本記事は、高田 一洋氏の著書『マンション売却の錬金術:「マンションを売りたい」と思ったら最初に読む本』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
ネット活用でリフォーム費用を抑える新しい選択肢
中古マンションの売却において、購入希望者からの印象を良くするために、ちょっとしたリフォームや補修を検討することがあります。たとえば、クロスの汚れや剥がれ、床材のキズ、水回りの古さなど、生活に支障はなくても見た目に関わる部分は、内見時の評価に直結します。
とはいえ、従来のリフォーム業者に依頼すると、営業・現地調査・見積もりといった手間や中間マージンが発生し、費用がかさむことも少なくありません。売却前に数十万円もかけるのはためらわれるという方も多いでしょう。
そこで近年注目されているのが、インターネットを活用して、リフォーム業者と直接つながるマッチングサービスの存在です。
「くらしのマーケット」のようなサービスが普及
くらしのマーケットやリフォマといったプラットフォームでは、クロスの貼り替え、ハウスクリーニング、水栓の交換といった軽微な工事から、間取り変更を伴う大規模リフォームまで、幅広い依頼が可能です。
特徴的なのは、事前に金額が明示されていたり、口コミや評価をもとに業者を選べる仕組みになっている点です。これにより、相見積もりを取らずともある程度の相場感をつかむことができ、自分に合った業者を効率よく選べます。
私が携わった案件でも、内装の一部だけを低コストで直したことで、見た目の印象が改善し、成約につながったというケースがありました。売却価格を大きく変えるほどではなくても、反響数や成約スピードに明らかな違いが出ます。
ちょっと直すだけで印象は変えられる
たとえば、剥がれたクロスを一面だけ貼り替える。古びたコンロだけを少額で交換する。浴室の鏡だけ新調する。こうした数千円から数万円の作業でも、買い手の印象を大きく左右します。大規模なリフォームは必要なくても、放置されている感が出てしまう箇所を減らすだけで、大切にされた物件という印象を与えることができます。
これらの対応を、従来型の業者に一括で依頼すると中間コストが加算されがちですが、ネットのマッチングサービスで個別に依頼すれば、コストを抑えつつ必要な部分だけを的確に直せます。なにより、予算と納期のバランスを自分で調整できるのが大きなメリットです。
自分で手配する際の注意点も忘れずに
もちろん、マッチングサービスは万能ではありません。中には対応の質にばらつきがある業者も存在します。選ぶ際は、レビュー件数の多さや評価スコア、実際の施工写真、直近の対応エリアや施工可能日などを丁寧に確認し、信頼できる相手に依頼するようにしましょう。また、不動産会社に事前に相談しておくことで、売却のタイミングに合わせた段取りや、写真撮影・内見時に支障の出ない施工スケジュールが組みやすくなります。物件の見せ方を考慮した提案をしてくれる会社であれば、どこを直すと効果的かのアドバイスも受けられるはずです。
リセールの掟
ちょっとした手直しが印象を変える。ネットの力で賢く整える。
電気を止めると、買い手の意欲も消える
中古マンションを売却するとき、多くの売主が見落としがちなのが、電気の契約をそのままにしておくことです。すでに住んでいない場合、電気代や水道代を節約しようと解約してしまう人もいますが、これは売却活動において大きなマイナスとなります。
実際にあった話ですが、売主が電気契約を解約していたため、内見者が部屋に入っても真っ暗で、部屋の全体像がつかめず、5分も経たずに帰ってしまったことがありました。その後、電気を復旧して照明をつけて再度案内したところ、まったく同じ物件とは思えないほどの好印象に変わり、すぐに申し込みになりました。
明るさは第一印象を大きく左右する
人は空間に入った瞬間の雰囲気から、物件の良し悪しを判断するものです。照明のない空室では、部屋の広さや明るさを体感することができず、印象が悪くなりがちです。とくに夕方や曇りの日などは自然光だけでは不十分で、部屋全体がくすんで見えてしまうことがあります。
一方、照明が整っているだけで、内見者の滞在時間は延び、好印象を持ってもらえる確率も上がります。とくに空室では、家具や生活感がない分、光の印象が空間全体の評価に直結します。
電気代は「販促費」と考える
空室状態で電気を契約し続けることにためらいを感じる人もいますが、毎月の基本料金と少量の使用料を合わせても、かかるのは数千円程度です。そのわずかなコストで成約の可能性が高まるなら、売却活動の一環として必要な経費と割り切るべきです。
また、ネットに掲載する写真を撮影する際も、照明が使えることで明るく魅力的な画像になります。暗くて陰気な印象の写真では、そもそもクリックされない可能性もあります。写真の第一印象が、問い合わせの有無を左右するのです。
見落とされがちな生活インフラにも注意
水道も可能な限り使用できる状態にしておくことが望ましいです。長い期間、水が流れないとトイレやキッチン等の封水トラップの水が切れてしまい、悪臭が発生したり、害虫が入ってくる可能性があります。悪臭が発生している物件は成約にならないので、定期的に水を流しておくことをおすすめします。
実際の生活が想像できる環境を整えることは、物件の魅力を伝えるうえで欠かせません。節約の意識も大切ですが、それ以上に売却の成功を優先すべき場面があります。
リセールの掟
節約より印象。電気は切らずに希望を灯す。
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産売買仲介営業・マンション販売・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師などを務める。自身の住み替え実体験や豊富な不動産知識に加え、20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。人気YouTubeチャンネル「東京不動産マニア」に出演中。著書に『高級マンション超活用術』(みらいパブリッシング)がある。
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