本記事は、桑原 晃弥氏の著書『不可能を突破する 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

野球
(画像=103tnn / stock.adobe.com)

焦らないようにはしていません。
焦ることはいいことだと思ってますし、やらなすぎるよりは、やりすぎるくらいのほうがいいかなと思っているので

―― 『 野球翔年Ⅱ MLB編 2018- 2024 大谷翔平 ロングインタビュー』

大谷翔平がしばしば口にしているのが「時間がない」「時間が足りない」です。大谷が日本ハム時代から目指しているのは、ホームランを何本打ちたいとか、ヒットを何本打ちたいではなく、野球に関するすべての技術を身に付けることです。もちろんすべてができるのは、大谷も言うように「野球の神様」だけですが、大谷自身、可能な限り多くの技術を身に付け、できるだけ長く野球をやりたいと願っています。

とはいえ、プロ野球選手の選手寿命はそれほど長いものではありません。もちろん最近では40代後半まで現役を続ける選手もいますが、それでも長くて20年余り、そのうちのピークと言える時期は5年〜10年といったところでしょうか。プロ野球選手になって8年が過ぎた2020年オフ、大谷は「焦りを感じたことはありませんか?」と聞かれ、こう答えています。「プロに入ってからは、時間がないな、ということしかないんです。やりたいことに対しての時間が圧倒的に少ないなって。でも、焦らないようにはしていません。焦ることはいいことだと思ってますし、やらなすぎるよりは、やりすぎるくらいのほうがいいかなと思っているので」アップルの創業者スティーブ・ジョブズがこんな言葉を口にしていました。

「この地上で過ごせる時間には限りがあります。本当に大事なことを本当に一生懸命できる機会は、2つか3つくらいしかないのです」

その言葉通りジョブズはマッキントッシュやiPod、iPhone、iPad、ピクサーの創業に関与するなどたくさんのイノベーションを起こし、56歳で亡くなっています。

生き急ぐわけではありませんが、大谷もいつも持てる時間を目一杯野球のために使っていました。と同時に「打って、投げて、走って、勝つ」ことをいつも追い求めていました。そんな大谷にとって、エンゼルスは「温かいチーム」ではあっても、勝てるチームではありませんでした。

FAとなり、ドジャースを選んだ理由を大谷は「僕があと何年、現役選手でいられるかはわかりませんが、だからこそ勝つことを最優先にしているのです」と話していましたが、その言葉通り大谷は自らを成長させることと、チームの勝利のために持てる時間のほとんどを費やすのではないでしょうか。

ワンポイント
成果を挙げたいのならのんびりしている暇はない。焦れ、貪欲であれ。

ケガをしないようにやめておくか、ケガをするかもしれないけれど出るか、そこをどう考えるかというのは個人個人で違っていいと思うんです。
僕はそこについては、一年一年、出し切ることを一番に考えています

―― 『 野球翔年Ⅱ MLB編 2018- 2024 大谷翔平 ロングインタビュー』

2024年は大谷翔平にとって打者としての頂点を極めた年と言えるかもしれません。54本塁打、59盗塁により、MLB史上初の「50−50」を達成し、DH専念の打者として初めてのMVPを獲得します。さらにドジャースはワールドシリーズで優勝と、大谷自身の長年の目標が実現した年でもありました。

一方、2025年はドジャースにとってワールドシリーズの連覇がかかっているとともに、大谷にとっては再び二刀流への挑戦が始まる年でもありました。9月18日時点でドジャースはライバルのパドレスと首位争いを演じ、大谷はホームラン51本と順調に本数を伸ばしますが、投手としては41イニングを投げ、1勝1敗の成績です。三振は54個奪い、史上初の「50本塁打50奪三振」を達成しています。

投手としてはまだリハビリ中であり、成績自体はまだまだですが、ファンや周囲が心配するのは、投打二刀流を続けることで大谷の疲労が大きくなり、ケガのリスクが高まることや、バッティングへの悪い影響がなければいいがという点です。

2025年と同じく、肘の靭帯の手術を経て、二刀流として再始動する2021年シーズンを前に、大谷は1年間ローテーションを守り、バッターとしても登板前の休みを除いてすべての試合に出たい、という覚悟を示します。投げて、打つという身体に大きな負担のかかる二刀流でほぼフル出場を目指すのはケガのリスクもあるわけですが、大谷はこう言い切っています。

「ケガをしないようにやめておくか、ケガをするかもしれないけど出るか、そこをどう考えるかというのは個人個人で違っていいと思うんです。僕はそこについては、一年一年、出し切ることを一番に考えています。出し切ったうえで、できる限りの体調管理をしながら長く続けるというのが、僕がプロとして大事にしたいところですから」

大谷はエンゼルスでの1年目、投手として4勝を挙げ、22本のホームランを打ち、新人王を獲得していますが、その経験から「出し切ったときにはできるし、自分の力を出せなかったときには絶対にごまかせない」ということを痛感します。

ケガを恐れて力をセーブするようではプロとして期待される以上の成績を挙げることはできません。大谷が追い求める期待を上回る成績を挙げるためには、体調管理を含め、常に試合で力を出し切るためにどうすればいいかを考え、実行することなのです。

ワンポイント
力は出し惜しみすると伸びないが、常に全力で出し切ると成長できる。
『不可能を突破する 大谷翔平の名言』より引用
桑原 晃弥(くわばら・てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『大谷翔平の言葉』(リベラル社)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『逆境を打ち破る イチローの名言』『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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