本記事は、税理士法人チェスター監修、円満相続を支援する士業の会編集、株式会社エッサム著書の『事例でわかる 失敗しない相続対策入門』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。

事例でわかる 失敗しない相続対策入門
(画像=metamorworks/stock.adobe.com)

生前贈与によって相続財産を減らす

◉財産をもらったら贈与税の対象になる

贈与税は、個人から財産をもらったときにかかる税金です。
贈与には「生前贈与」として互いに存命中に資産を受け渡すものと、「死因贈与」として死後に贈与すると取り決めておくものがあります。死因贈与は遺贈と同じように扱われるため、相続税の対象となります
贈与税の課税対象となる財産は、相続税とほぼ同じです。現預金はもちろんのこと、不動産や株式などの財産、また一部の生命保険金も対象になります。生命保険金で贈与税の対象となるのは、たとえば「母が保険料を払っていた生命保険の満期金を子が受け取った」など、自身が保険料を負担していない場合です。ただし、死亡した人自身が被保険者として保険料を負担していた生命保険金の場合、贈与税ではなく相続税の対象となります
注意を要するのは、借金を免除してもらう債務免除、本来の価格より低い価格で資産を譲ってもらう低額譲渡でも贈与税がかかるケースがあることです。
ただし、債務免除の場合は債務がある人が弁済することが困難なときなどは、贈与による取得とみなされません。低額譲渡の場合、本来の価格と低い価格の差額に対して贈与税がかかります。

◉贈与税の基礎控除を利用する

贈与税は「暦年課税」と「相続時精算課税制度」の2つの課税方式があります。ここでは、まず暦年課税をみていきましょう。
暦年はその名前のとおり暦の上での1年という意味で、1月1日から12月31日までです。
つまり暦年課税は1年間にもらった財産の合計額に課税される方式ということです。
ただし、暦年課税には年間110万円の基礎控除額が用意されています。1年間にもらった贈与財産が110万円以内であれば、贈与税はかかりません。これを利用すると、毎年110万円ずつを生前贈与して、手持ちの財産を減らしていけば、いざ相続が発生したときに相続財産が減っていて、相続税を抑えることができます。年間で110万円でも、20年続ければ2,200万円もの相続財産を減らすことができます。相続発生までに時間がある場合などに利用したいのが、基礎控除額を利用した生前贈与(暦年贈与)です。
注意が必要なのは、複数の人から贈与を受けたとしても基礎控除額の110万円は変わらないということ。たとえば1年の間に、父から100万円、母から100万円を贈与されたら合計200万円になり、基礎控除額を超えた90万円(贈与合計額200万円-基礎控除額110万円)に対して贈与税がかかります。

◉贈与税の計算方法と、2つの税率

贈与税の計算方法は「1年間に贈与でもらった財産の合計額-基礎控除額110万円)×税率」です。平成27年分以降の贈与税の税率は「一般贈与財産用(一般税率)」と「特例贈与財産用(特例税率)」があります

  • 一般贈与財産用(一般税率)…… たとえば兄弟間の贈与、夫婦間の贈与、親から子が受けた贈与で子が未成年の場合に使用する
  • 特例贈与財産用(特例税率)…… 父母や祖父母などから、18歳以上(その年の1月1日時点)の子や孫が贈与を受けた場合に使用する

一般税率と特例税率では、特例税率のほうが優遇されています。贈与財産価額が500万円の場合、特例税率で計算したほうが4万5,000円少なくなります。
なお、たとえば18歳以上の人が兄と父から贈与を受けた場合には、「一般贈与財産用」と「特例贈与財産用」の両方の計算が必要です。この場合、すべての財産を一般贈与財産用と特例贈与財産用の税率で計算し、税額に占める贈与財産の割合に応じた税額を算出します。
納付するのは、それぞれの合計額です。
一般贈与財産が100万円、特例贈与財産が400万円(合計500万円)の場合の計算方法を考えてみましょう。

❶ すべての贈与財産を「一般贈与財産」として税額計算し、割合に応じた税額を算出する
[贈与財産額500万円-基礎控除額=課税価格390万円]
[基礎控除後の課税価格390万円×税率20%-控除額25万円=53万円]
[53万円×(一般贈与で受けた額100万円/贈与合計額500万円)=税額10.6万円]

❷ すべての贈与財産を「特例贈与財産」として税額計算し、割合に応じた税額を算出する
[贈与財産額500万円-基礎控除額=課税価格390万円]
[基礎控除後の課税価格390万円×税率15%-控除額10万円=48.5万円]
[48.5万円×(特例贈与の額400万円/贈与合計額500万円)=税額38.8万円]

❸ 前記の❶と❷を足して贈与税額を算出する
[一般贈与の税額10.6万円+特例贈与の税額38.8万円=贈与税額49.4万円]

事例でわかる 失敗しない相続対策入門
(画像=事例でわかる 失敗しない相続対策入門)
事例でわかる 失敗しない相続対策入門
【監修】
税理士法人チェスター
相続税・資産税に特化した税理士法人。全国18拠点の事務所を展開し、年間3,000件を超える相続税申告・相談実績は業界トップクラスを誇る。税理士約80名を中心に、公認会計士、弁護士、司法書士、行政書士など多様な専門家が連携。複雑な相続税申告から生前対策、国際相続までワンストップで対応するプロフェッショナル集団である。
申告書への書面添付による税務調査リスクの低減や、二次相続を見据えた設計など、高度なノウハウと豊富な実務経験に基づき、資産を守り最大限の節税を実現。安心・信頼のサポート体制を構築している。
【編集協力】
円満相続を支援する士業の会
遺産相続は、場合によっては親族間での遺産争いになることがあり、「争続(争族)」などと揶揄されることがあるほどトラブルの生じやすい問題でもあります。そのような問題をはじめ、いろいろな悩み事の解決を総合的に行っている事務所です。遺言や贈与、信託はもちろんのこと、円満な相続を行っていただくためのお手伝いをします。
【著】
株式会社エッサム
昭和38年(1963年)の創業以来、一貫して会計事務所及び企業の合理化の手段を提供する事業展開を続けております。
社是である「信頼」を目に見える形の商品・サービスにし、お客様の業務向上に役立てていただくことで、社会の繁栄に貢献します。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます。
事例でわかる 失敗しない相続対策入門
  1. 相続税がかからないものは? 知らないと損する非課税の境界線
  2. 生命保険は相続対策になる? 現金で残すより有利な理由
  3. 生前贈与で相続財産を減らす、110万円を20年積む効果
  4. 死後の手続きを任せる、生前契約という選択肢
  5. 相続税調査はどう行われている? 申告後に来る接触の正体
ZUU online library
(※画像をクリックするとZUU online libraryに飛びます)