本記事は、桑原 晃弥氏の著書『不可能を突破する 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
1度やってできたからといって、今年もできる保証はありませんからね。
自分がもっと上に行ってやっと同じくらいの数字になると思っています
―― 『Number 』1094・1095
ビジネスの世界に「現状維持では、後退するばかりである」という言葉があります。業績が順調だと、つい「今のままで大丈夫」と安心しがちですが、競争の激しい社会では、現状維持はやがて後退につながることになるのです。
大谷翔平は2021年から2024年までに2度のホームラン王と3度のMVPを獲得しています。2025年も前年と変わらないどころか、前年を上回るほどのペースでホームランを打ち、得点を重ねています。
5年もの間、これほどの活躍を続けるのは驚くべきことであり、「いずれ失速すると思っていた」という関係者も少なくありませんでした。MLBの競争は激しく、大谷が活躍すればするほど、大谷を攻略するための研究も進みます。実際、MLBに上がったばかりの選手がスタート時には素晴らしい成績を挙げたにもかかわらず、途中から失速するのは相手チームの研究が進んだ影響もあります。
そんな厳しさを知るだけに、大谷は「1度やってできたからといって、今年もできる保証はありませんからね。メジャーのピッチャーの球は強くなる一方なので、自分がもっと上に行かないと。上に行ってやっと同じくらいの数字になると思っています」と話していました。
それは投手・大谷についても同様です。MLBには100マイルを超えるボールを投げる投手が何人もいますが、彼らは100マイルを投げつつ、一方でデータを駆使して変化球にも磨きをかけています。
同様に大谷も投手として復帰後、安定したピッチングを展開していますが、それができるのは「100マイルだけを投げるのではなく、100マイルも投げられる」からだといいます。これもリハビリ期間を経ての大いなる進化です。
去年どんな素晴らしい成績を挙げたとしても、「去年できたんだから、今年も去年と同じようにやれば、同じくらいの成績が残せるだろう」という甘い考えでいたら、あっという間に成績は下降します。キツいけれども、常に研究や練習を怠らず、自分をアップデートさせ、更新し続けていかなければならないというのが大谷の考え方です。
大谷が5年にわたってMLBのトップでいられるのは、MLBに移って以降、常に進化し続けてきたことの証なのです。
- ワンポイント
- 現状維持は後退と同じ。現状に満足することなく、常に「より良く」を追い求める。
毎年、技術的には伸びてきているとは思っています。
でも、今が技術的にも体力的にもゴールだという感覚はありません。
もっと先があると思っています
―― 『Number 』1116
プロ野球選手のピークがいつなのかは人によって違いがありますし、投手か野手かによっても違いがあります。それでもしいて言えば野手の場合は27歳とか28歳あたりにピークが来て、チームの核として活躍するのが30代前半、投手はもう少し早いと言われています。
大谷翔平は早い時期から「世界一の野球選手になりたい」と願い、「50代まではやりたいですね」と話していました。こう言っています。
「野球はできるだけ長くやりたいし、できる限りの成績を残したいし、そのために毎日毎日、今のうちから基礎体力をつけて、なるべくそれが落ちないようにやっていきたい。現役選手なら誰でも普通にそう考えると思いますが、僕もそういう選手でありたいと思っています」
とはいえ、長く現役であり続けるためには、成績も長く一流であることが欠かせません。2023年7月、29歳になった大谷は自らのピークについて「自分の計算の中ではもうピークは始まっていると思っている」と言い切っていました。
たしかに数字を見ればそれも頷けます。この年、大谷は投手として10勝を挙げ、打者としても44本のホームランを打ち、本塁打王に輝いています。その後、靭帯の手術のため、投手としてはリハビリに専念することになりますが、翌24年には54本のホームランを打ち、やはり本塁打王に輝きますし、25年も9月半ばで既に50本以上のホームランを打っています。
ピークは続いているようです。大谷は自分のバッティングについてこう話しています。
「毎年、技術的には伸びてきているとは思っています。でも、今が技術的にも体力的にもゴールだという感覚はありません。もっと先があると思っています」
現在の数字でさえMLBのトップレベルにあるわけですが、大谷は「フィジカルで強さを出せないと納得のいく動きができません。30代後半になっても、20代を超えるフィジカルを作っていく気持ちは失いたくない」とさらなるフィジカルの強化と、進化する技術の習得に余念がありません。できるだけ長く現役であるだけでなく、長く一流であり続けるためには、技術と体力に加え、どれほどの成績を残しても、「もっと」と追及する強い意志が必要なのです。
- ワンポイント
- どれほどの成果を挙げても、「もっと先がある」と歩み続ける。
いろいろとやってきたことがこうして形になってくれているのが何よりも嬉しいし、励みになっています
―― 『Number 』1111
大谷翔平は2025年も素晴らしい活躍を見せていますが、2024年の大谷の成績は史上初(50本塁打50盗塁)やキャリアハイ(54ホームラン、打率0.310、OPS1.036)が続出する圧倒的なものでした。
『Number』の記者からこれほどの成績を挙げたことの感想を求められた大谷は、こう答えています。
「いくつもの要素があって、ここまで来ました。いろんな選手を見て、いいところを自分の中に取り入れようとして、ドライブラインで理想の形を模索して。いろいろとやってきたことがこうして形になってくれているのが何よりも嬉しいし、励みになっています」
大谷の特長の1つは、「絶えず変化を求め、変わることを恐れない」ところにあります。個人に限らず、企業などが変化を恐れるのは、失敗への恐怖からです。今がどん底なら、「変えるしかない」となりますが、今が順調であればあるほど「変えて失敗したらどうしよう」となり、つい「今までと同じやり方」を続けようとします。
一方、大谷はこう考えます。
「何も変わらないより、何かを変えていった方がいい。何も変わらなかったら、前の年と同じ結果になる可能性は高いですし、変化を求めていった方が僕は楽しい」
日本ハムファイターズ時代も大谷は夜、何かひらめくことがあると、すぐに練習場に行ってひらめいたことを試していました。やってみて良ければ取り入れるし、ダメならやめればいいのです。エンゼルスに移籍してからは、3歳年上で、MLBを代表する打者だったマイク・トラウトの姿勢に強い影響を受けます。
大谷によると、トラウトは打席が終わる度にベンチでコーチと「ああでもない、こうでもない」とバッティングについて議論を交わしていました。当時のトラウトの成績から見れば、変える必要などないはずですが、トラウトはもっと上を目指し、仮に一時的に調子を落としたとしても、何かを変えることに貪欲でした。
大谷はあらためて「変えることの大切さ」を認識します。そんな日々の積み重ねがあってこそ大谷の2024年、そして2025年があるのです。変えることにはいつだって怖さもありますが、変えることで大きく成長できたなら、最高に嬉しいものです。大谷は学び続け、変わり続けることで今日の成果を手にすることができたのです。
- ワンポイント
- 成長したいなら日々学び続け、変わり続けよう。
著書に『大谷翔平の言葉』(リベラル社)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『逆境を打ち破る イチローの名言』『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』(以上、ぱる出版)などがある。
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