上手に年金を受け取るためにも、年金の課税についてはしっかりと知っておきたいところだ。年金にかかる税金の対策について、わかりやすく解説する。

年金にかかる税金のQ&A

資産運用
(画像=PIXTA)
Q


個人型確定拠出年金(iDeCo)が税金対策になるのはなぜ?

iDeCoが税金対策になるのは、掛金拠出時と年金等で受け取るときの両方で優遇税制が利用できるためだ。

掛金拠出時には、小規模企業共済等掛金控除の対象となり、掛金のすべてが所得控除額に利用できる。運用益もすべて非課税なので、複利運用するのにも有利になっている。

受取時に一時金として受け取った場合は、有利な税制の一つである退職所得控除の対象となり、年金として受け取った場合は、公的年金等控除が利用できる。

掛金を所得控除できることで、現役世代の所得税と住民税を軽減させ、年金受け取り世代となったリタイア後も比較的課税を軽くする方法が取られているため、税金対策になるといわれている。

iDeCoが税金対策になるのは、掛金拠出時と年金等で受け取るときの両方で優遇税制が利用できるためだ。

掛金拠出時には、小規模企業共済等掛金控除の対象となり、掛金のすべてが所得控除額に利用できる。運用益もすべて非課税なので、複利運用するのにも有利になっている。

受取時に一時金として受け取った場合は、有利な税制の一つである退職所得控除の対象となり、年金として受け取った場合は、公的年金等控除が利用できる。

掛金を所得控除できることで、現役世代の所得税と住民税を軽減させ、年金受け取り世代となったリタイア後も比較的課税を軽くする方法が取られているため、税金対策になるといわれている。


Q


個人年金保険や公的年金の税制は違うの?

公的年金も個人年金保険で受け取る年金の保険金も、所得の種類はどちらも雑所得である。しかし、同じ雑所得であっても、税法上の取り扱いは別のものになっている。

公的年金の場合は、公的年金の収入から公的年金控除をして計算するが、個人年金保険の場合は、公的年金控除ではなく、支払った保険料を元に控除額を計算する。そのため、両者はまったく別の計算方法で計算することとなる。

公的年金も個人年金保険で受け取る年金の保険金も、所得の種類はどちらも雑所得である。しかし、同じ雑所得であっても、税法上の取り扱いは別のものになっている。

公的年金の場合は、公的年金の収入から公的年金控除をして計算するが、個人年金保険の場合は、公的年金控除ではなく、支払った保険料を元に控除額を計算する。そのため、両者はまったく別の計算方法で計算することとなる。


Q


iDeCoやNISAを年金で受け取ると、公的年金に影響はある?

iDeCoは公的年金控除の対象なので、公的年金と合算して所得税などを計算する。つまり、公的年金とiDeCoで受け取る年金の額を合算した金額が多くなれば、その分所得税や住民税が増えることになる。そのため、捉え方によっては公的年金への課税が増え、受取額が減らされることになるとも言えなくもない。

特に所得税は、所得が増えるにつれて税率が段階的に上がっていく累進課税制度のため、注意が必要である。

一方、NISAは言ってみればただの非課税制度なので、NISAでの受取額、正しくはNISAで投資した投資元本とその利益がいくらであっても、他の所得に影響することはない。当然、公的年金にも影響はない。

iDeCoは公的年金控除の対象なので、公的年金と合算して所得税などを計算する。つまり、公的年金とiDeCoで受け取る年金の額を合算した金額が多くなれば、その分所得税や住民税が増えることになる。そのため、捉え方によっては公的年金への課税が増え、受取額が減らされることになるとも言えなくもない。

特に所得税は、所得が増えるにつれて税率が段階的に上がっていく累進課税制度のため、注意が必要である。

一方、NISAは言ってみればただの非課税制度なので、NISAでの受取額、正しくはNISAで投資した投資元本とその利益がいくらであっても、他の所得に影響することはない。当然、公的年金にも影響はない。

公的年金と個人年金保険、iDeCoの受取時の課税の違い

公的年金、個人年金保険、iDeCo、どれも老後の生活費を補てんしてくれる年金制度として利用されることを想定しているが、課税の仕組みはそれぞれ異なる。

具体的には、公的年金控除、退職所得、雑所得、一時所得となり、仕組みを使い分けながらできるだけ納税額を減らし、多くの年金額を受け取れるように工夫をすることが、上手な年金の受け取り方につながる。

複雑な仕組みなので、把握するのは大変かもしれないが、重要なことである。

公的年金の受取時の課税

公的年金は、公的年金控除の対象となる雑所得として取り扱われる。

雑所得は総合課税のため、雑所得として所得金額を計算した後は、給与所得など他の所得と合算した後に、扶養控除や生命保険料控除、医療費控除などの所得控除を控除し、残った課税所得金額に税率をかけて納税額を計算することになる。

iDeCoの受取時の課税

iDeCoも年金で受け取る場合は、公的年金と同様の計算方法で取り扱われる。

iDeCoの年金受取額と公的年金の両方を受け取る場合、受取額を合算し、その後で公的年金控除を控除し、雑所得として所得金額を計算という流れになる。

ただし、iDeCoの場合、年金受け取りのほかに一括受け取りという選択肢もあり、一括受け取りを選択した場合は、退職所得として取り扱われる。退職所得は、退職所得控除を控除した後に1/2にすることで計算する。

個人年金保険の受取時の課税

個人年金保険からの年金受取も、公的年金やiDeCoと同様に雑所得になるが、計算方法が異なる。

公的年金等は、収入から公的年金控除を控除できたが、個人年金保険はその代わりに、支払った保険料の額を基準に、収入から差し引く必要経費を計算する。

例えば以下のような計算式である。

 必要経費=年金年額×払込保険料の合計額/年金の総支給見込額(定額型年金)

上のような式で計算した必要経費は、保険会社からの通知書で確認でき、その通知書を元に確定申告で所得税を申告する。

また、個人年金保険もiDeCoのように、一括受け取りが可能である。ただし個人年金保険の一括受け取りは、一時所得という種類の所得として取り扱う。

一時所得の計算は、収入から必要経費(支払った保険料)を差し引いた後に、50万円を特別控除して計算する。こちらも、年金受け取りと同様、保険会社から通知書が来るので、それを元に確定申告を行う。

イメージとしては、個人年金保険の必要経費は支払った保険料のことで、支払った保険料以上の保険金を受け取った場合は、増えた分に対して課税されるという認識でほぼ間違いない。

現在は、生命保険に加入することで大きな利益が出ることが少なくなってきたため、個人年金保険の受け取りに対する課税をそれほど心配することはないだろう。

iDeCoへの拠出金が所得控除できることのメリット

iDeCoのメリットは、iDeCoへの拠出金が全額所得控除できることである。

例えば、自営業などの国民年金加入者の場合、最大年額81万6000円まで拠出できる。仮にこの自営業者の所得税率が10%だとすると、所得税だけで年間8万1600円の軽減になる。さらに住民税10%を加えると、16万3200円も税額負担が減ることになる。

このように考えると、かなり大きな節税になると言われるのもうなずける。

iDeCo
(iDeCo公式サイトより)

iDeCo一括受取時、退職所得控除の具体例

iDeCoを一時金で受け取る場合は、退職所得という非常に有利な税制を利用できることもメリットの一つである。

具体的には、退職所得控除額内の金額でiDeCoを受け取る限りは、実質非課税で受け取ることが可能だからである。

退職所得控除額の計算式は以下のようになっている。

●勤続年数が20年までの場合
40万円×勤続年数(80万円より少ないときは80万円)
●勤続年数が20年を超える場合
70万円×勤続年数-600万円
障害者となったことで退職した場合は、計算した金額に100万円を加算する。

仮にiDeCoへの拠出を35歳から60歳までの25年間続けた場合は、1150万円まで非課税で受け取れる。

掛金拠出時は、全額所得控除の対象となって所得税や住民税が軽減される。受取時も退職所得控除で所得税や住民税がかからないとなれば、資産形成の積立としては、最大の税効果が得られる制度だと言える。

ただしiDeCoの一括受取のほかに、勤務先からの退職金や共済などの複数の退職所得の受け取りがある場合は、退職所得控除額の計算方法が変わってくることがあるので、注意が必要である。

個人年金保険の生命保険料控除

国民年金や厚生年金、iDeCoでの拠出金は、全額が所得控除の対象である。

しかし、個人年金保険への掛金は、全額が対象となるわけではない。個人年金保険の場合は、生命保険料控除の対象となり、掛金の一部が所得控除の対象になる。

具体的には次の式で控除額を計算する。

年間の支払保険料等控除額
2万円以下支払保険料の全額
2万円超 4万円以下支払保険料等×1/2+1万円
4万円超 8万円以下支払保険料等×1/4+2万円
8万円超一律4万円

新契約(2012年1月1日以後に締結した保険契約等)

2011年12月31日以前に契約した個人年金保険の場合、控除額が少し多くなっている。

年間の支払保険料等控除額
2万5000円以下支払保険料の全額
2万5000円超 5万円以下支払保険料×1/2+1万2500円
5万円超 10万円以下支払保険料×1/4+2万5000円
10万円超一律5万円

旧契約(2011年12月31日以前に締結した保険契約等)

旧契約であっても、控除額は最大5万円であり、公的年金やiDeCoのように全額が所得控除の対象になるわけでない。

掛金拠出時の税効果を求めるのであれば、個人年金保険よりも、まずは公的年金やiDeCoを検討するべきである。

公的年金とiDeCoやNISAの違い

国民年金や厚生年金などの公的年金とiDeCoやNISAなどとの大きな違いは、年金を一生涯受け取れるところである。公的年金のように一生涯受け取れる年金のことを終身年金という。

終身年金の公的年金を年金受け取りプランの基準に据えて、iDeCoなどでの受け取り方を工夫することが上手な年金の受け取り方法である。

受け取り方によって違う税金の制度の違いを利用し、できるだけ納税額を減らし、手取り額を多くしたいところである。

iDeCoの一括受け取りで、退職所得として受け取る

退職所得控除で、非課税で受け取れる枠があるのであれば、せめてその枠いっぱいまでiDeCoを一括受け取りで受け取りたいところである。

iDeCoの受け取り方には、「一括受け取り」「年金受け取り」「一括と年金を組合せて受け取る」の3タイプがある。

退職所得の非課税枠いっぱいまで一括で受け取り、それ以外を年金で受け取ることも可能ということだ。

iDeCoでの年金受け取り後に、公的年金に移行する。

公的年金には、繰下げ受給という受け取り方がある。繰下げ受給は、70歳まで受取開始を繰下げすることができ、最大で42%も年金受取額が増額する仕組みとなっている。資産運用でここまで受給額を増やそうとするとかなりリスクがあり、難しいだろう。

公的年金の繰下げ受給であれば、ノーリスクでほぼ確実に受給額を増やせるため、資産運用に頼るよりも確実な方法である。

公的年金の繰下げ受給による年金増額効果を利用するためにも、年金受給を開始する必要が出てくるまでの間は、iDeCoなどの制度を使って積み立てたお金で生活費を賄い、不足してきたところで、年金の受給開始を検討するという方法も考えられる。

繰下げ受給は、1ヵ月単位でいつでも開始ができるので、とりあえず繰下げ受給を申請しておき、後で好きなタイミングで受給開始を申請するという柔軟な受け取りも可能である。

また、公的年金とiDeCoの両方から年金を受け取ることによって所得が増加することを回避し、所得税や住民税が増加することを抑える効果も期待できる。

複雑ではあるが、年金を取り巻く制度を理解し、賢く選択かつ利用しながら、上手に年金を受け取りたいところである。