(本記事は、沖村鋼郎氏の著書『はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち』合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)

購入後、毎年必要になる確定申告について

確定申告
(画像=Nishihama/Shutterstock.com)

賃貸併用住宅のオーナーになると、家賃収入という不動産所得ができるため、確定申告をする必要が出てきます。収入がサラリーマンの給与所得だけであれば、勤務先の会社が所得税の計算をするため、源泉徴収という形で税金を納めます。自営業やフリーランスの方など、会社で年末調整を受けていない個人は、所得の金額にかかわらず確定申告によって税金を納める必要があります。また、会社員でも年収2000万円を超える方は、確定申告による納税が必要です。

ここでポイントとなるのが、給与以外の「所得」が20万円以上の場合。所得とは、単純な収入とは違います。収入から経費を差し引いた金額が所得と呼ばれます。つまり、確定申告で申告する不動産所得を求める場合には、主に賃貸併用住宅の家賃収入から経営にかかった経費を差し引いた金額を出さなくてはなりません。経費に何が含まれるかというのは、後ほど確定申告の方法を説明するなかで詳しく解説します。まずは「家賃収入―経費>20万円の場合には、確定申告で納税が必要」ということを覚えておいてください。

確定申告では、毎年1月1日から12月31日までに得たすべての所得を計算して、申告・納税します。計算次第では税金を納めるのではなく、税金が戻ってくる場合もあります。賃貸経営では、建物や設備の減価償却などができるため、利益が出ていても、帳簿上では赤字になる場合があります。

たとえば、不動産所得が赤字で、サラリーマンとしては給料から所得税を支払っている場合、確定申告することでこれらが相殺され、赤字のマイナス分の税金を還付(返金)してもらうことができるのです。

会社員をしながら自分で確定申告を行うのは、手間がかかるでしょう。当社の場合、お客様に税理士を紹介し、税理士にほとんど任せているケースが多いのが実情です。紹介する税理士は賃貸経営をよく知っているため、節税のポイントにも明るく、賃貸併用住宅特有の処理も得意です。もちろん、会社で経理を担当しているなど、経理業務に明るい人や、お金の流れを自分で把握したいという人は、確定申告について、書籍を買って勉強して、自分で行うのもよいでしょう。

初めて確定申告を行うため不安だという人は、ネットや郵送ではなく、税理士へ相談したり、税務署の窓口に直接出向いて相談したりする方法もあります。確定申告の期間中、税務署は混んでいる場合が多いため、比較的早めの時期に時間を確保して質問に行くようにしましょう。

確定申告は面倒ではありますが、申告することによって税金の控除を受けられるとなると、「ぜひやっておかねば」という気になります。

確定申告の期間は、土日祝日の日にちによって変わりますが、おおむね毎年2月16日~3月15日です。この期限に間に合うように、確定申告の方法をマスターしましょう。

確定申告の方法を説明する前に、家賃収入や必要経費などによる毎回の支出を、きちんと帳簿につけておく必要があります。また、支出の証明となる領収書やカードの利用控え、預金通帳や残高証明も残しておかなければいけません。単純に確定申告が終わるまで残しておくのではなく、確定申告を行ってから7年間保管しておく必要があるため、なくさないように注意しましょう。

帳簿に記録する方法はさまざまありますが、手書きで残すのは面倒なうえに必要項目に漏れが発生する可能性があります。確定申告用の会計ソフトなどを使う方法が便利です。

また、確定申告はただ税金を納付するためだけに必要なものではありません。賃貸併用住宅を購入するために組んだ住宅ローンについて、「住宅ローン控除」というお得な減税方法を利用するためにも必須の作業なのです。

不動産所得の算出方法

確定申告をするうえで、覚えておきたいのが、不動産所得や経費の算出方法です。不動産所得の額は、次のように計算します。

総収入金額−必要経費=不動産所得

●収入金額

・更新料、礼金などの名目で受領するもの
・敷金や保証金などのうち、返還を要しないもの
・共益費などの名目で受け取る電気代、水道代や掃除代など

一方、必要経費は、不動産収入を得るために直接必要な費用のうち、家事上の経費と明確に区分できるものです。主に次のものがあります。

●主な経費

・修繕費(入居時や退去時のクロスや床の補修、鍵の交換、エアコンやキッチンなど設備の修理)
・支払管理費(入居者の募集・選定、賃貸契約の代行、家賃等の徴収、各種設備の保守、修繕の検討や手配にかかる費用)
・清掃衛生費(日常の清掃や、ゴミ処理、芝生の手入れなどを知り合いや業者に頼んだときの費用)
・通信費(ケーブルTVの基本使用料など)
・損害保険料(建物に掛けた火災保険料や地震保険料)
・減価償却費(建築費、大規模なリフォーム費用など建物の資産価値を上げるもの)
・支払顧問料(税理士や会計士に経理を頼んだ場合の費用、弁護士や司法書士などへの支払い)
・リース料(冷暖房・給湯器・浄水器などの各種機器、賃貸管理のための車両リース料など)
・固定資産税 ・給与賃金(青色申告の場合のみで、一定の要件を満たすもの)

これらが、賃貸併用住宅を経営していくために必要な経費となります。こうしてみると、さまざまなお金が必要になることがわかります。しかし、これらの経費を先ほどの総収入金額から差し引いたものが不動産所得になり、その額に基礎控除などが控除され、税金が課せられることになります。

こうしたお金の仕組みについても、賃貸併用住宅に住むにあたり、理解を深めていきましょう。

住宅ローン控除申請の方法

賃貸併用住宅は、だいたいの方が住宅ローンで融資を受けています。住宅ローンを利用する場合、確定申告に合わせて「住宅ローン控除」の申請をすることが可能です。

住宅ローン控除とは、その年の年末に残っているローン残高のうち、1%分(最大40万円まで)が所得税から差し引かれるという税額控除制度で、住宅ローンの契約から13年間控除が続きます。

住宅ローン控除の申請方法は、1年目のみ確定申告、2年目以降は職場の年末調整で申請が可能です。

住宅ローン控除の適用期間は、2019年10月より消費税が8%から10%に引き上げられたことで、住宅ローン控除の適用期間が10年から13年へと延長されました。ただし、13年間の住宅ローン控除が適用されるのは2020年12月31日までに入居した場合です。

控除される金額は、次の3つのうち、最小の金額になるものが適用されます。

・40万円(住宅ローン控除の1年あたりの上限額)
・その年の住宅ローンの期末残高×1%
・その年の所得税額+住民税額

たとえば、住宅ローンの期末残高×1%が60万円、その年の所得税額+住民税額が30万円の場合、控除される金額は30万円です。

住宅ローンの期末残高×1%が60万円、その年の所得税額+住民税額が50万円の場合には、控除される金額は控除上限金額の40万円となります。最も小さい金額が控除されるところがポイントです。

住宅ローン控除の条件は、次の通りです。

・新築または取得の日から6ヵ月以内に住み始め、控除の適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいること。
・控除を受ける年の合計所得金額が3000万円以下であること。
・新築または取得した住宅の床面積が50平方メートル以上。かつ、延べ床面積の50%以上の部分が自分の居住スペースであること(登記等で50%以上)。
・住宅ローンの返済期間が10年以上であること。
・住み始めた年と、その前後2年ずつの計5年間に「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」などの税制措置を適用していないこと。

賃貸併用住宅を購入する場合は、“延べ床面積の50%以上が自分の居住スペース”という点に注意が必要です。とはいえ、そもそも賃貸併用住宅に住宅ローン融資を適用させるためには50%以上が自分の居住スペースとして必要なため、控除の申請の際にも問題になることはないかと思います。

また、“住み始めた年と、その前後2年ずつの計5年間に、「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」などの税制措置を適用していないこと“も気をつけておきたいポイントです。

たとえば住宅の「買い替え」など、自分がもっていた家やマンションを売却してすぐに新たな家を購入する場合は、特に要注意です。家の売却時には「居住用財産の3000万円控除特例」を適用して、発生する譲渡所得税を減額させることが可能です。しかし、この住居売却時の税制措置を適用させると、新居の購入時に住宅ローン控除を適用できなくなってしまいます。

はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち
沖村鋼郎(おきむら・てつお)
賜典株式会社代表取締役。1969年、千葉県柏市生まれ。1995年に宅地建物取引士資格取得、不動産業に従事。2005年に賜典株式会社(不動産業)を設立、代表取締役就任。25年に及ぶ不動産売買を通して、幸せになった人が多い一方、残念ながら不幸になった人たちも一定数いる現実を直視。売買契約を結んだら終わりではなく、その先も顧客の幸せをサポートしたい、不動産購入で不幸にならないシステムを確立したいと考え、2013年より賃貸併用住宅「はたらくおうち」の販売を開始。以来「住宅費が激減したことでライフスタイルも劇的に変化した!」と多くの顧客から高く評価されている。現在、賃貸併用住宅においては、業界トップクラスの施工数を誇る。

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