本記事は、高田 一洋氏の著書『マンション売却の錬金術:「マンションを売りたい」と思ったら最初に読む本』(ぱる出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

マンション売却の錬金術
(画像=Dilok/stock.adobe.com)

東京のマンションの値段が下がらない決定的な理由

0.6%の土地に人口の11%が住んでいるという現実

まず大前提として、東京は日本の中でも極めて特殊なエリアです。日本の国土面積に占める東京都の割合は、わずか約0.6%。ところが、そこに日本の人口の約11%が集中しているというのが現実です。
つまり、極めて限られた土地の中に、全国の1割以上の人が暮らしている。これだけで、「土地が足りない」「住宅が足りない」という構造的な需給ギャップが存在し、それが不動産価格の底堅さにつながっています。
特に住宅需要が集中しているのは、東京都の中でも23区、さらにその中核となる「都心6区(千代田・港・中央・新宿・文京・渋谷)」です。このエリアはビジネス・行政・教育の拠点が集まり、生活の利便性が高く、価値の高い不動産が集中しています。

駅近+都心の二重条件が強さの源

さらに細かく見ると、都心部の中でも「駅近」の物件ほど、資産価値を維持しやすい傾向があります。これは、在宅勤務が多少増えたとはいえ、都市部では今なお駅を基点とした生活導線が圧倒的に強いためです。
たとえば、山手線の駅から徒歩5分圏内という条件を持つ物件は、築年数が多少古くても、常に一定の需要があります。逆に、同じ都心エリアでも駅から遠い物件は、価格の伸びが鈍化する傾向があります。
つまり、東京の中でも「都心6区 × 駅近」という二重条件を満たす物件こそが、価格の下支え要因を最も多く持っていると言えるのです。

地方と対照的に東京だけが堅調

一方、日本全体で見ると、人口減少と高齢化が進み、空き家問題が深刻化しています。地方都市では、築年数が古い住宅は買い手がつかず、「資産」どころか「負債」になっているケースも珍しくありません。
しかし東京、特に23区のなかでも都心6区では、地方とはまったく違う動きが続いています。街は次々に新しく生まれ変わり、交通の便利さや生活のしやすさも年々良くなっています。そうした中で、「東京に住みたい」と思う人があとを絶たず、人気が落ちる気配はありません。
さらに、物の値段が上がり、建物を建てるための費用も高くなる中で、「現金で持っているより、東京の不動産を持っていた方が安心」と考える人が増えています。日本だけでなく、海外の富裕層も東京の不動産に目を向けており、それが価格を支える力になっています。

安心して住めるだけでなく、売るときも強い

東京のマンションは、生活の拠点としてだけでなく、資産保全や資産運用の手段としても注目を集めています。相続対策や老後の備えとして、都心部のマンションを購入・保有する動きも加速しています。
相続対策として都心のマンションを保有するご家庭も増えており、現金よりも評価額が下がりやすい不動産に資産を移すことで、税負担を抑える手法が注目されています。また、老後の備えとして、現役時代に購入したマンションを後に売却し、老後資金に充てたり、賃貸に出して安定した家賃収入を得たりする活用法も現実的です。
「子どもが独立したら売る」「ライフステージに合わせて住み替える」といった選択肢を持てるのは、都心部のマンションがいつでも売れる・貸せるという信頼感に支えられているからこそ。これは、買って終わりではなく、持ってからがスタートとも言える資産運用の考え方です。

リセールの掟
「都心6区×駅近」の条件が、価格を守り、資産を育てる。

リセール指数で売却益を予測できる

「どんなマンションを選べば、将来的に後悔しないでしょうか?」
これは、私が不動産の現場で最もよく受ける相談のひとつです。住まい選びは「今、自分にとって快適か」だけでなく、「数年後、資産としてどう評価されるか」という視点も欠かせません。とくに東京のように価格変動が激しいエリアでは、将来の売却価格を見据えて購入することが、資産形成の成否を分けるカギになります。
私はこれまで、都心部の高額帯物件を中心に2,000件以上の不動産売買に関わってきました。その中で感じているのは、資産価値の高い物件には明確な共通点があるということです。そしてそれを、わかりやすい形で数値化できないかと考えて生まれたのが「リセール指数」です。

将来の価格を見据える新しい評価軸

リセール指数とは、マンションの将来的な再販価値、つまり「購入から売却までにどれだけ値落ちを防げるか、あるいは値上がりするか」を可視化するための独自指標です。ポイントは、今の価格を基準とするのではなく、「未来の価格」を見据えた判断ができるところにあります。
この指数は、「売却益×売りやすさ×値上がり率」の3要素を掛け合わせて評価します。簡単に言えば、「買ってから売るまでのあいだに、どれだけ利益が出せるか」「スムーズに売れるか」「将来相場が上がるかどうか」を事前に判断するスコアです。
とくに都心部では、同じ価格帯の物件でも「資産」として大きなリターンを生むものと、購入時から値下がりするものに分かれます。私はこの指数によって、「所有している間に価格が上昇して、購入時より売却時のほうが高くなる物件」を見極めるサポートを行っています。

リセール指数を高める5原則

この指標を高めるための具体的な判断基準として、私は「リセール指数をアップさせる5原則」を提唱しています。
① エリアの優位性
都心部であること、交通利便性が高く、オフィスや商業エリアへのアクセスが良好であることが前提です。例えば、都心6区や駅チカ物件は今後も高い需要が見込めます。
② 立地の優位性
駅近であることに加え、再開発エリアもしくは近隣エリアであることが重要です。近年の傾向として、大規模な開発が行われている地域の物件は、竣工前から価格上昇が始まり、完成後には周辺相場ごと押し上げられる傾向があります。
③ ブランドの優位性
知名度が高く、エリアを代表するマンションブランドであることが重要です。例えば、東京であれば白金、目黒、青山、表参道、六本木、広尾、番町などの高級住宅街にあるブランドマンションが高い価値を持ちます。
④ 眺望の優位性
特別な眺めがある部屋は、それだけで唯一無二の価値を持ちます。オーシャンビュー、東京タワーやスカイツリー、レインボーブリッジ、富士山、皇居、緑が見える部屋、公園に隣接している部屋など、他の建物に邪魔されない良好な眺望があることが高評価につながります。
⑤ スペックの優位性
これは「広さ・新しさ・共用施設」の総合点です。特に55㎡以上の2LDKや、ファミリー向けの2〜3LDK、コンシェルジュ常駐のサービス付き物件などが高評価となります。内装の清潔感や香り、照明の演出など、見えない部分も大きな影響を与えます。

購入時点で「売るときの戦略」を描く

「買ったときに出口(売却)を考える」、これがリセール指数の真価です。
例えば、数年後に売る前提で物件を選ぶ場合、リセール指数の高い物件であれば、住宅ローンの元本以上に価格が上がり、手元に現金が残るケースもあります。これは、実際に私の顧客でも多く起こっています。なぜこのようなことが可能になるのか。理由は、東京のような都市部では今後も人口集中が続き、土地が限られているために「相場価格」が年々引き上げられていく構造にあるからです。
この傾向を踏まえると、リセール指数が高い物件を選ぶことは、住まいを資産形成のための投資先として活用することに等しいのです。

デジタル資産とWeb3
高田 一洋(たかだ・かずひろ)
一心エステート株式会社代表取締役 不動産コンサルタント
1983年福井県生まれ。金沢大学工学部を卒業後、大手コンサルティング会社に入社、4年間、新規事業の立ち上げや不動産会社のコンサルティング業務に従事する。その後、当時の取引先リストグループに惹かれ入社。不動産売買仲介営業・マンション販売・営業管理職・支店長を経て、さらなる理想を追求するために一心エステートを創業。創業当初から金融機関・不動産会社へのコンサルティングを行い、ARUHI住み替えコンシェルジュでセミナー講師などを務める。自身の住み替え実体験や豊富な不動産知識に加え、20代で身に付けたコンサルティング技術、ファイナンス(お金・投資の知識)をもとに、東京都心の不動産仲介実績を積み上げている。人気YouTubeチャンネル「東京不動産マニア」に出演中。著書に『高級マンション超活用術』(みらいパブリッシング)がある。

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