ 低炭素建築物
(イ)その家屋に係る低炭素建築物新築等計画の認定通知書の写し
なお、低炭素建築物新築等計画の変更の認定を受けた場合は、低炭素建築物新築等計画変更認定通知書の写しが必要である。
(ロ) 住宅用家屋証明書若しくはその写し又は認定低炭素住宅建築証明書

ハ 低炭素建築物とみなされる特定建築物
  特定建築物用の住宅用家屋証明書

申請書類の記載方法

確定申告書よりも先に、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を記入したほうが、効率的である。

まず「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」には、以下の項目を記入する。

「新築又は購入した家屋等に係る事項 」の欄
・居住開始年月日:入居日を記入する。
・取得対価の額:契約書を見て記入するが、建物は消費税込み、土地は消費税が非課税である。
・総(床)面積:登記事項証明書を元に記入する。
・うち居住部分の(床)面積:事務所などとして使用している部分がなければ「100.00」である。

「家屋や土地等の取得対価の額」の欄
・あなたの持分に係る取得対価の額等:共有者がいなければ、「取得対価の額」と同じものを記入する。

「居住用部分の家屋又は土地等に係る住宅借入金等の年末残高」の欄
・新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高:「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を見て、記入する。
・(2)と(5)のいずれか少ないほうの金額:「あなたの持分に係る取得対価の額等」と「新築、購入及び増改築等に係る住宅借入金等の年末残高」の少ないほうの額を記入する。諸経費の分などを含めて借り入れている場合は、住宅ローン控除の対象となるのは取得金額までである。

「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額」の欄
・同計算明細書二面の該当する計算式を基に、番号と二面に記入した計算に基づいて「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額」を記入する。

「控除証明書の要否」の欄
・欄に〇をつけると、控除証明書が税務署から発行され、翌年から年末調整での対応が可能となる。

次に、「確定申告書」を以下のように記入する。

確定申告書(A・Bともに)の第一表には、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を元に、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額」を記入する。

第二表の「特例適用条文等」の欄には、例えば2019年(令和元年)4月1日の住宅の取得は消費税が8%の「特定取得」に該当するので、「令和元年4月1日居住開始(特定)」と書きます。長期優良住宅や低炭素住宅の場合には、「令和元年4月1日居住開始(特定)」の前に〇で囲んだ「認」の文字をつける。

なお、「特定取得」とは、住宅を新築・購入・増改築した際にかかった費用の消費税額等(消費税額と地方消費税額の合計額)が8%、または10%だった場合のことである。最新の特定取得に該当する期間は、2014年4月1日~2019年6月30日までに住宅を購入した場合である。

「確定申告書」と「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」は、税務署で入手できる。また、国税庁のホームページに「確定申告等作成コーナー」があり、パソコンで数字を入力し、そのまま送信することで、手続きが完了する。

申請のための事前準備とは?

申請書を作成するためには、まず住宅ローンの契約書が必要だ。また住宅の登記事項証明書も土地寄せる必要がある。登記事項証明書は、全国の法務局で入手できるが、パソコンで申請し、郵送してもらうことも可能である。

この2つの書類があれば、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「確定申告書」の作成ができることになる。