(本記事は、沖村鋼郎氏の著書『はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち』合同フォレストの中から一部を抜粋・編集しています)

賃貸併用住宅を専門に扱っていない不動産会社の問題点

不動産会社
(画像=thodonal88/Shutterstock.com)

賃貸併用住宅を専門に扱っていない、町の不動産会社に、賃貸併用住宅の相談をする人がいます。これは絶対にやめたほうがいいです。

たとえば、こんなお客様がいらっしゃいました。地元の不動産会社に、賃貸併用住宅を建てたいと相談に行ったところ、賃貸併用住宅に向いていない土地を紹介されていたのです。土地選びについては第4章で詳しく解説しますが、私が見たところ、お客様が紹介された土地は、場所がいいだけで、賃貸併用住宅に向いているとはいえない土地でした。

賃貸併用住宅の場合、賃貸部分にとっていい土地であることが重要です。ただ駅に近いなど利便性がいいだけではなく、間口が広く取れるなど、土地の形状も重要になってきます。

しかし、賃貸併用住宅を専門に扱っていない不動産会社の場合、どんな土地が適しているのか見極めがつかないのです。それが問題です。

そうした不動産会社に依頼しないためには、会社の実績を見ることが重要です。賃貸併用住宅を手がけていればいいのですが、まだまだ少数派でしょうから、せめて賃貸部門があることです。賃貸の仲介業務を行っており、近隣の賃貸相場がわかっていると、どんな賃貸住宅を建てたらいいか、ニーズがある程度はわかるでしょう。

重要なのは、いい土地が出たらその土地に賃貸住宅を建てたときに、人が入るかどうかをスピーディーに判断することです。

賃貸ニーズを調べて、土地を買うかどうかを検討するのに数週間かかっていては遅いのです。せめて2、3日で判断しなければ、土地は別の人のものになってしまいます。

見積もりや建築プランを出すのに1週間かかるという会社は、ざらにあります。土地を見つけたら、2、3日のうちに市場調査をして、建築プランを考え、見積もりを出して、買うかどうかの判断をする必要があります。スピーディーな対応ができるかどうかも、依頼する不動産会社を見極めるポイントです。

賃貸管理をしてくれないハウスメーカーの問題点

現在、賃貸併用住宅を建てるところから販売しているのは、ほとんどが大手のハウスメーカーです。ハウスメーカーは自社の製品を売ることしか頭にありません。ちょっと言い過ぎかもしれませんが、それが私の本心です。ハウスメーカーは、すでに土地をもっている施主を主に相手にしており、賃貸併用住宅の最大の特徴であるローン返済と家賃収入のバランスについても、「建物については、ローンの支払いが0円になる」といった説明しかしません。

これに対して、当社は土地代も含めて、住宅ローンの支払いが0円になるというご提案をしています。

言い換えると、大手ハウスメーカーが販売している賃貸併用住宅は、当社が提携している建築会社と比べて、はるかに高額なのです。

その結果、土地代も含めた収支を考えると建物が高額な分、毎月の支出が多くなってしまい、賃貸併用住宅のメリットが薄れてしまうのです。また、土地の購入については、ハウスメーカーで土地の紹介をする場合もありますが、企業として組織的に行っているわけでなく営業スタッフが個人で任意で行っているため、情報が少なく、土地の善し悪しのアドバイスも不十分です。

マイホームならば、好きなハウスメーカーや建築会社など、どこに依頼しても自己満足できればそれでいいのですが、賃貸併用住宅の場合、入居者が埋まり続けなければなりません。

賃貸部分の間取りをどうとるか、自宅と賃貸部分の敷地の使い方や防音や遮音を考えた設計が必要不可欠です。そこまで考えられる会社に依頼しなければなりません。

建築会社選びのポイント

建築会社を選ぶときも、賃貸併用住宅を建てたことがあるかが重要なポイントになります。賃貸住宅もマイホームも、両方を建てている建築会社が理想です。

なぜなら、賃貸住宅とマイホーム、それぞれの特性を理解したうえで設計できるからです。

マイホームの部分については、好きなように間取りから建具や設備を選べばいいのですが、難しいのが賃貸部分を優先しながら、いかにマイホームを妥協せずに作るかという点です。

賃貸部分は収益性が高くなるように、日当たりや動線などを考えなくてはなりません。また、自宅部分と賃貸部分とで、オーナーと入居者の目線が合わないよう、プライバシーに配慮した動線や防音や遮音性を考えた設計が必要です。

単身者向けか、ファミリー向けかで間取りは大きく変わってきます。建てた後に、ワンルームでは入居者が決まらないから2DKにしたいと思っても、できません。

賃貸ニーズを把握したうえで、どんな設計がいいのか、自宅部分はどう配置して、賃貸部分は何室、どんな間取りで確保するとベストなプランとなるのか。そこまで提案できるかどうかを考えて、依頼する先を見極めましょう。

細かい点ですが、キッチンやバスルームなどの設備も一戸建てとアパートでは、種類や大きさが違います。一戸建てしか造っていない建築会社では、賃貸向けの設備を選ぶノウハウがありませんし、賃貸向けの設備を普段仕入れていないので、仕入れ値が上がってしまうのです。このようにコスト面でも、両方に対応できる建築会社である必要があるのです。

見積もりを取って建築費を比較検討する人は多いでしょうが、あまりに安すぎる建築会社は避けるべきです。

不自然に安い場合は、何が理由でその価格なのかよく確認する必要があります。安い場合はやはり良くない理由があることも多く、少ない社員で回しているので余裕がなく対応が悪い、必要な日数をかけずに工期を短縮するので工事品質に問題があるケースも見受けられます。

私が仕事をするなかで、気をつけているのが一見客として発注することです。単発のお付き合いになると、トラブルが起きた際に話がこじれるケースもあります。建築会社から見た場合はその契約限りの長期的な取引を見込めない相手となります。すると、何か問題が起きた場合、建築会社としては「今後の付き合いがあるわけではないので」と、乱暴な対応に出ることがあるのです。

ここであげた内容を踏まえて、どこに依頼すべきかをよく吟味するといいでしょう。

賃貸併用住宅の専門家に相談すべき理由と根拠

いざ、賃貸併用住宅を建てようと腹を決めたものの、「賃貸部分に入居者はちゃんと入るだろうか?入らなかったらどうしよう」と不安に思う人もいるでしょう。

そのような心配を軽減するためには、しっかりとしたマーケット調査を行ったうえで、交通の便が良い人気エリアを選び、戦略をしっかり立て、入居者が集まりやすい建築プランや賃料の設定をしなくてはなりません。

ちなみに当社が提供してきた賃貸併用宅では、問題なく入居者が集まっています。最初の10年で家賃収入額がローン返済額を上回っているようなら、その分を繰り上げ返済に回すことで、10年後以降、月々のローン返済額が減るようにしておき、もし家賃が下落しても、支払いに困らないようにしておくこともできます。

賃貸併用住宅をおすすめする際に、「売ること」「建てること」を優先し、ローン返済と家賃収入の収支プランであまり現実的ではない高い家賃を設定してしまうことがあります。つまり、家賃収入が多く入るように「夢」を見せて、賃貸併用住宅を購入するよう背中を押すのです。

しかしこれでは、実際に入居者の募集を始めた際、近隣の賃貸相場からかけ離れた家賃で募集することになってしまい、入居者がなかなか集まりません。このようなことをすると、結局のところ家賃を相場程度にまで下げて募集せざるを得なくなり、家賃収入がローン返済を下回って、収支プランが成立しなくなってしまいます。

これは近年問題になったシェアハウスのトラブルで、実際にあった話です。

当初の計画で現実的でない家賃を設定し、募集開始後に入居者が集まらなくなってしまうと自社に損失が出てしまいます。

計画時に現実的でない高額家賃を設定するということは、できないのです。賃貸併用住宅が完成後、賃貸部分の管理もさせていただくので、購入時だけでなく末永いお付き合いとなります。こうしたお付き合いこそが、賃貸併用住宅ならではの良さだと思っています。

建てて終わりではなく、建ててからが本当のスタートです。この観点からも、当初計画の家賃は現実的であることが必要なのです。だからこそ、建てた後までフォローできる、賃貸併用住宅を専門に扱う会社に依頼することが重要なのです。

はたらくおうち 賃貸併用住宅──次世代の新しい資産運用のかたち
沖村鋼郎(おきむら・てつお)
賜典株式会社代表取締役。1969年、千葉県柏市生まれ。1995年に宅地建物取引士資格取得、不動産業に従事。2005年に賜典株式会社(不動産業)を設立、代表取締役就任。25年に及ぶ不動産売買を通して、幸せになった人が多い一方、残念ながら不幸になった人たちも一定数いる現実を直視。売買契約を結んだら終わりではなく、その先も顧客の幸せをサポートしたい、不動産購入で不幸にならないシステムを確立したいと考え、2013年より賃貸併用住宅「はたらくおうち」の販売を開始。以来「住宅費が激減したことでライフスタイルも劇的に変化した!」と多くの顧客から高く評価されている。現在、賃貸併用住宅においては、業界トップクラスの施工数を誇る。

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