(本記事は、沖村鋼郎氏の著書『はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち』合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)

賃貸併用住宅の管理について考える

管理
(画像=ronstik/Shutterstock.com)

賃貸併用住宅は、出来上がって終わりではなく、そこからがむしろスタートです。

結論から申しますと、賃貸併用住宅の賃貸部分は、せいぜい2~4戸で、管理の手間がかからないと思われるかもしれませんが、入居者の管理や建物の管理は、不動産管理会社に一任すべきです。

とはいえ、オーナーに管理業務の知識があれば、何か不備があった場合に管理会社に適切に注意できるでしょうし、どの会社を選んだらサービスが充実しているのかなどを判断できるでしょう。

入居者の管理や建物のメンテナンスは、賃貸経営に欠かせないものです。建物の資産価値を長く保つためにも、管理業務についての理解を深め、常に清潔で快適な環境を入居者に提供することが大切です。

まず、賃貸物件の運営では、何よりも日々の管理業務が肝心です。もし、建物内のエントランスや階段、廊下など、入居者がよく使う共用部が汚れていれば、内見に来た人はここには住みたくないと思うでしょう。建物の劣化・陳腐化を放置してしまうと、せっかく買った不動産の資産価値はその分目減りしてしまいます。

●賃貸併用住宅の管理業務

・入居者の募集
・入居希望者の審査
・入居書類の手続き
・入居時の入金管理(敷金、礼金等)
・入居時の入居者への説明(設備の使い方、ゴミ出しルールなど)
・家賃の集金、集計
・家賃の滞納チェック、督促
・廊下や外階段などの共用部分や、外の敷地部分の定期的な清掃※オプションです
・共用部分の設備のメンテナンス(蛍光灯交換、給水設備、消火器等)※オプションです
・各部屋の鍵の管理
・賃貸部分の設備(給湯器、キッチン、浴室など)に不具合や故障が起きた場合の対応
・入居者からのクレーム処理
・入居者間でトラブルが起きた場合の解決・近隣との調整やトラブル解決
・漏水や火災など、万一の際の対応と、改修・補修工事の手配
・退去時の原状回復費用の見積りと退去者の負担金の調整
・退去時の立会い
・退去後の原状回復工事の手配
・敷金返金手続き
・敷金の管理など

上に示した通り、賃貸併用住宅の管理には、これだけの業務を行う必要があります。賃貸管理をオーナーが自らやるのは、大変なことなのです。

賃貸併用住宅ならば、自宅と同じ建物内に入居者が住んでいるため、家賃の回収などできそうな気になるかもしれませんが、近いからこその難しさもあります。入居者に何か注意をしたら、お互いに近くに住んでいるのが気まずくなるような場面もあるでしょう。

2016年に国土交通省が行った「賃貸住宅管理業者登録制度の改正」によって、管理業務の一部は専門の知識・経験をもった賃貸不動産経営管理士等が行わなければならないと規定されました。そのため、賃貸管理経験のない人が賃貸経営を行う場合、一部の管理業務を専門家に委託する必要があります。

一般的には、管理業務すべてを不動産管理会社に委託しているケースが多いのが実情です。なぜなら、クレーム対応やトラブル対応によってストレスを受けたくないと考えるオーナーが多いからです。やはり自分の時間を賃貸管理に使いたくはないものです。

サブリース契約の注意点

最近では「サブリース契約」という方式でアパートの管理業務を委託するケースもあります。みなさんも耳にしたことがあるでしょう。昨今問題になっているため、サブリース契約についても理解しておきましょう。

通常の賃貸経営では、オーナーと入居者の間で賃貸契約が結ばれます。サブリース契約では、不動産会社がオーナーからマンションやアパートといった建物を一括で借り上げ、それをさらに入居者に貸し出します。オーナーには、毎月一定の収入が不動産会社から支払われます。サブリース契約は、所有する不動産の賃貸管理業務をすべて外部委託できるうえに、空室があったとしても一定の収入が得られるのがメリットといえます。

しかし、空室であるにもかかわらず、一定の家賃を払わなければならないのは、サブリース会社にとって負担となり、一定期間後、家賃がオーナーに払われなくなるなどのトラブルが発生する事態となり、問題になったケースが話題になりました。「あえてサブリース契約を結ぶ必要がない」ケースもあります。

賃貸物件の「貸主」がオーナー、「借主」がサブリース会社という形での契約になるため、オーナー側からの一方的な解約は、正当な理由がない限り受け入れられない仕組みになっています。逆に、賃貸物件の借主であるサブリース会社は、貸主であるオーナーよりも制限がないことから、簡単に契約解除をすることができます。賃貸物件の不動産価値が下がり、家賃収入が想定以下になれば、サブリース契約を解除して別のオーナーと契約をするといった手法も見受けられるため、注意が必要です。

賃貸併用住宅の場合、委託先の不動産管理会社は、建築に携わったハウスメーカーや不動産会社から紹介されるものが多いです。このとき、ほかの不動産管理会社と比較せずに契約をしてしまうと、何か不具合やトラブルが発生しても、対処しにくい状態になってしまいます。

賃貸併用住宅に限らず、委託先の不動産管理会社に違和感を覚えたら、ほかの管理会社の話や業務内容を調べてみるのも大切なことです。

間違いのない管理会社の選び方

賃貸併用住宅の場合、賃貸管理は不動産管理会社に管理業務を委託するのがいいとお伝えしました。では、その管理会社はどのようにして選ぶとよいのでしょうか。

建物の管理業務は、賃貸経営に大きくかかわる部分なので、管理会社選びでも不動産を購入するときと同じように慎重に決断しましょう。

たとえば、広告を出して入居者を募集しなくてはならないのに、広告をあまり出していない不動産管理会社では、空室がなかなか埋まりません。

また、清掃業務が雑であったり、トラブル時の対応が遅かったりする不動産管理会社は、入居者の不満が溜まりやすくなってしまいます。そうすると退去者が増えたり、短期間で入退去者が現れたりと、安定した家賃収入を得ることができません。

●管理会社を選ぶ3つのポイント

(1)入居率が95%以上
(2)入居募集に広告費をかけている
(3)管理会社のスタッフの対応が良い

入居率とは、賃貸不動産にどれほど入居者が埋まっているかを表す数値です。満室状態が100%であるため、95%であれば空室があるかないかといった状態になります。入居率が低く、入退去者の入れ替えが激しい状態であれば、不動産収入が不安定になってしまいます。安定した家賃収入を得るためには、できるだけ入居者とは長く賃貸契約を結んでいたいもの。高い入居率を維持している管理会社に業務を委託することが必要になります。

次に、どのように入居募集を行っているかで管理会社を判断します。たとえば、みなさんもご存知のようなスーモやアットホームといった大手不動産情報サイトに賃貸物件の情報を出していると、家を探している人の目に留まりやすくなります。

しかし、広告費用や仲介手数料にお金をかけたくないという管理会社であれば、入居募集の広告費は最低限になるので、入居者が決まるまで時間がかかります。そうすると、空室がある間は、その分の賃料をオーナーが負担しなければなりません。ですから、入居募集に力を入れていることも、管理会社を選ぶ際の条件となります。

管理会社の対応力を知るために、実際に話を聞きに行くことも重要です。

設備故障や騒音トラブル、近隣からのクレームなど、対応が遅れたり悪かったりすると、入居者の不満が溜まってしまうことになります。そうなれば、オーナーに直接文句を言ってきたり、退去者が増えたりと、経営に影響を与えかねません。

このような事態を避けるためにも、WEB上の情報や資料だけではなく、実際に管理会社に話を聞きに行ってスタッフの対応を見るようにしましょう。

これらの点に気を付けることで、サービスの行き届いた管理会社を見つけることができます。

はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち
沖村鋼郎(おきむら・てつお)
賜典株式会社代表取締役。1969年、千葉県柏市生まれ。1995年に宅地建物取引士資格取得、不動産業に従事。2005年に賜典株式会社(不動産業)を設立、代表取締役就任。25年に及ぶ不動産売買を通して、幸せになった人が多い一方、残念ながら不幸になった人たちも一定数いる現実を直視。売買契約を結んだら終わりではなく、その先も顧客の幸せをサポートしたい、不動産購入で不幸にならないシステムを確立したいと考え、2013年より賃貸併用住宅「はたらくおうち」の販売を開始。以来「住宅費が激減したことでライフスタイルも劇的に変化した!」と多くの顧客から高く評価されている。現在、賃貸併用住宅においては、業界トップクラスの施工数を誇る。

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