本記事は、桑原 晃弥氏の著書『不可能を突破する 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

自信
(画像=Who is Danny / stock.adobe.com)

期待は応えるものじゃなくて、超えるもの

―― 『大谷翔平 野球翔年Ⅰ』

大谷翔平が2023年12月にロサンゼルス・ドジャースと契約した理由は10年総額7億ドルという史上最高額(2023年時点)の契約以上に、6年間果たすことのできなかったポストシーズンに進出してワールドシリーズで優勝することでした。

それはドジャースが何より大谷に求めていることでもありました。2021年と2022年の2シーズン、ドジャースは106勝、211勝という圧倒的な勝ち星を挙げながら、いずれも第1次ラウンドで敗退するという「大失敗」を犯していました。編成本部長のアンドリュー・フリードマンはこの事態について「われわれは10月に11勝するのが目標なのに、今回は1試合も勝っていない。だからわれわれは根本的な何かを見直し、どうすれば事態を改善できるのか、今後対策をとることになる」と話していました。

ドジャースにとって年間100勝するとか、地区優勝は「やって当たり前」のものにすぎず、「ワールドシリーズで勝てなかったらそれは惨敗」になるというのです。そのための改善策に選ばれたのが大谷の獲得でした。プレーオフに辿り着くことはできても、そこで勝ちきれないチームを一段上に持って行くこと、それが大谷に課せられた使命でした。

大きすぎる期待ですが、大谷は「唯一求められる結果は、ワールドシリーズ優勝だということです」と覚悟を示したうえで、こうも話しています。

「期待してもらってドジャースに入って、期待通りの結果を残せるか。それがプレイヤーとして信頼を得る唯一の方法ですから、僕に必要なのは10年後よりもまず、今年の結果で示していくことじゃないですかね」

ドジャースへの入団が決まった時、大谷には大きな期待の一方で、リーグが変わったことで新しい投手との対戦が増えること、投手としてのリハビリ期間であること、さらには大谷のワンマンチーム的なエンゼルスと違って、ドジャースにはすごいバッターがたくさんいるうえに名門球団のプレッシャーもあり持てる力が十分に発揮できないのでは、という不安の声があったのも事実です。

しかし、大谷はそんな不安をすべて払拭、MVPに輝くとともに、チームの世界一に貢献します。大谷が高校時代から大切にしてきた言葉に「期待は応えるものじゃなく、超えるもの」がありますが、ドジャース1年目の大谷の活躍はまさに「期待を大きく超えるもの」であり、たしかな信頼を得るものでした。

ワンポイント
周囲の信頼を得る方法は期待に応えること。そして期待は超えるもの。

僕はもっと挑戦したい。
僕はこのドジャースでさらに新しくて大きな難題に直面するでしょうし、直面したいです。
僕はもう覚悟しています

―― 『SHO-TIME 2. 0』

進学や就職などでこれまでとは違う環境に移る時には誰でも不安を感じるものです。「はたしてうまくやっていけるのだろうか」「嫌な人がいたらどうしようか」などと考えるものですが、そうではなく「これからもっといろんなことができるんじゃないか」と期待に胸を膨らませる人もいます。

大谷翔平はプロ野球の世界に入る時も、MLBに移籍する時も、いつもわくわくしていたといいます。大谷は中学1年生の水沢リトルリーグ時代に初めて「全国」と名の付く大会に出場していますが、全国にはもっとうまい選手がいるはずだと思っていました。全国にはもっとすごい選手がいて、そんな選手たちとの戦いを通して、「もっとうまくなりたい」というのが大谷の思いでした。

大谷によると、知らない場所は行ってみないと分からないし、そこでやってみないと自分の本当の実力も分かりません。そこに行ける自分がとても楽しいし、ワクワクする、というのが大谷の変わらぬ考え方でした。

大谷のエンゼルスでの6年間は2度のMVPに輝くなど素晴らしいものでした。特に2021年からは投打の二刀流として、9勝して46ホームラン、15勝して34ホームラン、10勝して44ホームラン(本塁打王)を記録と、「これ以上はない」という数字を残しています。

ところが、こうした大谷の数字に関して野球関係者の中には「エンゼルスという弱小チームだからできたことだ」「ヤンキースのような名門チームに行ったらこんな活躍はできない」という見方をする人がいたことも事実です。たしかにヤンキースやレッドソックス、あるいはドジャースのような歴史のある名門球団で、常に勝つことが求められるチームでは、エンゼルスほど大谷の自由にはなりません。当然、数字は落ちると思われていましたが、大谷はドジャース入団にあたり、こう話していました。

「僕はもっと挑戦したい。僕はこのドジャースでさらに新しくて大きな難題に直面するでしょうし、直面したいです。僕はもう覚悟しています」新しい場所に行くことは、時に失敗や挫折につながり、時に自分の力のなさを教えられることもあるわけですが、それは成長するための課題が見つかったということでもあります。「大きな課題に直面したい」と語る大谷だからこそどこまでも成長できるのです。

ワンポイント
新しい挑戦は困難ももたらすが、そこを乗り越えることでさらに成長できる。
『不可能を突破する 大谷翔平の名言』より引用
桑原 晃弥(くわばら・てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『大谷翔平の言葉』(リベラル社)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『逆境を打ち破る イチローの名言』『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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『不可能を突破する 大谷翔平の名言』
  1. 契約にサインした瞬間から、この舞台にいる絵を思い浮かべてたーー大谷翔平の名言
  2. 期待は応えるものじゃなくて、超えるものーー大谷翔平の名言
  3. 先入観は可能を不可能にするーー大谷翔平の名言
  4. 今がゴールだという感覚はない。もっと先があると思っているーー大谷翔平の名言
  5. 焦ることはいいことだと思ってるし、やりすぎるくらいのほうがいいかなーー大谷翔平の名言
  6. 睡眠は、僕にとっての最優先事項ですからーー大谷翔平の名言
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