You Tuber,扶養控除
(写真=Thinkstock/Getty Images)

2016年は動画ブームの1年だった。YouTubeでブレイクし、月収100万円を大きく上回るような若者も出現するほどだ。サラリーマンの皆さんは、この現象を「メディアの中の出来事」としてかたづけてはいけない。高校生や大学生の子どもをお持ちの方は、その子にちょっと確認してみる必要があるだろう。なぜなら、我が子がYou Tuberで稼いでいたら、年末調整で扶養控除が使えなくなるかもしれないからだ。

おさらいしよう。「扶養控除」とはどんな制度?

扶養控除とは、その年の所得が合計38万円以下の同一生計親族がいる場合、適用が受けられる所得控除制度だ。扶養親族1人につき38万円の控除が受けられる。「同一生計」というのは、必ずしも一つ屋根の下に同居している必要はなく、別居でも仕送りなどで実質扶養状態にある場合にはこの控除制度の適用を受けることができる。ただし、同一生計でも、納税者が事業主で、子どもがその事業の専従者であり、その専従者控除の適用を受けている場合には、扶養控除の対象から外れることになる。

高齢の親族が扶養控除の対象となる場合、年齢制限は特にないが、子どもや孫など、年少者を扶養している場合は注意が必要だ。2010年度税制改正により、対象者はその年の12月31日時点で16歳以上23歳未満の親族のみが対象となった。また、19歳以上23歳未満の扶養親族については、税務上「特定扶養親族」として扱われ、通常の扶養控除額38万円にプラス25万円を上乗せして合計63万円が一人当たりの控除額となる。適用税率が10%の場合には年間6万3千円、20%の場合には12万6千円と、節税額は大きい。大学や専門学校は様々ある学校の中で特にお金がかかるもの。教育費の負担の大きい日本の家庭にとってはありがたい制度だといえるだろう。

こういう場合、扶養控除は使えない

しかし、高校生や大学生、専門学校生の子どもがいれば自動的に扶養控除が受けられるわけではない。繰り返しになるが、要件の一つは「その扶養親族の年間合計所得が38万円以下」であることだ。もし、我が子がバイトやアフィリエイト、You Tuberなどで収入があり、その年間所得額が38万円を超えるのであれば、扶養控除の対象から外れることになるのである。

ちなみに、これは年少の扶養親族に限った話ではない。高齢の扶養親族についても同じことが言える。つまり、納税者の実の両親や義両親が、引退後、何らかの起業をして所得額が38万円を超えている場合にも、扶養控除の対象から外れることになる。

扶養控除になるかどうかの判定方法

自分の子や孫といった親族が扶養控除の対象となるか否かの判定をするためにはどうしたらよいのだろうか。ここでポイントとなるのが「所得」の考え方だ。所得とは基本的に「利益」、つまり「収入-支出=利益」の部分を指す。所得税法上では、所得は10の種類に分けられている。本記事において考慮しておくべき所得の計算方法は次の通りだ。

<所得の計算方法>
【事業所得】 収入-必要経費=所得(マイナスについては他の所得と損益通算)
【給与所得】 給与収入-給与所得控除=所得
給与所得控除とは給与所得に認められているいわゆる「サラリーマン経費」のこと。所得がマイナスになることはない
【一時所得】 収入-収入を得るための費用-50万円(特別控除)=所得(課税対象は所得の1/2)
【譲渡所得】 収入金額-取得費・譲渡経費-50万円(特別控除)=所得(所有期間が5年超の場合には所得の1/2が課税対象)
※ここでは土地・建物以外の譲渡所得についてのみ言及
【配当所得】 原則として収入金額-元本を取得するための借入金利息
【雑所得】 収入-必要経費=所得(マイナスについてはゼロとして扱うのみ。損益通算等は発生しない)
※公的・退職年金所得を除く

バイト収入は給与所得に該当し、アフィリエイトやYou Tuberについてはその人自身が事業主として活動しているので事業所得か雑所得に該当する。FXは雑所得として計算する。また、宝くじや万馬券であたった場合は一時所得、クルマやビンテージ品の売却や株の売買をして得た収入は譲渡所得、株の配当は配当所得として扱う。なお、事業所得か雑所得かの違いについては、事業規模の大きさなどが判定基準になるが、ここでは分かりやすいように「その仕事だけで食べていけるかどうか」を目安とする。

例えば、大学生の子どもがバイトの傍らYouTuberとして高額の収入(合計所得額20万円以上)を得ている場合は、バイト代の給与所得とYouTuberとしての所得(事業所得か雑所得)を算出し、その合計額が38万円を超えるかどうかで扶養控除の可否を判定する。そして、バイト代以外に合計20万円超の所得がある場合、バイトはしておらず独自で活動して収入を得ている場合には、翌年の3月15日までにその子ども自身が一人の納税者として確定申告を行わなくてはならない。

扶養控除の影響を受けるのは所得税だけではない

なお、上記の判定でお子さんが扶養控除から外れることとなった場合、影響を受けるのは所得税だけではない。住民税、そして国民健康保険に入っている場合には国民健康保険料にも影響が及ぶ。なぜなら、住民税も国民健康保険も所得税の所得計算がベースとなっているからだ。38万円という扶養控除額を税金ベースで考えると、所得税の適用税率が20%ならば所得税額は7万6000円、都内在住ならば住民税額は所得割税率10%で3万8000円になる。合計10万円超の損失だ。塾代や大学の学費に多額の支出をしている世帯にとって、10万円は決して軽い金額ではない。

可能性としては低い出来事かもしれないが、「うちの子、最近妙に羽振りがいいな」と感じたら、子どもに様子を聞いてみてはいかがだろうか。そして、稼いでいる気配があるのならば、税金のこと、家庭の支出のこと、そして本人の将来の希望のことなどを含め、一度じっくりと話すとよいだろう。単に叱るのではなく、「稼いだ」という事実をもって、社会人としての意識を持ってもらう良い機会になるかもしれない。

鈴木 まゆ子
税理士、心理セラピスト。2000年、中央大学法学部法律学科卒業。12年に税理士登録。外国人の在日起業の支援が中心。現在、会計や税金、数字に関する話題についてのWeb上の記事執筆を中心に活動している。心理セラピーは、リトリーブサイコセラピストの大鶴和江氏に師事。カウンセリングやセッションの他、金銭に絡む心理を研究している。共著「海外資産の税金のキホン」(税務経理協会、信成国際税理士法人・著)。ブログ「 経済DV・母娘問題からの解放_セラピスト税理士のおカネのカラクリ

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