本記事は、桑原 晃弥氏の著書『不可能を突破する 大谷翔平の名言』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

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(画像=sutadimages / stock.adobe.com)

先が見える戦いかどうかがモチベーションにつながるんだ、
ということは改めて思い知らされましたね

――『Number 』1111

大谷翔平は大リーグに移籍してからの6年間はワールドシリーズどころかポストシーズンにさえ縁のないシーズンを過ごしています。ロサンゼルス・エンゼルスに入団して4年目の2022年、大谷は投手として15勝、打者としても34本塁打と、ベーブ・ルース以来の2桁勝利2桁本塁打を記録しますが、チームは大谷が在籍中、6年連続の負け越しとなります。大谷はこんな言葉を口にします。

「すごく辛いですよ。がっかりしています。毎年、最後はプレーオフに進出したいと思ってやっているわけですから」

さらにチームもファンも好きだが、「それ以上に僕は勝ちたい」と移籍願望ともとれる言葉も口にしています。「ポストシーズンのヒリヒリするような試合」こそが大谷の望みでした。それはエンゼルスの同僚マイク・トラウトも同様でした。

トラウトは早くに頭角を現し、将来の殿堂入りも確実視されるほどの選手でしたが、ポストシーズンには2014年の1度しか出場しておらず、ワールドシリーズには一度も出たことがありません。

一方、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)でチームメイトとなったムーキー・ベッツは2024年の世界一を含め3度の世界一を経験しています。WBCの戦いを終えたトラウトはベッツに「ああいう舞台で野球がしたい」と話したといいますが、それほどに世界一の戦いに加わるか加わらないかは大きな違いなのです。

ドジャースに移籍した1年目、大谷は地区優勝争いを繰り広げる9月に驚異的な成績を挙げていますが、それを可能にしたのは「先が見える戦い」がもたらした高いモチベーションでした。エンゼルス時代の9月は目標のない戦いの日々だけに、「残りの20試合ってやたら長くて、2カ月くらいに感じるんです」と振り返っていました。

チームやファンのために頑張ろう、どんな状況でもプロとして成績を出そうという気持ちがあったとしても、そこにポストシーズンという目標があるかないかでは大きな差が出るのでしょう。反対にドジャースでの1年目はまさにすぐそこにある優勝を目指す、充実した日々だったのです。はっきりとした目標があること、それは高いモチベーションにつながるものなのです。結果を出すのは簡単ではありませんが、そこにチームとしての明確な目標が加わると、確実に頑張る力となるのです。

ワンポイント
チームの目標と個人の目標のベクトルが合うと大きな力になる。

やっと僕はこの舞台に辿り着けました。
あの契約にサインした瞬間から、この舞台にいる絵を思い浮かべていました

――『SHO-TIME 3. 0』

大谷翔平にとってワールドシリーズでの優勝は高校生の頃から夢見てきた舞台でした。それを目指して23歳でMLB(メジャーリーグベースボール)のエンゼルスに入団しますが、残念なことに大谷がどれほど活躍してもチームはポストシーズンにさえ出場することができませんでした。そんな大谷の悔しさと、ワールドシリーズにかける思いを感じさせるエピソードがあります。

大谷は2021年10月、MLBから、コミッショナー・ヒストリック・アチーブメント・アウォード(コミッショナー特別表彰)を受賞するために、ワールドシリーズが行われるテキサス州ヒューストンのミニッツメイドパークを訪れています。

同賞はMLBで大きな意義のある偉業を成し遂げた選手や球団に贈られるもので、過去には2004年にシーズン最多安打を記録したイチローのほか、カル・リプケンJr.、デレク・ジーターなど15人と1球団が受賞しています。

マンフレッド・コミッショナーが就任してからは大谷が初の受賞となりますが、コミッショナーはシーズンを通して二刀流として活躍した大谷の偉業をたたえました。受賞会見の後、大谷はアトランタ・ブレーブス対ヒューストン・アストロズの戦いを観戦しますが、最後まで見るのではなく、途中で退席しています。理由はこうです。

「プレーしてみたいなって思いましたけど、でもなんだか上から見てるのが変な感じだったので、途中で帰っちゃいました」

大谷にとって、ワールドシリーズは観客席から見るものではなく、グラウンドで戦うものだったのです。一方、2022年、23年と続けてポストシーズンの最初の舞台で敗れ去るという屈辱を味わってきたドジャースにとって大谷の加入は地区優勝というよりは、ポストシーズンを勝ち抜き、ワールドシリーズでの優勝を手にするためのカードでした。当然、大谷にかかる期待やプレッシャーは相当なものですが、大谷は「シーズン後半に入っていくと、もっと楽しくなると思いますよ」とプレッシャーさえも楽しんでいました。

結果、大谷は期待以上の活躍を見せ、見事にチームを地区優勝、そしてリーグ優勝に導き、名門ニューヨーク・ヤンキースとのワールドシリーズが決定します。大谷は「やっと僕はこの舞台に辿り着けました。あの契約にサインした瞬間から、この舞台にいる絵を思い浮かべていました」という感想を口にします。大谷にとってそこはまさに「夢の舞台」だったのです。

ワンポイント
夢を持ち続け、その実現に向けて努力し続ける。
『不可能を突破する 大谷翔平の名言』より引用
桑原 晃弥(くわばら・てるや)
1956年、広島県生まれ。経済・経営ジャーナリスト。慶應義塾大学卒。業界紙記者などを経てフリージャーナリストとして独立。トヨタ式の普及で有名な若松義人氏の会社の顧問として、トヨタ式の実践現場や、大野耐一氏直系のトヨタマンを幅広く取材、トヨタ式の書籍やテキストなどの制作を主導した。一方でスティーブ・ジョブズやジェフ・ベゾス、イーロン・マスクなどの起業家や、ウォーレン・バフェットなどの投資家、本田宗一郎や松下幸之助など成功した経営者の研究をライフワークとし、人材育成から成功法まで鋭い発信を続けている。
著書に『大谷翔平の言葉』(リベラル社)、『限界を打ち破る 大谷翔平の名言』『逆境を打ち破る イチローの名言』『藤井聡太の名言』『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』『自己肯定感を高める、アドラーの名言』(以上、ぱる出版)などがある。

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『不可能を突破する 大谷翔平の名言』
  1. 契約にサインした瞬間から、この舞台にいる絵を思い浮かべてたーー大谷翔平の名言
  2. 期待は応えるものじゃなくて、超えるものーー大谷翔平の名言
  3. 先入観は可能を不可能にするーー大谷翔平の名言
  4. 今がゴールだという感覚はない。もっと先があると思っているーー大谷翔平の名言
  5. 焦ることはいいことだと思ってるし、やりすぎるくらいのほうがいいかなーー大谷翔平の名言
  6. 睡眠は、僕にとっての最優先事項ですからーー大谷翔平の名言
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