この記事は2026年9月9日に「CAR and DRIVER」で公開された「【ホンダの底力2026】勝ち技03_タイプR[CIVIC TYPE R]の速さと実力はニュルブルクリンクで実証済み。レース現場で鍛え上げられ続ける「赤バッジ」の未来は明るい」を一部編集し、転載したものです。
FF世界最速を目指した本気の1台。エンジン屋の面目躍如
タイプRはホンダのスポーツスピリットの象徴。エンジン屋であるホンダの、いま最もホットなエンジンは、現行シビック・タイプRに搭載されるK20C型2ℓ直4VTECターボである。
K20C型は世界の2ℓターボの中でも魅力と実力が傑出している。スペックは330㎰/6,500rpm、420Nm/2,600〜4,000rpmを誇り、FFホットハッチ(過激なハッチバック車)最速の1台として世界に君臨するのがシビック・タイプRである。
タイプRは自動車開発の聖地といわれるドイツ・ニュルブルクリンク北コースの常連だ。ニュルは山岳地帯の4つの村と国道を繋げた道幅狭く過酷な1周約23㎞の走りの舞台。世界的な24時間レースを行うサーキットでもある。
このニュルではFFホットハッチ最速の座を日独仏メーカーが競っている。現行シビック・タイプR(7分44秒881)は直近までトップだった。“だった”とは地元の面子で首位奪還に燃えるVWゴルフGTIエディション50(7分44秒523)に僅差で奪われたからだ。
現行シビック・タイプRの魅力はもちろんエンジンと、それを活かすハンドリング、そして速さと豪快さと安定性を含むシャシー性能にある。標準ボディから左右に90㎜も拡大されたオーバーフェンダーと前後のスポイラーは迫力たっぷり。フェンダーぎりぎりに収まる265/30ZR19タイヤはフットワークとグリップ力に優れ、低中高速のどの速度域でも操作に忠実に曲がり安定する。高度な操縦性もエンジンを活かす性能であり、伝統の“赤バッジ”を担うホンダ車の勲章となっている。
現行シビック・タイプRはデビューと同時に耐久レース、ENEOSスーパー耐久シリーズに参戦した。デビュー翌年の2023年は、第1戦から速さを見せ優勝。だが同時に初期にありがちのトラブルにも見舞われ下位に沈むレースもあった。シリーズは最終戦までチャンピオン争いがもつれた。もちろんシビック・タイプRもその争いに加わっていたのはいうまでもない。そしてハリウッド作家でも思いつかない展開。まるで世界の運をすべて独り占めしたかのような大ドンデン返しで、本格デビュー年にシリーズチャンピオンに輝いた。
その実績もありシビック・タイプRは出場台数を増やす。レースという待ったなし、極限の状況で酷使され、壊れたら直す。壊れた部分は、対策され、強化してメーカーのノウハウとして蓄積。これを重ねてさらに速く、強いタイプRへと進化、成長を続けている。
今後のタイプRはどうなるのか? 深くはわからないが、TAS(東京オートサロン)でお披露目したHRCのシビック・タイプRコンセプトカーはひとつの方向性だろう。走りの要素として速くなる、という成分を含んでいる。
この伝統の“赤バッジ”は今後、どう成長していくのだろう。現在ホンダはe:HEVをさらに速く、強く、耐久性も含めて鍛えている。すでにシビックe:HEVを使い耐久レースに参戦しているのだ。
遡ること5年前、もてぎのEnjoy耐久レースにフィットe:HEVで参戦した。それを3年続けてフィットRSが誕生する。シビックe:HEVも今年で3年目を迎えて、S+シフトを備えたシビックRSをリリースした。e:HEVのレーシングカーはエンジンの発電力、モーターパワー、バッテリーの冷却などが速さを生むカギ。ひとつが進化すると、別の弊害が起こり、それを解決するを繰り返して確実に速さと耐久性を増してきた。ハンドリングは抜群。バッテリーによる低重心化とモータートルクと回生による減速が前輪にのみ加わる走行特性に驚く。コーナリング性能が飛躍的に高まるのだ。
個人的にはSH-FWD(スーパーハンドリング前輪駆動)かと思うほど旋回しやすい。しかも立ち上がり加速の鋭さでエンジン車を圧倒する。なぜ断言できるのか、Enjoy耐久チームに筆者も参加させてもらっているからだ。
自他ともに認めるエンジン屋のホンダだが、エンジンとモーターが「共調」するとさらに驚愕の力が生まれる。伝統の「赤バッジ」の未来は明るい!! ボクはそう信じている。
(提供:CAR and DRIVER)