この記事は2026年8月28日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「内需不振によって産業間で「K字型化」が進む中国経済」を一部編集し、転載したものです。


内需不振によって産業間で「K字型化」が進む中国経済
(画像=maaagram/stock.adobe.com)

中国は、ハイテク製造業を中核エンジンとする新たな産業構造への転換を急いでおり、半導体や工業用ロボットなどの生産量は前年を2~3割上回るペースで伸びている。今年からスタートする「第15次5カ年計画」でも、中国全土にAI(人工知能)データセンター網を構築するという新型インフラ案件を柱に据えた。民間資本を巻き込みながら、先端産業の国内サプライチェーンを急ピッチで整備する方針が掲げられている。

こうした産業高度化の進展は、貿易構造にも大きな変化をもたらしている。今年に入り、中国の貿易額は輸出入とも2桁成長を示すなど勢いを増しているが、これを牽引しているのは半導体や電子部品、サーバーといったハイテク製品である。

7月中旬に上海で開かれた「世界人工知能大会」で習近平国家主席は、グローバルサウスのAI発展を力強く支援すると宣言し、途上国へのハイテク製品供給の拡大に意欲を示した。安定成長の維持が至上命題である中国にとって、先端技術力の底上げと海外需要の掘り起こしは内需不足を補う意味でも極めて重要な産業政策と位置付けられている。

国内需要に目を転じると、長引く不動産・建設不況の影響で固定資産投資がマイナス成長を続けている。個人消費の回復力も乏しく、上半期は可処分所得(名目)が5%強伸びたにもかかわらず、消費支出(同)の増加率は4%に届かなかった。消費の内訳を見ると、旅行・娯楽などのサービス消費は5%前後の堅調な伸びを維持している。一方で、過去の補助金政策による需要先食いの反動減が自動車・家電市場で顕著となり、商品小売りは1%前後の低成長に沈んでいる。

このように中国経済では、産業間で明暗が分かれる「K字型化」が進んでいる。それでも上半期の実質GDP成長率は4.7%となり、今年の成長率目標である4.5~5.0%内に収まった(図表)。製造業、情報通信業、法人向けサービス業などが牽引役となり、1~3月は予想を上回る5%成長を実現した。

しかし、4~6月は内需の下振れや専項債(インフラ建設用地方債)の発行減、輸入拡大に伴う貿易黒字の縮小などから、成長率は4.3%に減速した。そのため、政府は7月に入ると、専項債の発行加速や、各種政策の執行促進を指示するとともに、必要に応じて追加財政出動や金融緩和等の景気てこ入れ策を機動的に発動する姿勢を示した。

下半期にはこうした政策強化に加え、新5カ年計画の投資プロジェクトも各地で本格稼働し始める。こうした措置が効果を発揮すれば、景気は徐々に安定化に向かうだろう。筆者は、通年の経済成長率が4.6%前後で着地するとみている。

内需不振によって産業間で「K字型化」が進む中国経済
(画像=きんざいOnline)

岡三証券 チーフエコノミスト(中国)/後藤 好美
週刊金融財政事情 2026年9月1日号