給与収入について、受け取ってはいるものの、詳しくはわかっていないという人も多いだろう。この記事では、意外と知らない給与収入について、分かりやすく解説する。

給与収入に関するQ&A

資産運用
(画像=PIXTA)
Q


給与収入とその他収入の損益通算は?

給与所得者に不動産所得がある場合、その不動産所得が赤字の際は、給与所得から不動産所得の赤字をマイナスして所得税や住民税の計算ができ、結果的に納税額を減らすことが可能だ。

ただし、給与所得は所得税法上の損益通算の対象ではなく、所得税法上の損益通算の対象は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得となっている。これらの損益通算の対象となる所得にマイナスが出た場合、給与所得からそのマイナスを控除できる。

給与所得者に不動産所得がある場合、その不動産所得が赤字の際は、給与所得から不動産所得の赤字をマイナスして所得税や住民税の計算ができ、結果的に納税額を減らすことが可能だ。

ただし、給与所得は所得税法上の損益通算の対象ではなく、所得税法上の損益通算の対象は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得となっている。これらの損益通算の対象となる所得にマイナスが出た場合、給与所得からそのマイナスを控除できる。


Q


扶養に入るための給与収入の上限はいくら?

所得税法上の扶養の範囲は、所得金額が48万円以下となっている。給与収入の場合は、給与所得控除があるため、給与収入から給与所得控除を控除した金額が48万円以下であれば、扶養の対象となる。

具体的には給与収入が103万円以下であれば、扶養に入れることになる。

給与収入103万円-給与所得控除55万円=48万円

所得税法上の扶養の範囲は、所得金額が48万円以下となっている。給与収入の場合は、給与所得控除があるため、給与収入から給与所得控除を控除した金額が48万円以下であれば、扶養の対象となる。

具体的には給与収入が103万円以下であれば、扶養に入れることになる。

給与収入103万円-給与所得控除55万円=48万円


Q


給与収入と給与所得は何が違うの?

給与収入と給与所得は、似たような言葉ではあるが、意味は異なる。給与所得とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた後の金額のことを指している。

給与収入と給与所得は、似たような言葉ではあるが、意味は異なる。給与所得とは、給与収入から給与所得控除を差し引いた後の金額のことを指している。

給与収入と事業所得の区別は意外と曖昧?

所得税法上の給与所得と事業所得の区別は意外と曖昧なものでもある。

所得税法上の給与所得の定義は、「給与所得とは、使用人や役員に支払う俸給や給料、賃金、歳費、賞与のほか、これらの性質を有する給与に係る所得をいいます。」とされている。

一方、事業所得は、「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいいます。」となっている。

仮に、フリーランスとして取引先からある事務仕事を受けており、一定の報酬を受け取っている場合、その収入は給与(給与収入)なのだろうか、外注(事業所得)なのだろうか?

普通に考えれば外注となり、事業所得として申告しそうなものだが、この仕事が管理業務で、明確な納品もなく、委託料として毎月一定の金額を受け取る類の仕事であれば、「使用人として給与を受け取っている状態と変わらないのでは?」と言えなくもない。仕事の違いがあるとすれば、職場に出勤することなく、仕事をすることが許されているということぐらいである。

逆に、社員ということになってはいるが、自宅で仕事をしているテレワークの場合、どうなるだろうか。

普通に考えれば、給与(給与収入)になりそうだが、上述の例のように、職場に出勤することなく、また納品ごとにお金をもらうわけでもなく、通常業務を行っているものとして、ほぼ一定の収入を定期的に受け取っているのであれば、それほど大きな違いはないようにも思える。見方によっては、外注(事業所得)に見えなくもない。

所得税や住民税を計算するうえで、給与所得として計算するか、事業所得として計算するかによって、有利不利が大きく変わってくることがあるため、申告する側にとっても重要なことである。

給与所得と事業所得の分け方は?

給与所得と事業所得の分け方に明確な基準があるとは言えないが、考え方としては、次の最高裁の判例が参考になる。

《平成22年4月21日裁決》
「請求人は、F社に雇用されているにすぎず、F社からの収入は給与所得に該当する旨主張する。しかしながら、請求人とF社の間の請負基本契約及び当事者間の取決めによれば、
①請求人は、業務の遂行に関して、自己の責任において代替者を手配でき、その者が代替して業務を遂行できること
②請求人は、不可抗力により損害が生じた目的物に係る報酬をF社に請求できないこと
③請求人は、作業の方法や進行の段取りに関して、F社の指揮監督下にないこと
④請求人は、業務の遂行に関して、F社から時間的な拘束を受けていないことが認められる
⑤F社が請求人に無償で材料を支給し、用具等を貸与していることについては、合理的な理由が存することが認められる。

以上の諸要素を考慮すれば、請求人の業務は請負契約に基づくものであり、請求人は、自己の計算と危険において独立して業務を遂行していたものと認められるから、当該業務に係るF社からの収入は事業所得に該当する。」

つまり、給与収入か事業所得かは、雇用されているかどうかよりも、その仕事を受けている実態に応じて考えることになる。具体的には、判例内の①~⑤を考えながら、個別に判断することになる。

通勤手当と社会保険?

給与として受け取っている収入には、給与収入のほかに、通勤手当や出張旅費などの手当がつくことがある。所得税法上は、通勤手当や出張旅費は、給与所得の対象から外れることになっており、通勤手当には課税されていない(ただし、一定の範囲が定められている)。

しかし、社会保険料の計算では、通勤手当として受け取った分も含めて計算することになっており、社会保険料の算定の基礎となる標準報酬月額は、通勤手当等も含めて算出される。
つまり遠方から出勤していて、通勤手当を多く受け取っている人は、支払う社会保険料も上がり、将来の厚生年金の受取額にも反映されているというわけである。

給与所得と可処分所得?

給与所得と似た言葉に、可処分所得というものもある。可処分所得とは、給与収入から所得税、住民税、社会保険料などの公的な支出である非消費支出と呼ばれるものを差し引いた所得のことを指す。

イメージとしては、給与所得は所得税などの税金の計算上の所得のことを指し、可処分所得は、給与の手取り収入に近い、より生活に身近な所得と言える。

ちなみに、可処分所得から生活費などの支出を差し引いたものが、貯蓄になる。ファイナンシャルプランナーなどが家計の見直しなどで使う所得の意味は、可処分所得の意味合いが強いと言える。

クロヨンって何?給与所得者は不利なのか。

「クロヨン」とは、税務当局が給与所得者、事業所得者、農業所得者のそれぞれの所得をどの程度捕捉できているのかということを表している言葉である。

給与所得者は、給与収入から直接所得税を差し引く源泉徴収制度などによって、9割程度の所得が捕捉されているのに対し、事業所得者や農業所得者は、それぞれ6割程度、4割程度と考えられている。

「クロヨン」は、各所得者間の納税の不公平感を示す言葉としても使われている。実際に、所得税の納税額について、事業所得者や農業所得者らは、確定申告で収入や必要経費を自分で申告する自己申告を行っており、申告書の記載内容や決算の数字にもれやミスがある可能性は十分に考えられる。

また、個人事業者や農業所得者の場合、必要経費に私的な支出が含まれている場合があり得るなど、給与所得者と比べると、正確な所得を捕捉すること自体が難しいところもある。

給与所得者ならではの、申告しなくていい所得とは?

クロヨンという言葉があるように、給与所得者は、個人事業者や農業所得者よりも納税するうえで不利だといわれることがある。

しかし、給与所得者は、給与所得以外の所得が年間20万円以下であれば、その所得は申告しなくてもよいことになっている。この20万円に対しては課税されないことになるのである。

そもそも「年間20万円以下の収入は申告しなくてもいい」という話は、以下から来ている。

「1ヵ所から給与の支払いを受けている人で、給与所得および退職所得以外の所得の金額の合計額が20万円を超える人」は確定申告をしなければならない。

つまり、本来の意味としては、給与所得者でも、給与所得と退職所得以外の所得、例えばブログ収入などの副業による事業所得や、現物の金や仮想通貨の取引による雑所得などが年間20万円を超えている人は、確定申告が必要だと言っているのである。

ただ、逆の視点から考えると、1つの勤務先から給与収入を得ている給与所得者の場合、給与収入以外の所得が年間20万円以下なら、確定申告が不要だと言っているのである。

給与収入と年末調整

給与収入を受け取っている多くの給与所得者は、勤務先で年末調整を行うことで、確定申告が不要となり、税務手続きが非常に楽になっている。

本来であれば、所得を得ているすべての人が、税務申告をするわけだが、一定の給与所得者は年末調整で所得税額の計算および過不足精算が行われるので、確定申告が不要になっているわけである。

一般的に、年末調整を行うことで税金が還付されることは、よく知られている。所得税には、源泉徴収制度という税金の徴収システムがあり、給与の支払い時や税理士など士業への報酬支払時などに、毎回収入から所得税を差し引いて支払うことになっている。

この源泉徴収制度によって、間接的に支払いを受けるたびに、所得税を支払っていることになっているのである。

しかし、源泉徴収制度で毎月のように支払っている所得税は、大半が本来支払うべき1年間の所得税額よりも多くなるようになっている。

そのため、年末に改めて1年間の給与収入から本来支払うべき所得税額を計算し、多く納め過ぎている源泉徴収による所得税と、本来支払うべき1年間の所得税の差額を、年末調整還付金として還付されるようになっている。

つまり、年末調整の還付金というのは、ボーナスや収入といった類のものではなく、本来受け取るべきものが、ただ戻ってきただけということなのである。

あえて確定申告をしたほうがよい給与所得者は?

給与収入を得ている多くの給与所得者は、基本的に確定申告は必要ないが、以下の場合はあえて確定申告をしたほうがよいケースもある。

①給与以外に不動産所得や事業所得などがあり、その所得が赤字の場合
②医療費控除を受ける場合
③株式投資などの損失を翌期に繰り越したい場合
④自宅を新しく購入し、住宅ローン控除を受けたい場合
⑤年末調整後に扶養に入れる親族がいることに気づいた場合
⑥アルバイトなど、2ヵ所で源泉徴収されている給与収入がある場合

実際には、個々の状況によって変わってくるので、一概には言えないが、これらのケースは確定申告をしたほうがよい例としてよく挙げられる。