住宅ローン控除は、確定申告をすることで受けられるものだ。控除期間の2年目からは勤務先の年末調整で受けることもできるが、初年度は必ず確定申告をしなければならない。

確定申告書に住宅借入金等特別控除額の計算明細書を添付し、初年度は住宅ローン控除の要件を満たしていることがわかる複数の書類を用意する必要がある。

今回は、住宅ローンの確定申告について、初年度と2年目以降で異なる必要書類や、確定申告をし忘れたとき、計算が間違っていたとき、年末調整で住宅ローン控除を受けたものの確定申告も必要になったときなど、迷いやすいケースの対応方法について解説する。

中村太郎
中村太郎
中村太郎税理士事務所所長・税理士。1974年生まれ。和歌山大学経済学部卒業。税理士、行政書士、経営支援アドバイザー、経営革新等支援機関。税理士として300社を超える企業の経営支援に携わった経験を持つ。税務のみならず、節税コンサルティングや融資・補助金などの資金調達も得意としている。中小企業の独立・起業相談や、税務・財務・経理・融資・補助金等についての堅実・迅速なサポートに定評がある。

住宅ローン控除に関するQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除は、ローンを組んで住宅の取得や増改築を行った場合、その年末のローン残高の1%を、ローンを負担する人の税額控除にできるものである。

対象となる住宅、入居時期、借入金、控除を受ける本人、控除を受けるための手続きについて細かい要件が定められている。

住宅ローン控除は、ローンを組んで住宅の取得や増改築を行った場合、その年末のローン残高の1%を、ローンを負担する人の税額控除にできるものである。

対象となる住宅、入居時期、借入金、控除を受ける本人、控除を受けるための手続きについて細かい要件が定められている。


Q


住宅ローン控除の初年度に必要な確定申告はいつまで?

確定申告の期限は、翌年の2月16日から3月15日の間である。申告期限が土日祝日の場合は、翌開庁日が期限となる。

ただし災害や、やむを得ない事情があれば、申告期限を個別に延長することもできる。原則として申請が必要だが、新型コロナウイルスに関連する延長については柔軟な対応が行われている。

確定申告の期限は、翌年の2月16日から3月15日の間である。申告期限が土日祝日の場合は、翌開庁日が期限となる。

ただし災害や、やむを得ない事情があれば、申告期限を個別に延長することもできる。原則として申請が必要だが、新型コロナウイルスに関連する延長については柔軟な対応が行われている。

住宅ローン控除の確定申告の方法(初年度)

●確定申告書の書き方

住宅ローン控除を受けるには、「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」を作成し、申告書の第一表・第二表(AまたはB)の所定の欄に必要事項を記入する必要がある。

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(一面)

(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書(一面)

確定申告書B(第一表)

確定申告書B(第一表)

確定申告書B(第二表)
確定申告書B(第二表)

確定申告書はBであるがAで住宅ローン控除を適用することも可能だ。

(出典)国税庁:「令和2年分 確定申告に関する様式等」

様式の水色の枠は筆者が加工したもので、住宅ローン控除の確定申告において記載が必要な箇所を示している。

書き方は、まず計算明細書を作成し、第一表の「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除」の欄に、計算明細書の⑳の額を転記する。そして2019年(令和元年)分であれば、第二表の「特例適用条文等」の欄には、居住開始年月日を記載する。

居住開始年月日の頭には、住宅ローン控除を受ける場合は「特」、認定住宅で受ける場合は「認」など決められた文字を書く。文字の種類は受ける控除の内容で変わるので、最新の確定申告の手引きで確認しよう。特別特定取得や特定取得にあたる場合は、居住開始年月日の末尾に「(特別特定)」や「(特定)」と記載する。

これらは、あくまでも2019年(令和元年)の確定申告の手引きによる情報なので、2020年(令和2年)年の正確な記載方法については、必ず「令和2年分所得税及び復興特別所得税の確定申告の手引き」で確認しておこう。

確定申告書とともに提出する書類

初年度の確定申告では、確定申告書の作成以上に提出しなければならない書類の収集が厄介である。

どのような書類が必要になるか、住宅の取得、増改築等の確定申告で必要になる書類と、状況に応じて必要な書類をいかにまとめた。詳細は、国税庁のホームページなどで確認してほしい。

●家屋の取得の確定申告に必要な書類

<必要書類>
1(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
2住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
3家屋の登記事項証明書、契約書の写しなど

1は確定申告書に添付する書類だ。連帯債務がある場合、これとは別に付表が必要になる。

2は借入先が発行する書類だ。複数ある場合はすべて必要となる。

3は、以下の内容がわかるものでなければならない。

・家屋の新築又は取得年月日
・家屋の取得対価の額
・家屋の床面積が50㎡以上であること
・家屋の取得等が特定取得又は特別特定取得に該当する場合は、その該当する事実
一般的には、登記事項証明書と契約書(売買契約書や請負契約書など)の両方が必要になる。

<状況に応じて用意する書類>
・認定住宅の新築等である場合
→計画認定通知書、住宅用家屋証明書など
・中古住宅の取得である場合
 →中古住宅の状況で異なる
・補助金の交付を受けているとき
→補助金の額を証明する書類
・住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けているとき
→贈与税申告書の写しなど
・住民票を異動していない場合
 →入居年月日を明らかにする書類
・新型コロナウイルスの影響で入居日が遅れた場合
 →入居時期に関する申告書兼証明書(住宅ローン控除の対象となるかは別途要件あり)

●土地の取得にかかる借入金もある場合

<必要書類>
・土地の登記事項証明書(マンションなどは家屋の登記事項証明書に表示されるため不要)
・土地の売買契約書

<状況に応じて用意する書類>
・土地を家屋に先行して取得した場合
 →購入時期などで異なる
・補助金の交付を受けているとき
→補助金の額を証明する書類
・住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けているとき
→贈与税申告書の写しなど

注意したいのが、住宅ローン控除は土地のみの借入金では受けられないことだ。土地を先行取得した場合は、一定の要件を満たさなければ住宅ローン控除が受けられない。

●増改築等の確定申告に必要な書類

<必要書類>
1(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
2住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書
3家屋の登記事項証明書
4請負契約書
5次のいずれかの書類(1号工事の場合)
・建築確認済証(写)
・検査済証(写)
・増改築等工事証明書
6増改築等工事証明書(2号~6号工事の場合)

<状況に応じて用意する書類>
・補助金の交付を受けているとき
→補助金の額を証明する書類
・住宅取得等資金の贈与の特例の適用を受けているとき
→贈与税申告書の写しなど

住宅ローン控除の初年度の確定申告(2年目から)

2年目の添付書類は「(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書」と「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」である。

なお、2年目からは勤務先の年末調整で住宅ローン控除を受けることもできる。逆に会社の年末調整を受けた人が、確定申告で住宅ローン控除を受けても構わない。

住宅ローン控除の確定申告書を出し忘れたとき

●年末調整も確定申告もしていない場合

確定申告を忘れていたときは、期限後申告を行うことができる。必要な書類は通常の確定申告書と同じだ。この場合、納税額の計算結果は、以下の3通りが考えられる。

・還付が受けられる
・納税額が発生する
・納税額が0円となる

還付を受けるには5年以内に申告する必要がある。2020年(令和2年)分の確定申告であれば、2021年(令和3年)1月1日から5年間となる。

納税額が発生する場合は、住宅ローン控除の申告を忘れたのではなく、所得があるのに確定申告をし忘れていたことになる。これについては無申告加算税の対象となり、遅れた日数や納税額によっては延滞税もかかる可能性がある。遅れるほど加算税も延滞税も重くなる仕組みなので、気づいた時点で期限後申告をしたほうがよい。

●確定申告で納税額が0円になった場合

この場合は、住宅ローン控除で控除しきれなかった税金がある可能性が高い。例えば、住宅ローン控除適用前の所得税が5万円、住宅ローン控除が8万円のとき、源泉徴収税や予定納税などがなければ納税額は0円、還付も0円となる。ただし差額のマイナス3万円は、住民税から一定額まで控除できる。

ちなみに、税務署に確定申告をすれば住民税の申告は必要ない。すでに住民税の徴収が始まっている場合は、どのような対応になるか市町村に直接確認をとるほうがよいだろう。

なお住民税の住宅ローン控除の額には上限がある。基本的には総所得金額の5%(最大9万7500円)だが、入居開始日が2014年(平成26年)から2021年(令和3年)12月31日までで、かつ住宅ローン控除が特別特定取得・特定取得にあたる場合は、総所得金額の7%(最大13万6500円)になる。

●年末調整を受けたが住宅ローン控除を受けていない場合

勤務先で再調整ができなければ、確定申告をして住宅ローン控除を適用すればよい。

2年目以降の確定申告は、初年度ほど必要書類が多くない。このパターンでは、一般的に税金の還付が受けられる。還付される金額は、ほかに新しく申告する所得などがなければ住宅ローン控除額か、勤務先から受け取った源泉徴収票に書かれた源泉徴収税額のどちらか低いほうがおおむねの上限額になると考えてよいだろう。

住宅ローン控除の確定申告の計算を間違えたとき

確定申告はしたが、「住宅ローン控除の計算を間違えたことに気づいた」「住宅ローン控除を申告し忘れた」という場合は、修正申告または更正の請求という、確定申告の内容を正す申告を行う。

この申告によって追加で納税をしなければならないときは、修正申告を行う。修正申告は、確定申告書の第一表と第五表を作成して提出する。不足していた納税額は修正申告をした日のうちに納めるようにする。

また、還付を受けられる場合は、更正の請求を行う。更正の請求は、更正の請求書によって行う。更正の請求ができるのは確定申告の法定申告期限から5年間となる。

●年末調整も受けたが確定申告も必要になった場合

年末調整で住宅ローン控除を受けたが、別の理由で確定申告が必要になることもあるだろう。この場合は、申告書第一表「税金の計算」欄の「特定増改築等」住宅借入金等特別控除」に控除額を、申告書第二表「特例適用条文等」欄に居住開始年月日等を記載して確定申告をする。

住宅ローン控除の確定申告の準備はお早めに

住宅ローン控除の確定申告は必要書類が多いうえ、計算明細書の作成など大変な作業が多い。ギリギリになって作成し、行き詰まったときはストレスになるだろう。そうならないためにも、なるべく早めに確定申告の準備を始めるようにしよう。

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