住宅ローンを組んで家を建てたり購入したりした人は、よく「確定申告が必要」といわれている。しかし実際に、その理由や手続きの方法などを理解している人は少ないのではないだろうか。ここでは、住宅ローン控除のための確定申告の必要性や、手続きの方法などについて詳しく解説する。

住宅ローン控除には確定申告が必要!

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(画像=Denphumi / Shutterstock.com)

住宅ローンを利用して住宅を取得した人は、「住宅ローン控除」という税金の優遇制度が受けられることを、耳にしたことがあるだろう。ただし控除を受けるには、必ず自らが確定申告を行うことが必要である。

まずは、住宅ローン控除とはどのような制度なのか、また必要とされる確定申告とはどのようなものかについて確認していこう。

住宅ローン控除制度とは?

住宅ローン控除制度とは、個人が金融機関からお金を借りて、住宅購入の資金にしている場合に金利の支払いの負担を軽減するための制度であり、「住宅借入金等特別控除」ともいわれている。

制度の内容としては、一定の要件に該当すれば、年度末の住宅ローン残高の1%(上限40万円)について10年間にわたって所得税から控除されるもので、所得税から控除しきれなかった場合は、住民税からも一部控除されることになる(住民税の控除にも上限はある)。

住宅ローン控除制度が対象になる期間は、2021年12月31日までに入居した場合となっており、基本的に控除期間は10年間だが、2019年10月以降は消費税が10%に引き上げられるため、2019年10月1日から2020年12月31日までに入居した場合は、控除期間が3年間延長されて13年間になることがポイントだ。

初年度については、自分で確定申告をしなければならないが、会社員であれば次年度からは年末調整で控除の手続きができるため、それほど面倒には感じられないはずだ。還付額はある程度まとまった額になることが多いため、ぜひとも手続きをしておきたい。

確定申告とは?

住宅ローン控除を受けるために必要な手続きが「確定申告」である。そもそも確定申告とはどのようなものなのだろうか。

確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に所得があった人について、どれだけの所得があり、いくらの所得税を納税するのか、申告して確定させるものである。一般的には、翌年の2月から3月頃に作成した確定申告書を税務署に提出し、期日までに納税する流れになっている。

会社員であれば、通常は会社が年末調整で所得税を確定し、まとめて納税しているため、個人での確定申告は必要とされていない。しかし、住宅ローン控除(初年度)などは、年末調整では対応できないため、確定申告が必要になる。

確定申告は、単に所得税を納税するだけではない。所得額とさまざまな控除額を計算し、納税額が多すぎた場合には、その差額が戻ってくる「還付申告」もできるのだ。住宅ローン控除の手続きは、多くの人がこの「還付申告」に該当する。

住宅ローン控除を受けるための確定申告の方法

住宅ローン控除を受けるための確定申告をするには3つの方法がある。それぞれを確認していこう。

1.郵送での申告

確定申告書は、郵送でも提出することができる。定められた期限内に税務署に到着させる必要はあるが、申告書をしっかり作成できていて特に税務署員に聞きたいことがない人や、時間が取れず税務署に行くことが困難な人には便利だろう。申告書を送る前には、必ず自分の控えとして1部コピーすることを忘れずに行いたい。このとき、何らかの問題がない限り税務署から連絡はないため、ちゃんと受理されたのか不安な人は、控えと返信用封筒を同封しておくと、受付印が押されて返送されてくる。覚えておくとよいだろう。

2.電子申告(e-Tax)を利用

確定申告は電子申告(e-Tax)を利用して提出することが可能だ。電子申告(e-Tax)とは、インターネットを使って電子データとして申告できるシステムのことである。電子申告(e-Tax)を利用するためには、事前に本人確認などの手続きを行い、電子証明書を取得する必要があるが、場所や時間を気にすることなく確定申告ができるため、自分の都合を優先することができる。

3.税務署での直接申告

最も多く利用されているのは、自分の住所地を管轄する税務署に直接申告する方法だろう。確定申告の時期には、専用の申告会場を設けている地域もあり、申告書の記載の仕方について相談することもできる。直接申告すると、書類に受付印が押されるため、自分の控えの分にも押印してもらうとよいだろう。

確定申告を行うのはいつ?

確定申告は毎年2月中旬から3月中旬までと、期間が決まっている。ちなみに2019年は2月18日から3月15日までとなっていた。ただし、還付申告の場合は1月から可能だ。

確定申告の受付期間の終盤になると、受付が非常に込み合い行列ができてしまうことも多いため、申告は期日に余裕をもって準備しておきたい。

確定申告に必要な書類と入手場所は?

住宅ローン控除のための確定申告では、どのような申告書類が必要で、添付書類は何が必要なのか、また、どこで入手すればよいかなど詳しく確認しよう。

必要書類 入手する方法
確定申告書A(第一表と第二表) 税務署の窓口、もしくは国税庁WEBサイトでダウンロード
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
勤務先の源泉徴収票 勤務先
金融機関等からの住宅ローンの借入金残高証明書 金融機関(通常は郵送される)
土地・建物の登記簿謄本 所在地を管轄する法務局、または不動産会社
売買契約書または建築請負契約書 契約時に自分で保管しているはずだが、ない場合は建築会社や不動産会社等から入手
マイナンバーが記載されている本人確認書類(または住民票の写し) 自分で保管しているはずだが紛失の場合は手続きが必要

確定申告書Aや住宅借入金等特別控除額の計算明細書の様式は、税務署でも配布しているが、国税庁のWEBサイトからも簡単にダウンロードできるため、時間や曜日の都合で窓口に行けない人にはおすすめだ。

源泉徴収票は、年末調整を行った際に会社から発行されるだろう。住宅ローンの借入金残高証明書は、しかも送られてくるのは秋から年末までの間に、郵送されてくることが多く、確定申告の時期よりもかなり早いため、うっかり存在を忘れてしまいかねない。注意しておこう。

登記簿謄本は、法務局から自分でも入手できるのだが、営業時間内に行くことが困難であったり、入手のための申請に不安があったりする場合は、建築や不動産会社に依頼するのも方法のひとつだ。

売買契約書や建築請負契約書は、通常は相手側と自分がそれぞれ各1通の契約書を保管しているはずである。探しても見当たらない人は、契約した会社から入手するようにしよう。

マイナンバーが記載された本人確認書類は、カードそのものか、または通知書があればよい。確定申告にはマイナンバーの記載について罰則はないものの義務とされているため、関連書類は大切に保管しておこう。

確定申告後いつ税金が返ってくる?

確定申告をして、無事に還付が認められた場合、還付金がいつ返ってくるのかは気になるところだ。国税庁によると、還付金の手続きは速やかに行うとしているが、確定申告の時期は取扱件数が非常に多くなり込み合うため、申告からおおよそ1カ月から1カ月半ほどはかかるとしている。

ただし、電子申告(e-Tax)で確定申告をした場合は、おおよそ3週間ほど。先述したように還付は1月から提出可能であり、早期に提出すればするほど、繁忙期を避けられて、還付金の支払いも早まる傾向にあるようだ。

ちなみに、還付金の受取方法としては、自分の預貯金口座への振り込みか、または最寄りのゆうちょ銀行や郵便局で直接受け取るかのどちらかを選択できる。希望する還付方法は確定申告書に記載することになるが、自分の口座へ直接振り込まれる方が最短に完結する。振込口座は、必ず確定申告をする本人名義に限られる点に注意しておこう。また、一部のインターネット口座は対応できないこともあるため、事前に確認しておくことが必要だ。

確定申告を忘れないように!

長期間の所得控除が受けられる住宅ローン控除だが、もしも確定申告を忘れていたらどうなるのだろうか。結論から述べると、住宅を取得した翌年に確定申告を忘れても、「還付金の申告は可能」である。

確定申告は、基本的に所得税を納税する人の税額を確定させるもので、定められた期日までに納税することが求められる。しかし住宅ローン控除は、税金が戻る「還付申告」にあたるため、申告をするべき年分の翌年から5年間までは、遡って申告できるのだ。

とはいえ、これは所得税に限った話である。確定申告がされないと、前年の所得額が決定してしまい、それを基に住民税も決まってしまうため、所得税で控除しきれない分の住宅ローン控除は無効となってしまう。所得税についても、遡って申告が可能だとしても5年間を過ぎてしまえば順に時効になっていくため、うっかり忘れてしまったことに気が付いたら、できるだけ早く申告の手続きをした方がよいだろう。

住宅ローン控除は、確定申告書の作成や添付書類の準備など、少し手間がかかる気がするが、年間の上限で40万円という控除額が、10年または13年もの長期間で適用されるという、家計にとっても非常に魅力的な制度だ。一度確定申告をすれば、2年目以降はとても簡易な申告で控除できるため、初年度の確定申告を確実に行っておくことが大切だろう。申告時期に慌てることがないように、早期から確定申告の準備を整えておいてほしい。