この記事は2026年7月10日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「ドル円は年末165円を予想、円高転換は高市政策の実現が必要」を一部編集し、転載したものです。
ドル円レートは7月1日に一時1ドル=162円84銭を付け、約39年半ぶりのドル高円安水準に達した。市場では、米利上げ観測が根強いなか、日本政府が日本銀行の利上げを牽制する姿勢を示しているとの見方もある。日米金利差拡大の思惑が、ドル買い円売り要因の一つになっていると思われる。
足元のドル円の水準や投機筋による円の売り越し状況を踏まえると、直ちに為替介入が行われても、さほど違和感はない。ただ、市場で予想されるドル円のボラティリティーは7月3日時点で期間1週間が6%台後半、1カ月が7%台前半と、2022年以降で為替介入が行われた際の水準(最も低い水準は、期間1週間が7%台前半、1カ月が7%台後半)よりも若干落ち着いている。もう一段上昇すれば、為替介入の可能性は高まるだろう。
ドル円相場を見通す上で、短期的には日米金融政策の方向性が重要なポイントになる。特に、米国の利上げ見通しを左右する雇用や物価に関する米経済指標には注意する必要がある。ただし、このところ原油価格が低下していることに加え、米連邦準備制度理事会(FRB)のケビン・ウォーシュ議長が7月1日に行われた欧州中央銀行(ECB)主催の会合で「この4週間でインフレ期待は低下し、インフレリスクは後退した」と発言したことなどは、早期米利上げ期待によるドル買いの抑制要因になると思われる。
少し長い期間でドル円相場を考えた場合、日本の国際収支が構造的な円安を示唆している点は考慮しておきたい。25年の国際収支では、貿易収支は赤字、サービス収支のうちその他サービスのデジタル関連収支は赤字、証券投資収支のうち金融商品取引業者・投資信託委託業者等収支は黒字(対外純資産の増加)だった。一般に、これらは外貨買い円売りを伴うケースが多いと考えられる。
当社はドル円の年末着地水準を1ドル=165円と予想している。足元はこの水準に近づきつつあるが、①為替介入実施の公算は相応に大きい、②米利上げは年内9月と12月の2回のみで、25bpずつ行われて打ち止めとなる、③日銀が28年まで利上げを継続する──ことなどをメインシナリオに置いており、大幅なドル高円安の進行は想定していない。
もっとも、前述の収支構造を勘案すれば、年単位で見た場合の円安進行は十分に考えられる。この流れを反転させるためには、高市早苗政権が掲げる日本のエネルギー自給率向上や国産クラウドサービスの普及など、日本経済の成長力を総合的に高める政策が必要だ(図表)。政策の実現次第で、中長期的にドル円は円高、円安どちらに振れる可能性も十分にはらんでいる。
三井住友DSアセットマネジメント チーフマーケットストラテジスト/市川 雅浩
週刊金融財政事情 2026年7月14日号