本記事は、高田 一洋氏の著書『マンション売却の錬金術:「マンションを売りたい」と思ったら最初に読む本』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

マンション売却の錬金術
(画像=78art/stock.adobe.com)

不動産会社が作ってくれた販売ページのチェックの仕方

信頼できる不動産会社に売却を依頼したとしても、そのまま任せきりにするのはおすすめできません。なぜなら、実際に公開される販売ページの内容によって、反響の数も売却価格も大きく変わってくるからです。特にポータルサイトの物件紹介ページは、買い手との最初の接点となる場所です。ここでの印象が悪ければ、どれだけ条件の良い物件でも検討対象から外されてしまいます。
広告づくりの実務は不動産会社の役割ですが、売主としてページのチェックポイントを把握しておくことで、伝え方のミスや情報の見落としを防ぐことができます。

写真の明るさ・順番・構図を見る

まず確認したいのは、写真の質と配置です。室内が明るく撮れているか、生活感が出すぎていないか、写真が傾いていないかをひとつずつチェックします。特に1枚目に何の写真が使われているかは重要です。検索一覧で最初に表示されるため、ここで興味を引けなければ詳細ページを開いてもらえません。
また、写真の順番にも意味があります。検討者が最も関心を持つリビングや眺望を前半に配置し、水回りや収納、共用部などをそのあとに見せることで、読み手の印象が整理されやすくなります。掲載枚数が多いだけでなく、構成に配慮があるかどうかもポイントです。

情報が正確か、重複がないかを確認する

物件概要や設備の記載が正確であるかも見落とせません。築年数、間取り、管理費などの数字に誤りがないか、また項目ごとに同じ内容が繰り返されていないかも確認しましょう。情報が散らばっていたり重複していたりすると、全体が読みづらくなり、信頼感を損なう原因になります。
とくに気をつけたいのは、表現が誤解を招いていないかという点です。たとえば「南向きで明るい部屋」と書かれていても、実際には隣の建物の影で日当たりが限定的なケースもあります。期待と現実がかけ離れていると、問い合わせはあっても内見でがっかりされて終わってしまいます。読み手の視点に立ち、誤解のない表現になっているかを丁寧に確認しておきましょう。

キャッチコピーと文章のトーンに注目する

物件ページで最初に読まれるキャッチコピーは、第一印象を決定づける大切なパートです。ここが「駅近」「眺望良好」といった一般的なフレーズだけで構成されていると、他の物件と差別化ができません。暮らしの情景が浮かぶようなコピーになっているか、読み手の心を動かす言葉が使われているかを見てみましょう。
説明文のトーンもあわせて確認します。無機質な説明ばかりではなく、買い手がそこで暮らすイメージを持てる内容になっているかがポイントです。また、誤字脱字や表現の過不足がないかもチェック対象です。丁寧に書かれた文章は、不動産会社の仕事ぶりを反映しています。

他の物件と比較して、自分のページを客観視する

可能であれば、同じエリア・価格帯の物件と並べて見てみると、自分の物件がどう見えているかを客観的に把握できます。写真の印象、キャッチコピーの言葉選び、説明文の読みやすさなどを比較することで、他と比べて強みがあるかどうかが見えてきます。
販売ページは単なる情報提供ではなく、「選ばれるためのプレゼンテーションの場」です。不動産会社に任せっぱなしにせず、自分の目でも内容をチェックし、必要があれば修正を依頼する。そのひと手間が、売却価格に跳ね返ってくる可能性は十分にあります。

リセールの掟
販売ページは必ず目を通し、言葉と写真が買い手に伝わる設計になっているかを確認する。

不動産は希少性が大事、ひとつの会社に依頼する

不動産を高く売るためには、ただ情報を広く出せばよいというものではありません。売却活動においては、あえて「どこにでも載っていない」状態をつくることで、買い手の関心を引きつけるという戦略も有効です。これはマーケティングの基本である希少性の原理が、不動産にもそのまま当てはまるということです。
実際には、複数の不動産会社に同時に依頼することで、同じ物件情報がネット上に乱立してしまうケースが少なくありません。SUUMOやHOME’Sで検索すると、同じ写真、同じ間取りの物件が何件も並んで表示されることがあります。買い手はそれを見て、「売れ残っているのでは」「どこでも扱っているから特別感がない」と感じてしまいます。
さらに、不動産会社同士で価格や条件の表記が異なると、見る側は混乱します。「この物件は実際いくらなのか」「管理費はどっちが正しいのか」といった不信感が生まれると、せっかくの魅力が霞んでしまいます。同じ情報を複数の窓口から発信すれば、チャンスが増えると思いがちですが、印象管理ができていないと逆効果になってしまうのです。

専任媒介契約で一貫性と希少性をつくる

こうした事態を防ぐために効果的なのが、専任媒介契約です。これは、売却活動をひとつの不動産会社に任せる契約方式で、売主側から見れば、情報の管理や見せ方を一本化できるというメリットがあります。
専任契約であれば、物件情報が整った形で市場に出され、広告の内容やタイミングにも戦略が反映されます。
その結果、買い手に対して「この会社だけが扱っている物件かもしれない」という印象を持ってもらいやすくなります。すると、「今動かないと買えないかもしれない」という心理が働き、反響につながることも多くなります。
担当者も「自分の責任で売り切る」という意識を持ちやすくなり、広告づくりにも熱が入りやすくなります。売主との連携もスムーズになり、進捗状況の報告や価格戦略の相談も密に行えるため、結果としてスピード感のある売却が実現しやすくなります。

一般媒介契約は見た目の自由さと裏腹のリスクがある

一方、複数の会社に依頼できる一般媒介契約は、一見すると間口が広がるように思えるかもしれません。しかし、どの会社も「うちで成約にならないかもしれない」と考えやすいため、広告にかける熱量が薄まりがちです。
さらに、写真や説明文の内容が会社ごとにばらばらになる、掲載タイミングがまちまちになる、問い合わせ対応のスピードに差が出るなど、全体の印象が乱れるリスクもあります。結果として、買い手に与える印象が悪くなり、売却価格やスピードに悪影響を及ぼす可能性があります。
場合によっては、不動産会社同士が早く決めようと競い合い、価格交渉を急いで進めてしまうこともあります。売主の希望価格よりも低く売れてしまうケースがあるのは、このような構造によるものです。

情報は広く出せるが、管理は一社に任せる

専任媒介契約にすると、情報の流通が狭まってしまうのではと心配する方もいますが、その点は心配ありません。不動産会社は、専任契約を結んだ場合、レインズと呼ばれる業者間情報システムに物件を登録する義務があります。これにより、他の不動産会社からの紹介も可能となり、結果的に市場全体への広がりは保たれます。
つまり、売主としては「情報の質と見せ方」を一社に集約しながら、「買い手との接点」は広く持てるという、バランスの取れた売却が実現できるということです。手間をかけずに、戦略性と信頼性を両立するには、専任媒介という選択がもっとも理にかなっています。

リセールの掟
売却は一社に任せて戦略を統一し、希少性と信頼感を保ちながら高値成約につなげる。

デジタル資産とWeb3
高田 一洋(たかだ・かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産売買仲介営業・マンション販売・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師などを務める。自身の住み替え実体験や豊富な不動産知識に加え、20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。人気YouTubeチャンネル「東京不動産マニア」に出演中。著書に『高級マンション超活用術』(みらいパブリッシング)がある。

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