本記事は、新名 史典氏の著書『成功率が圧倒的に高まる プレゼンの強化書』(かんき出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
ロジカルシンキングを活用した話のまとめ方
まとめ方の基本は「分ける」「つなぐ」「組み立てる」
ここでは、ロジカルシンキングの基礎として押さえておきたい3つのプロセスを紹介します。それが「分ける」「つなぐ」「組み立てる」です。
この3つはプレゼンテーションに限らず、あらゆるビジネススキルに通じる重要な思考の柱でもあります。
まず「分ける」。
情報の中から共通点を見出し、意味のある単位で分類していくことが出発点です。大切なのは、何の切り口で分けているのかという「分類の軸」を意識すること。ここが曖昧だと、分けた情報が何を意味するのかわからなくなってしまいます。
この「分ける」という行為がうまくできないと、問題解決もままなりません。
例えば何かトラブルが起きたとき、全体を漠然と眺めて「この仕事、やっぱり私に向いてない」と極論に走ってしまう人がいます。そんなときこそ、冷静に問題を小分けし、どこに本質的な原因があるのかを特定することが求められます。
次に「つなぐ」。
分けた要素同士の関係性を考える段階です。情報同士の関係性には、並列関係(同じレベルで並ぶ)、因果関係(原因と結果)、対立関係、時間の流れなどさまざまなパターンがあります。この「関係性」を明確にすることで、分けた情報は初めて意味を持ち始めます。
最後に「組み立てる」。
ここでは、得られた情報と関係性をもとに、話の構造を作っていきます。基本的にはピラミッドストラクチャーで構築するのが王道です。頂点に結論を据え、その下に要素を並べて根拠として展開し、さらにその下に証拠・具体例を配置する。これにより、聞き手にとって筋道が明確で理解しやすい話になります。
この3つのプロセスを以下に図解しました。シンプルながら非常に応用が利くフレームワークなので、ぜひ自分のプレゼンや報告資料などに取り入れてみてください。
情報を共通する要素で「分ける」
ロジカルシンキングの出発点は「分ける」ことですが、ただ闇雲に情報を分類するのではなく、共通の要素に基づいて意味のあるかたまりとして整理することが求められます。
例えば、ホテルの顧客を分類してみるとわかりやすいでしょう。国籍という切り口であれば「日本人」と「外国人」。利用形態で分けるなら「個人」と「団体」。目的であれば「宿泊」「宴会」「飲食」「婚礼」などが考えられます。
このように、分類するためには「どの観点から分けるか」という「分類軸」をはっきりさせる必要があります。
また、ペア概念を使った分類もビジネスではよく使われます。
例えば、「インプット/アウトプット」「内部要因/外部要因」「個人要因/組織要因」「論理的要因/感情的要因」「ウィル/スキル」「ソフト/ハード」「長期/短期」「先天的/後天的」といったように、対になる言葉で思考を整理することで、視点の偏りを防ぎ、網羅的に考えることができます。
そして重要なのが「分類のレイヤー(階層)」を揃えること。ここで1つ、私の息子が小学生だった頃の事例を紹介しましょう。
当時、我が家では食器洗いを息子に担当させていたのですが、これがまあ雑で……。汚れがしっかり落ちていない皿をそのまま乾燥機に入れようとするので、つい「食品の汚れ、3大要素を挙げてみよ!」と声をかけました。
不機嫌そうな顔で息子が答えたのは、「油・食べカス・ヨーグルト」―。
さて、この回答、どこが問題だったのでしょうか? 正解として一般的に挙げられる食品汚れの3大要素は「脂質」「でんぷん」「タンパク質」です。しかし息子の回答は、油は脂質の言い換え、ヨーグルトは(さまざまな要素を含みますが)タンパク質汚れの具体例、食べカスは汚れ全体を示す上位概念です。つまり、分類する際にそれぞれの「レイヤー」がバラバラだったのです。
このように、分類の階層が揃っていないと、見かけ上はそれっぽく見えても、情報整理としては意味を持ちません。
ロジカルな分類には「同じレベルで並んでいるか?」という視点が不可欠です。
まずは「何を分類しているのか?」「どの軸で分けているのか?」「その分類は同じレイヤーで揃っているか?」、この3点を意識するだけで、あなたの話はぐっとわかりやすく、伝わりやすくなります。
分けた要素の関係性を「つなぐ」
分けた要素には何らかの「つながり」があります。
分けた情報をそれぞれ独立させたまま放置するのではなく、その間にどのような関係性があるのかを示すことで、論理が生まれます。情報と情報がただ並べられているだけでは、聞き手はその関係性を読み取ることができず、「結局、何が言いたいのか?」という印象を持ってしまいます。
そこで活用したいのが「接続詞」です。接続詞は情報と情報の関係性を端的に示してくれる便利な道具です。そして接続詞の最大の強みは、聞き手に「予測」させる力を持っていること。次にどのような情報がくるのかを聞き手がある程度イメージできることで、話が理解しやすくなるのです。
例えば、「つまり」と聞けば、次には結論がくることが予測されます。
「なぜならば」であれば、理由や根拠が続くでしょうし、「例えば」と言われれば、具体的な事例が示されると感じます。「一方で」は対立概念や反対の意見の導入、「ところで」は話の転換を予告するサインになります。
このように、接続詞を意識的に当てはめてみるだけで、情報同士の関係性がぐっと明確になります。
情報をつなぐというプロセスは、実は「聞き手への優しさ」でもあります。情報の「次への道筋」を示してあげることは、相手の理解への配慮であり、そこにロジカルシンキングの価値があります。
つないだ関係性を「組み立てる」
情報を「分ける」「つなぐ」ことで整理できたら、最後はそれらを筋道の通った形に「組み立てる」段階です。ここでのポイントは、単に情報を並べるだけではなく、要素同士の関係性がひと目でわかるように構造化することです。構造化によって、聞き手は内容を短時間で理解できるようになります。
最もシンプルな組み立ての形は「三角ロジック」です。これは結論→ 根拠→ 証拠・具体例の三段構造で表す方法です。
例えば、「この製品を導入すべきだ」という結論に対して、「コスト削減効果がある」という根拠を示し、さらに「具体的に人件費の20%削減が見込める」といった証拠・具体例で支える形です。三角形の頂点に結論、底辺の2点に根拠と証拠・具体例を置くイメージを持つと、整理がしやすくなります。
一方で、扱う情報が複雑になると「ピラミッドストラクチャー」が有効です。これは結論を頂点に置き、その下に複数のサブテーマや論拠を階層的に配置する方法です。ピラミッドの段ごとに情報の意味や関係性を整理することで、聞き手は全体像と詳細を同時に理解できます。
ピラミッドストラクチャーには大きく2つの組み立て方があります。
1つは帰納法的関係です。これは同質の情報を並べ、その数や類似性によって結論を補強する方法です。
例えば、「自動車業界は概ね●●●である」と結論(主張)を述べ、その理由として「トヨタ、日産、ホンダの3社がいずれも●●●という見解を示している」と並べるケースです。根拠の多さが説得力につながります。
もう1つは演繹法的関係です。これは各要素自体が論理的な因果や条件でつながっている場合に有効です。
例えば、「当社は国内だけでなく、今後はベトナムやミャンマーに進出する」という結論を述べ、「なぜなら国内需要は頭打ちで市場拡大が見込めないこと」「ベトナムやミャンマーの経済発展が著しく市場成長が見込めること」「当社の技術がこれらの都市開発に貢献できる可能性があること」という3つの根拠を並べます。各要因は互いに関連し、結論に向けて必然性を持たせます。
組み立ては、話し手が意図した順序で情報を流し、聞き手の頭の中に論理的な地図を描かせる作業です。「分ける」「つなぐ」で得られた材料を、どうすれば最も相手に届く形にできるか?「組み立てる」によってそれを実現できます。
1971年生まれ。大阪府出身。大阪府立大学(現・大阪公立大学)大学院農学研究科修了後、サラヤ株式会社にて、営業・マーケティング・商品開発部門を約15年担当。大手コンビニエンスストアの食品安全保証プロジェクトでは、外資系大手との競合におけるプレゼンコンペで、18戦17勝という高い成果を収める。入社4年目には新規事業の営業統括部長に指名され、3年で年商24億円の部署に育てることに成功。
2011年10月に独立起業し、プレゼンテーション支援を主業とする「株式会社Smart Presen」を設立。研究、営業、企画、経営者と多様な立場でのプレゼン経験を基盤に、実践的な指導を展開。そのノウハウを体系化し、企業の新規事業創出・マーケティング・リーダーシップ・ネゴシエーション・部下育成など、多様なテーマでコンテンツを開発。
現在は、企業研修講師および新規事業創出プログラムの講師として、年間300回近い登壇や個別支援を行っている。研修では「丁寧な解説」「豊富な実体験」「面白い!」を追求。信条は「ビジネスは伝わってナンボ!」
主な著書に『顧客に必ず“Yes”と言わせるプレゼン』『上司を上手に使って仕事を効率化する「部下力」のみがき方』(ともに同文舘出版)などがある。
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