「生命保険控除」という制度をご存じだろうか。生命保険に対して年間支払っている保険料等の金額に応じて所得金額から一定の控除を受けることができる制度である。会社員などの方は、生命保険控除という名前や内容を知らなくても毎年その制度を利用している可能性がある。

実際、所得金額の控除を受けることにより、どのようなメリットがあるのか。今回は、生命保険控除の概要から、改正前の旧制度と新制度との違い、そして実際に自身がどのくらいの金額が控除されるかの算出方法など解説する。

生命保険料控除は所得控除の一種

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(画像=PIXTA)

所得金額から一定の控除を受けることにより、所得税や住民税が軽減されるメリットがある。毎年、支払う税金というものは、所得からいろいろな控除を差し引いた課税所得に対して算出するので、課税所得が多いほど支払う税金の額も大きくなる。

生命保険料控除とは、所得からの控除金額が増えるため、課税所得が少なくなり、税金の額が小さくなるということである。実際に、軽減される金額は後述解説する算出方法により求められるが、控除額は最大で毎年所得税で12万円、住民税で7万円になる。

生命保険料控除は保険種類に応じて控除の区分が分かれ、それぞれの区分別に控除が適用される。

・一般生命保険料控除:生存または死亡を原因とした一定額の保険金、その他の給付金などを支払うことを約する部分に関する保険料、死亡保険など
・介護医療保険料控除:入院や通院等にともなう給付部分に関わる保険料、がん保険、医療保険、介護保険など
・個人年金保険料控除:個人年金保険料税制適格特約が付加された個人年金などの保険料

ただし、個人年金保険について対象となるのは次の条件を満たしているものとなる。

・年金の受取人が保険料もしくは掛金を支払う本人もしくはその配偶者となっている契約
・年金の支払を受けるまでに10年以上にわたって保険料を定期的に支払う契約
・年金の支払が原則として60歳になってから10年以上の定期もしくは終身の年金であること

所得控除には、生命保険料控除以外にもたくさんあり、大きく人的控除と物的控除の2種類に分かれる。

人的控除とは、控除対象配偶者がいると受けることができる配偶者控除、子供など扶養する親族がいる場合の扶養控除、納税者自身もしくは同一生計配偶者または扶養親族が所得税法上の障害者に当てはまる場合の障害者控除など。

一方、物的控除とは、生命保険料控除や地震保険料控除、医療保険控除などの保険料や医療費の支払など一定の支出があった場合に対象となる控除である。

<主な所得控除>

人的控除 物的控除
・基礎控除
・扶養控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・寡婦控除、寡夫控除
・勤労学生控除
・障害者控除
・生命保険料控除→今回説明
・社会保険料控除
・地震保険料控除
・医療費控除
・寄付金控除
・雑損控除
・小規模企業共済等掛金控除

今回は、物的控除の中の生命保険控除に絞って解説をする。

新制度と旧制度で何が変わったのか

生命保険料控除の制度は、2010年の税制改正により2012年度の所得税から(住民税は2013年度から)改正された。具体的に、どのような制度変更があったのか確認していこう。

介護医療保険料も控除の対象に

旧制度では、医療保険や介護保険などについては、一般生命保険料として扱われていたが、新制度では、一般生命保険料とは別の区分になり、一般生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料の3つとなる。

控除に適用される限度額の変更

新制度になり控除される限度額にも変更が発生した。各保険料に対して、所得税控除、住民税控除の限度額がどのような変更になったのか確認しよう。

次表を見ると、旧制度では、所得税控除は、一般生命保険料で上限5万円、個人年金保険料で上限5万円、合算による適用限度額が10万円だったのに対し、新制度では、区分控除が3種類に増え、各区分に対する上限が4万円に減ったものの合算による適用限度額が12万円に増えたことが分かる。

<旧制度>

  所得税控除 住民税控除
一般生命保険料 5万円 3万5000円
個人年金保険料 5万円 3万5000円
合算による適用限度額 10万円 7万円

<新制度>

  所得税控除 住民税控除
一般生命保険料 4万円 2万8000円
介護医療保険料 4万円 2万8000円
個人年金保険料 4万円 2万8000円
合算による適用限度額 12万円 7万円

この新制度だが、合算による適用限度額としては10万円から12万円に増えているが、一般生命保険料控除、個人年金保険料控除と単体で見た場合は上限が減っているともいえる。 つまり、この制度変更により、有利になる人もいれば、不利になる人が出てくることになる。後述にて説明する計算方法を理解し、有利な申請を行うようにしよう。

特約に関する取扱方法の変更

身体の障害だけを補償する、身体の障害のみに起因して保険金が支払われる傷害特約や災害割増特約については、生命保険料控除の対象から外れる。

適用控除区分に関する判定の変更

旧制度では、主契約の保障に準じて、一般生命保険、個人年金保険の控除区分が適用されていた。

新制度では、主契約と特約の保険料に応じて、保障内容を判定し、一般生命保険、介護医療保険、個人年金保険の控除区分が適用される。

生命保険料控除の金額を計算してみる

ここでは、控除の金額がいくらになるのか計算方法を解説する。可能であれば実際に自身が契約している保険の内容(支払っている金額がわかる資料を用意)で確認してみることをオススメする。

計算方法は契約している保険が旧なのか新なのか、また両方はなのかで異なるので注意しよう。自身の契約がどちらに該当するかの調べ方もこれからあわせて説明する。また、前述でも解説したが、所得税控除は12万円、住民税控除は7万円が上限であることも念頭におこう。

旧制度の所得税・住民税控除

旧制度か否かの判断方法は、自身が契約している保険の契約日を確認し、契約日が2011年12月31日以前の場合は、旧制度に該当する。

生命保険と個人年金保険と分けて各々年間支払った保険料等の総額を求め、次表をもとに控除額を確認する。

また、医療保険や介護保険などの第三分野保険料については、旧契約に基づき一般生命保険として考え、年間支払っている保険料等とは、その年に支払った金額の合計から、その年に受け取った余剰金や割戻金を差し引いた金額である。

<所得税控除> ※一般と個人年金と別々に行うこと

年間の支払保険料等 控除額
2万5000円以下 年間の支払保険料等の全額
2万5000円超 〜 5万円以下 年間の支払保険料等の全額 x 1/2 + 1万2500円
5万円超 〜 10万円以下 年間の支払保険料等の全額 x 1/4 + 2万5000円
10万円超 一律 5万円

<住民税控除> ※一般と個人年金と別々に行うこと

年間の支払保険料等 控除額
1万5000円以下 年間の支払保険料等の全額
1万5000円超 〜 4万円以下 年間の支払保険料等の全額 x 1/2 + 7500円
4万円超 〜 7万円以下 年間の支払保険料等の全額 x 1/4 + 1万7500円
7万円超 一律 3万5000円

新制度の所得税・住民税控除

新制度か否かの判断方法は、自身が契約している保険の契約日を確認し、契約日が2012年1月1日以降の場合は、新制度に該当する。

一般生命保険と介護医療保険と個人年金保険と分けて各々年間支払った保険料等の総額を求め、次表をもとに控除額を確認する。

年間支払っている保険料等とは、その年に支払った金額の合計から、その年に受け取った余剰金や割戻金を差し引いた金額である。

<所得税控除> ※一般と介護医療と個人年金と別々に行うこと

年間の支払保険料等 控除額
2万円以下 年間の支払保険料等の全額
2万円超 〜 4万円以下 年間の支払保険料等の全額×1/2+1万円
4万円超 〜 8万円以下 年間の支払保険料等の全額×1/4+2万円
8万円超 一律 4万円

<住民税控除> ※一般と介護医療と個人年金と別々に行うこと

年間の支払保険料等 控除額
1万2000円以下 年間の支払保険料等の全額
1万2,000円超〜3万2000円以下 年間の支払保険料等の全額×1/2+6000円
3万2000円超〜5万6000円以下 年間の支払保険料等の全額×1/4+1万4000円
5万6000円超 一律 2万8000円

新制度・旧制度の両方を契約している場合

一般生命保険料、個人年金保険料について新、旧の両制度の保険に加入している場合は、次の算出ルールとなる。一般の保険は新のみ、個人年金は旧のみなど1つの控除区分に対して新旧のどちらか片方のみの場合は、該当しない。

新制度の介護医療保険については、旧制度にはないため、新制度のルールをそのまま適用する。

<所得税控除> ※一般と個人年金と別々に行うこと

旧制度の適用控除額 控除額
4万円超え 上限5万円に対して旧制度の適用控除額のみで控除する
4万円以下 上限4万円に対して新制度の適用控除額と旧制度の適用控除額を合算して控除する

<住民税控除> ※一般と個人年金と別々に行うこと

旧制度の適用控除額 控除額
2万8000円超え 上限3万5000円に対して旧制度の適用控除額のみで控除する
2万8000円以下 上限2万8000円に対して新制度の適用控除額と旧制度の適用控除額を合算して控除する

毎年支払った金額を控除区分ごとに合計し、表に照らし合わせて金額を算出する。難しい計算式などを使用するわけではなく、自身が節税で得することなので実際に計算してみよう。

たとえば、旧契約の一般の生命保険料が10万円、新契約の介護医療分の保険料が10万円、旧契約の個人年金分の保険料が10万円を支払った人の場合は、旧契約の一般分と個人年金分が各々5万円となり、介護医療分が4万円となる。

合計は14万円だが、限度額が12万円のため、12万円に抑えられる。

2011年までは旧契約で10万円までの控除を受けていた場合、2012年以降に新しく介護医療の保険に加入した場合は控除額が増えメリットを実感するだろう。

しかし、一般の保険料で旧契約分の保険料が8万円、12年以降に新契約の一般の保険料が2万円の場合、旧契約は、8万円×1/4+2万5000円=4万5000円、新契約は2万円となる。新旧両方として適用すると4万5000円+2万円=6万5000円だが、新制度の上限の4万円が適用されるため4万円となる。

この場合は、新契約分は申告せずに、旧契約分のみの控除4万5000円の適用を選択するほうがよい。なお、新契約分を申告しないのは違法ではない。つまり、新旧の両方ある場合は、旧のみで申請する、新のみで申請する、両方の合算で申請するかは自身で判断が可能である。

生命保険料控除を受ける際の注意点

生命保険料控除について説明してきたが、控除を受ける際の注意点を再度整理していこう。制度を最大限に活用するためには大切なポイントである。

保険契約の締結日によって制度の振り分けが変わる

控除額の算出方法が契約している保険が旧か新で異なることを説明した。そのため、自身の契約している保険の契約日を確認し、旧契約の保険なのか、新契約の保険なのか確認しよう。

年末近くになると保険会社から届く、「保険料控除証明書」には、契約している保険が旧、新のどちらに該当するかが分かりやすく記載されている。

また、証明書に記載されてなく、自身での判断が不安な場合は、契約している保険会社に問い合せると回答してもらえるので問い合せるといいだろう。

新旧両方の契約があるとき、場合によっては、片方のみを適用するほうが節税になる可能性があるため、旧、新と別々の場合と両方の場合と算出し結果を確認しよう。

身体障害の補償特約は控除に入らない

新制度で特約に関する取り扱いが変わったことは説明したが、身体の障害だけを補償する傷害特約、災害割増特約については、生命保険料控除の対象から外れている。そのため、制度変更の前と後で控除額の変更が発生していることがあるので注意すること。

年末調整・確定申告が必要になるので申告を忘れずに

生命保険控除の概要から計算方法、控除額などについて解説した。この制度については、何もしないままでは控除を受けることができず、自身で生命保険控除の申告手続きを行う必要がある。

申告方法、申告タイミングは、年末調整もしくは確定申告となる。会社員等の場合は、年末調整の書類自体は、本人で書く場合と会社の総務・人事などの担当者が代理で書く場合など会社によって異なる。

年末調整の書類に合わせて「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」と保険会社から送られてくる「保険料控除証明書」をあわせて提出する。

冒頭で説明した、内容を知らなくても制度を利用している可能性があるというのは、書類は自身で会社に提出しているものの、細かい計算など手続きは会社が代理で行っているということだ。

個人事業主や自営業者など確定申告が必要な人については、確定申告時に申告を行う必要がある。忘れずに申告手続を行い、所得税、住民税の控除を受けよう。