特定扶養親族
(画像=PIXTA)

高校生や大学生の子どもがいる人が受けられる扶養控除として「特定扶養親族」という区分があることをご存知だろうか。控除額が38万円から63万円に増えるので節税効果が高い。しかし、イメージが先行しがちで、うっかりミスが生じやすい。ここでは注意すべきポイントを3つ解説する。

鈴木まゆ子
鈴木まゆ子
税理士・税務ライター
中央大学法学部法律学科卒業後、(株)ドン・キホーテ、会計事務所勤務を経て2012年税理士登録。「ZUU online」「マネーの達人」「朝日新聞『相続会議』」などWEBで税務・会計・お金に関する記事を多数執筆。著書「海外資産の税金のキホン(税務経理協会、共著)」

目次

  1. 特定扶養親族に関するQ&A
  2. 子どもが特定扶養親族だと控除額が上がる
  3. 特定扶養親族とは何か
  4. 特定扶養親族と扶養親族・年少扶養親族との違い
  5. 2020年分から扶養控除を受けるための条件が変わった
  6. 注意すべきポイントは3つ
  7. 特定扶養親族に間違いがあったときの対処法

特定扶養親族に関するQ&A

最初に特定扶養親族に関して、よくある質問3つに答えよう。

Q


特定扶養親族って何?

扶養控除の対象となる扶養親族のうち、控除を受けようとする年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の人をいう。なお、扶養控除の対象となる扶養親族は、控除を受けようとする年の12月31日時点で16歳以上の人全般を指すが、ほかにも「6親等内の血族または3親等内の姻族」といった細かい条件がある。

扶養控除の対象となる扶養親族のうち、控除を受けようとする年の12月31日時点で19歳以上23歳未満の人をいう。なお、扶養控除の対象となる扶養親族は、控除を受けようとする年の12月31日時点で16歳以上の人全般を指すが、ほかにも「6親等内の血族または3親等内の姻族」といった細かい条件がある。


Q


特定扶養親族がいるときの扶養控除の額はいくら?

63万円だ。通常の扶養控除の額は38万円なので約1.6倍の控除額となる。なお、扶養控除は所得から差し引かれる。特定扶養親族の扶養控除の節税効果を所得税額ベースで考えると、適用される税率が20%なら年間で12万6,000円、33%なら年間で20万7,900円になる。

63万円だ。通常の扶養控除の額は38万円なので約1.6倍の控除額となる。なお、扶養控除は所得から差し引かれる。特定扶養親族の扶養控除の節税効果を所得税額ベースで考えると、適用される税率が20%なら年間で12万6,000円、33%なら年間で20万7,900円になる。


Q


2020年に特定扶養親族の所得制限が変わった?

まず、2018年度の税制改正で特定扶養親族を含めた扶養親族の所得要件が変わった。2019年分まで、扶養控除を受けるには、扶養親族の年間の合計所得金額が38万円以下でなければならなかった。しかし2020年分以降の所得要件は「48万円以下」になった。

2018年度の税制改正で特定扶養親族を含めた扶養親族の所得要件が変わった。2019年分まで、扶養控除を受けるには、扶養親族の年間の合計所得金額が38万円以下でなければならなかった。しかし2020年分以降の所得要件は「48万円以下」となった。

子どもが特定扶養親族だと控除額が上がる

扶養控除は子どもを育てている人にとって大事な節税策の一つだ。年末時点で16歳以上の親族を扶養していると38万円の所得控除が受けられる。子どもが高校生や大学生、専門学校生といった一番教育にお金のかかる世代だとこの控除額がさらに増える。

年末時点で扶養する子が19歳以上23歳未満だと扶養控除は63万円になる。所得税ベースで考えると、適用税率が20%なら節税効果は7万6,000円から12万6,000円に、33%なら12万5,400円から20万7,900円に、節税効果は跳ね上がる。我が子が特定扶養親族に該当するか否かは節税を考える上で非常に大事なポイントだ。

特定扶養親族とは何か

特定扶養親族とは既述のとおり、扶養控除の対象となる扶養親族のうち、年末時点で19歳以上23歳未満の者を指す。実際には生年月日で次のように細かく決められている。2020年(令和2年)分だと次のようになる。

  • 38万円の扶養控除の対象となる扶養親族の生年月日:2005年1月1日までに生まれた人
  • 63万円の扶養控除の対象となる特定扶養親族の生年月日:1998年1月2日から2002年1月1日までに生まれた人

加えて、70歳以上の扶養親族がいると48万円か58万円の扶養控除が受けられる、という制度がある。これも生年月日で判断する。

このほか、特定扶養親族を含めた扶養親族が扶養控除を受けるには、次の4つの要件すべてを満たしていることが必要だ。「我が子だから」や「一緒に暮らしているから」だけで扶養控除が受けられるわけではない。

扶養控除を受ける4つの要件
(画像=ZUU online)

●要件1:民法上の親族であるか、里子などに該当すること

民法上の親族とは「6親等内の血族または3親等内の姻族」をいう。配偶者は含めない。また、都道府県から養育を委託された里子なども扶養控除の対象になる。

●要件2:年間の合計所得金額が48万円以下であること

合計所得金額とは給与所得や事業所得、雑所得など10種類ある所得の年間合計額をいう。2019年までは38万円以下だったが、2018年度の税制改正で2020年分から48万円以下となった。つまり、子供の合計所得金額が48万円以下なら扶養控除の対象になり得る。

なお、所得金額の計算の仕方は所得ごとに違う。事業所得や雑所得なら「利益≒所得」と考えてよいが、給与所得は年末調整や退職後にもらう源泉徴収票で確認する必要がある。

●要件3:納税者本人と生計同一

生計同一とは「同じ財布のお金でご飯を食べて生活していること」をいう。同居か別居かは関係ない。留学や寮生活で子どもと別居していても、生活費や教育費を送っているなら生計同一である。

●要件4:青色事業専従者や白色事業専従者として給与をもらっていないこと

納税者本人が個人事業主であるときの注意事項だ。子どもを自分の事業の専従者としていて、かつ給料を支払っているなら、その給料は事業所得計算上の経費になる。もし子どもへの給料を経費に計上したのなら扶養控除は受けられない。二重控除をしてはいけないためだ。

特定扶養親族と扶養親族・年少扶養親族との違い

特定扶養親族は扶養親族、年少扶養親族と混同しやすい。どう違うのかをここで確認しよう。

特定扶養親族・扶養親族・年少扶養親族の違い
(画像=ZUU online)

●扶養親族との違い

扶養親族は特定扶養親族を含め「納税者が養っている親族」を指す。既述の要件1から要件4をすべて満たした者が扶養親族だ。このうち、扶養親族が16歳以上だと扶養控除の対象となって38万円の所得控除が受けられる。さらに扶養親族が19歳以上23歳未満だと控除額が増えて63万円の所得控除が受けられる。

●年少扶養親族との違い

年少扶養親族は扶養親族のうち16歳未満の者を指す。年少扶養親族は扶養控除の対象にならない。これが一番の大きな違いだ。

ただし、年少扶養親族が税計算に影響することもある。それは、住民税の非課税になるかどうかを確認するときだ。住民税の均等割・所得割いずれかが非課税になるかどうかを判定する際、「扶養人数」が計算の要素となる。この扶養人数には年少扶養親族も含める。

このほか、2020年分から始まった「所得金額調整控除」でも年少扶養親族は重要だ。この控除はサラリーマンなど給与所得者に扶養親族がいれば受けられる仕組みだが、対象となる扶養親族の年齢制限は「23歳未満」とあるだけだ。つまり年少扶養親族も対象となる。

2020年分から扶養控除を受けるための条件が変わった

扶養控除を受けるための要件の一つは、子どもなどの扶養親族の合計所得金額が「48万円以下」であることだ。すでに触れたが、2019年分までこの条件は「38万円以下」だった。

ただし、高校生や大学生の子供がアルバイト先から収入をもらっているだけなら気にしなくていい。これまでどおり「給与年収103万円以下」で判定できる。なぜこれでいいかというと、扶養対象の条件に影響する「基礎控除」が10万円増え、アルバイト収入(給与収入)から差し引く「給与所得控除」が10万円減ったからだ。

扶養控除の対象になる親族は「課税される所得がない人」だ。アルバイトをしている子供については「給与所得-基礎控除」で計算し、0円以下なら扶養控除の対象になる。「合計所得金額48万円以下」というのは「いくら儲けても基礎控除の48万円以下なら納税義務がないので、養ってくれる人の扶養控除対象にしていい」という意味である。

一方、給与所得は「給与年収-給与所得控除」で計算するが、この給与所得控除が10万円減った。最低ラインの給与所得控除はこれまで65万円だったが55万円になったのだ。

つまり、2019年分までは「103万円-65万円-38万円」で計算していたが、2020年以降は「103万円-55万円-48万円」で計算する。計算の内訳は変わるが結果は同じ0円だ。だから子供のアルバイト先が1カ所だけなら103万円を目安にしていい。

しかし子供がYou Tuberやアフィリエイトで稼いでいるなら正確に合計所得額を計算しなければならない。

注意すべきポイントは3つ

1. 年齢

特定扶養親族に関しては「高校生や大学生の子どもが対象」というイメージが強い。分かりやすい反面、それが落とし穴になる。年齢も間違えやすいものの一つだ。

年齢については、必ず生年月日で確認しよう。特に年末調整では注意したい。12月上旬に年末調整を受けた時点で18歳の子も、年末に誕生日が来るのなら特定扶養親族になる。

また高校生や大学生だからといって必ず特定扶養親族になるわけではない。浪人や留年をしていると、63万円控除を受けられるのに対象外と判断してしまったり、逆に対象外なのに間違って申告してしまったりするケースがある。学生かどうかは控除には関係ない。

2. 年間の合計所得金額

「年間の合計所得金額」も普段なじみがないだけに間違えやすい。年間の合計所得金額は「手取り」とも「額面額」とも違う。所得税ならではの計算の仕方をするので注意が必要だ。違いを分かりやすくするために、ここで簡単な例を挙げる。

所得税では「どう稼いだか」によって所得を10種類に区分してから計算する。そのため、子どもがアルバイトで稼いだか、You Tuberとして稼いだかで所得区分は変わる。同じ100万円でも所得額は異なるのだ。

アルバイトで稼いだのなら、給料は給与所得に当たる。既述のとおり、今年分から給与所得控除は55万円なので「100万円-55万円=45万円」が給与所得だ。48万円以下なので扶養控除が受けられる。

You Tuberとして100万円を稼いだなら、収入は事業所得か雑所得になる。いずれも「総収入金額-必要経費」で所得額を計算する。100万円の売上なら総収入金額になる。You Tubeで稼ぐにあたり、支払った経費が3万円なら97万円が所得額となる。48万円を超えるので、親は扶養控除を受けられない。

今はどこでも稼げる時代だ。子どもがこっそりインターネットで稼いでいないかどうか、目を光らせなくてはならない。

3. 納税者本人と生計が同一

「納税者と生計が同一」も控除の条件だが、「生計が同一」で間違えやすい。既述のとおり、納税者の稼ぎで子どもが食べているなら同居・別居関係なく「生計同一」だ。ただし、別居先が海外なら送金証明や親族関係の証明が必要になる。

両親が離婚したケースに注意。別れたパートナーと暮らしている我が子に送金し、扶養控除を受けようと考えても、元夫・元妻が扶養控除を申告しているかもしれないからだ。両親が同時に同じ子どもで扶養控除を受けることはできない。二重控除にならないよう、相手と調整する必要がある。

特定扶養親族に間違いがあったときの対処法

特定扶養親族の内容に間違いがあったときは速やかに修正しよう。

会社員なら、年末調整のやり直しができる可能性がある。年末調整関連書類を提出してすぐに気づいたのなら、会社の総務か経理に伝えよう。

ただし、年内最後の給料で年末調整が行われたのなら難しいかもしれない。1人の間違いのためにほかの関連書類をすべて修正しなくてはならないからだ。このケースだと「確定申告するように」と言われる可能性が高い。

確定申告は翌年3月15日が申告・納税の期限だ。還付請求なら年明けすぐに申告できるが、納税のための申告は2月16日以降になる。とにかく早めに対処するのが肝心だ。

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