本記事は、税理士法人チェスター監修、円満相続を支援する士業の会編集、株式会社エッサム著書の『事例でわかる 失敗しない相続対策入門』(あさ出版)の中から一部を抜粋・編集しています。
生前契約で死後の事務手続きなどを任せる
◉有効なのは死後事務委任契約
近年、高齢化や単身世帯の増加に伴い、「自分の死後の事務手続きを誰に、どのように任せるか」という課題が注目されています。葬儀や納骨、遺品整理、役所・金融機関への届出など、死後には多くの事務手続きが発生しますが、これらを家族や相続人に任せることが難しいケースも少なくありません。このような場合に有効な手段として「生前契約(死後事務委任契約)」があります。
死後事務委任契約とは、本人(委任者)が生前に信頼できる個人または法人(受任者)と契約を締結し、本人の死後に必要となる事務を代わりに行ってもらう契約です。民法上の「委任契約」にあたり、死後に効力をもたせる点が特徴です。
委任契約は原則として委任者が亡くなると終了しますが、死後事務委任契約の場合は、契約中に「本人の死亡後も効力を有する」ことを明記しておくことで、死後においても有効となるのです。なお、生前契約には、死後事務委託契約のほか死因贈与契約などがあります。
◉どんなことを委任できるか
死後事務委任契約で委任できる業務は多岐にわたりますが、主な内容として次のようなものがあります。
- 医療機関・介護施設への入院費・介護費の精算
- 葬儀、火葬、納骨の手配と費用の支払い
- 役所への死亡届の提出、年金・健康保険の資格喪失手続き
- 公共料金や携帯電話等の契約解除
- 遺品整理や住居の明け渡し、家賃精算
- 関係者への死亡通知
- デジタル遺品(SNS、メールアカウントなど)の処理
これらは相続財産の分配と直接関係しない事務的・身辺整理的な処理であり、遺言書がカバーする財産の承継とは性質が異なります。死後事務委任契約は遺言書と併用することで、より円滑に亡くなったあとの対応が可能になります。
◉契約手続きと留意点
死後事務委任契約は、書面(契約書)によって締結するのが一般的です。契約書には、次の点を明記するとよいでしょう。
- 委任者および受任者の氏名・住所
- 委任する事務の具体的範囲
- 受任者への報酬額および支払方法
- 死後に使用するための資金管理方法(預託金・信託等)
- 契約の有効期間と終了条件
- 紛争時の解決方法
留意点の一つ目としては、死後事務には費用が発生するため、受任者が自由に使用できる資金をあらかじめ確保しておく必要があることです。方法としては契約時に一定の金額を受任者に預ける預託金方式のほか、信託銀行や信託会社を通じて死亡確認後に費用が支払われるしくみを整える信託方式があります。また、遺言執行者から受任者が立て替えを求められるおそれがあるため、業務範囲を明確化し、遺言執行者との連携にも配意しましょう。
留意点の二つ目としては、遺言書で指定した内容と死後事務委任契約の内容が矛盾しないようにすることです。相続人には、被相続人の財産管理権があるため、委任事務が相続財産に及ぶ場合には相続人の協力が不可欠です。この点、推定相続人や関係者に契約の存在を知らせておくことで、死後のトラブルを回避できる可能性が高まります。受任者が不正に財産を処分するなどのリスクを防ぐため、監督人を設ける、複数人での共同受任とするなどの工夫も有効です。
税理士法人チェスター
申告書への書面添付による税務調査リスクの低減や、二次相続を見据えた設計など、高度なノウハウと豊富な実務経験に基づき、資産を守り最大限の節税を実現。安心・信頼のサポート体制を構築している。
円満相続を支援する士業の会
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